ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #7

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

身体能力は「彼女」の身体とは比較にならぬ程だ。カラテで戦い、カラテで殺す事をずっと続けて来た者の身体だ。彼は恐怖すら覚えた。そして何よりナラク・ニンジャの存在……消えてなどいないのだ。当たり前の事だった。そう長くは居られない。居たくもない。だがこれでガンフィッシュが出来る! 25

2012-09-28 18:14:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「……イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがマグロを!コメを跳ね上げ、スシが無重力状態で滞空する!一度に……10個!なんたるエーリアスのインストラクション消化とカラテ身体能力の相乗効果か!「ワ、ワオオーッ!?」観衆は驚愕し、口々に叫び声を上げ続ける!「ワオオオーッ!」26

2012-09-28 18:23:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な、なんだ、これは。私は何を見ているのだろう」カスマは呻くしかない。ユノモがタケチに言った「なあアンタ。マーケティング的にこれはどうなんだ。正解かね」「ア……アア……」タケチは言葉に出来ない。ファンダは目を瞑った。「とにかくウェルシーが正解だ。イイですね。イイですね」27

2012-09-28 18:28:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チィィーッ」目にも留まらぬ速度でメイヴェンもスシを握ってゆく!トロ!トロ!トロ!トロ!トロ!トロ!トロ!トロ!全てがトロだ!「イイイイヤァァァーッ!」ニンジャスレイヤーもまたガンフィッシュを連続で繰り出し続ける!赤身!赤身!そしてトロ!赤身!赤身!そしてトロ! 28

2012-09-28 18:37:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドォン!太鼓が鳴らされた。「終了です!実食に入ります!」司会者が叫んだ。「ワーザー・スシー!」「ワーザー・スシー!」「ワーザー・スシー!」観衆が叫ぶ!叫び続ける!「ちょっと皆さんお静かに!お静かになさい!」「ワーザー・スシー!」「ワーザー・スシー!」「お静かに!」 29

2012-09-28 18:39:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ヌウウーッ」ニンジャスレイヤーはがっくりと膝をついた。エーリアスが遠隔操作を解いたのだ。倒れかかるのを、アキモトが片手で危うく受け止める。「やったか?アキモト=サン」「やった!やりやがった!細部がまだまだだがな」「当たり前だろ!何でも出来たらアンタの商売上がったりだ」30

2012-09-28 18:57:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エーリアスは言って、強いて笑った。消耗はニンジャスレイヤー以上であろう。アキモトは拳で目をこすった。「減らず口言いやがる。さあ、配膳しようや。まだまだ先は長いんだ」 31

2012-09-28 19:05:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……実食である!ワザ・スシのスシが先だ。赤身、赤身、トロの三つ。審査員にはエーリアスらが。一般参加者には設営スタッフの手でスシが配られてゆく。「……」先程のコール覚めやらぬ観衆達であったが、黙々とそのスシを口に運ぶ。審査員達も、まずは赤身。「……うまい」カスマが思わず呟く。32

2012-09-28 19:24:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メイヴェンの刺すような凝視を受け、カスマは首を振る。「うまい、うまい手段と言えますよ。実際面白い握り方で……」「マ……マーケティング的に、この、これだ。この上に乗ったワサビ、これはいただけないですよ。とにかくいただけない」二つめの赤身を咀嚼しながらタケチが言った。 33

2012-09-28 19:26:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー私はとにかくダメだ!食べてられない」ファンダはスシから目を背けた。「ダメですねこれは」「赤身だな」ユノモが言った。「赤い肉!」「ねえ実際赤いですよね?」ファンダは助け舟を求めるように「やはりトロ……」「久しぶりに本気のマグロを口に入れた思いがするわい!」「アイエッ!?」34

2012-09-28 19:40:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「握りは完璧ではないが、口の中でよくほどける。手の温度も移っていないな。あのワザマエが効いておる!そしてトロ……ムムッ……」ユノモの隻眼がギラリと光った。古傷まみれの腕に震えが走った。「……フゥーム」カスマはその様子を見守った。ユノモは見返した。「どうだね。作家先生」 35

2012-09-28 19:56:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は……エート……」彼は目を背けた。既に三つを完食している。ユノモは尚も問う。「アンタの作家人生、作家のプライドに訊いてるんだぞ」「……」「アンタもだ。ミスター・マーケティング殿。どうだ!忌憚のない意見は!エ?」「……」彼らは顔を見合わせる。 36

2012-09-28 19:59:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」やがてカスマが口を開く、「素晴らしい美味です、ハイ。まるでマグロを今初めて知ったような気すらしています」「だ!が!」威圧的な声が飛んだ。メイヴェンである!「私のスシも、なかなかですぞ、皆様方。そうですね?」「……アッ……ハイ」タケチが弱々しく笑った。 37

2012-09-28 20:01:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いやあ、私はちょっとね、とにかくウェルシー社のスシを食べましょうよ、ハイ」ファンダがせかせかと言った。「ハイ次!次だ次!もうイイから、これは」……ドォン!太鼓が鳴らされた。後手!ウェルシー・トロスシ、メイヴェンが握ったオーガニック・トロマグロ三つ! 38

2012-09-28 20:07:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」メイヴェンは審査員を睨み渡した。力の無い追従笑いを浮かべながらトロスシを咀嚼するタケチ。心なし蒼ざめた顔のカスマ。目を閉じ、集中するユノモ。「うまいッ!本当うまい!」うるさく叫んで一気に食べるファンダ。「もう間違いない!これは!ウェルシー社でグッドジョブ重点ですよ!」39

2012-09-28 20:18:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「トロ。トロ。そしてトロか」カスマが震えながら笑う。極度の緊張状態だ。「確かにトロは、我々日本人の味覚のふるさとです。……ですが」彼はメイヴェンを見ないように努力していた。「やはり僕は……自分の作家人生に、嘘はつけませんッ!」彼は泣き出した。「ワオーッ!?」客がどよめく。40

2012-09-28 20:25:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちょっと……何言ってンだ!あなた!」ファンダがカスマを指差した。「困るよそういうのは君ィ!」チラチラとメイヴェンを見ながら叱責!「アンタはどうだ?ミスター・マーケティング殿」ユノモが水を向けた。「……」タケチは三つ食べ終え、ユノモを見た。「……貴方の意見から聞きたいです」 41

2012-09-28 20:33:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうか」ユノモは頷いた。メイヴェンが睨む。だがユノモは言った。「マグロというのは、赤身、そしてトロだ。トロとは実際最も重要だが、そこに至るまでの手順の決まりがある。それは無意味なドグマではない。集合知だ。歴史の中で自然に培われた、こう食べれば一番うまいという知恵だ」「……」42

2012-09-28 20:36:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マグロとは調和だ。赤身があり、トロもある。それらの調和だ。赤身から逃げてはいかん。赤身を美味しくいただき、トロを楽しむ。そうではないかね。全てがトロのマグロ。奥ゆかしいとは思えん」「美味しいからいいんだ!」とファンダ。だがユノモは続けた「全てトロ。脂が気になって仕方ない」43

2012-09-28 20:44:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私も……そう……思いました」タケチが言葉を搾り出した。「これは、トロだ!とは思いましたが……トロ。ただ、それだけだ。それはいわば、トロという情報でした。一方、ワザ・スシのコンボは、そのう……マグロを食べている気がしました。おいしいマグロを」「ワオオオーッ!」観衆が沸いた! 44

2012-09-28 20:48:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユノモは破顔した。「なんだ。マーケティング的に語らんでも味の話ができるじゃないか、アンタ」「はは……」タケチは頭を掻いた。「ワオオーッ!」「ワオオオーッ!」「ワーザー・スシー!」「俺もそう思う!」「俺もだ!」「私も!」「ワザ・スシ!」「ワーザー!スシー!」歓声!歓声! 45

2012-09-28 20:55:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」メイヴェンの眉間に血管が浮き上がり、ピクピクと脈動した。コワイ!「オイ!イケるんじゃねえか?」エーリアスがアキモトとニンジャスレイヤーを振り返った。ユノモはメイヴェンを見た。「……アンタ、自分のスシ、好きかね?」「何?」「好きじゃ無いよな?アンタのスシは泣いてるぜ」46

2012-09-28 21:01:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「!」メイヴェンは鈍く重い一撃を受けたボクサーめいてよろめく!「ふざけるな」メイヴェンは呟いた。エーリアスはメイヴェンに言った「満場一致ってやつじゃねえか?」……歓声の中、ファンダが取り乱し、机を叩く。「コラーッ!僕はねッ!選挙出るの!ウェルシー社の後押し重点!邪魔するな!」47

2012-09-28 21:09:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アーララ、満場一致じゃなかったか」エーリアスは肩を竦めた。「まあいいさ。次も勝つぜ。アナゴ出してこいよ」「……茶番は茶番」メイヴェンはエーリアスを睨み返す。「貴様らに勝ちは無い。貴様らはこのまま二戦落として敗北だ。……判定を出せ!審査員!」振り仰ぐ!「家族を大事にしろよ!」48

2012-09-28 21:15:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドォン……。太鼓が鳴らされた。結果がショドーされた。カスマ、ウェルシー。タケチ、ウェルシー。ユノモ、ワザ・スシ。ファンダ、ウェルシー。観客点、ワザ・スシ。三対二。勝者ウェルシー・トロスシ。二本先取。……「終わりだ。全て頂く。そしてセプクせよ。ニンジャスレイヤー=サン」 49

2012-09-28 21:21:26