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ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」#1
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
夜を迎えたヤカタバンナ・ストリートは暖かいオレンジの明かりが滲む飲屋街。泥酔サラリマンが行き交い、道の端々では輪になってサンボンジメ・チャントが行われ、パチンコ・オイランが笑いかけ、動くニワトリやカニのメカニカル・オブジェクトがこの地の守護神像めいて厳めしい。 1
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向こうから歩いてくるのは、泥酔サラリマン達とは異質な、風変わりな2人組である。先導するのは、額を広く出して真っ直ぐに前髪を切り揃えたショートボブ、眉毛のかわりにイバラめかした刺青を入れた黒髪の若い女。着いてくるのは、ハンチング帽を目深に被り、トレンチコートを着た男。2
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「この辺なんだよ」パンク風の女は歩きながらキョロキョロと店舗を確認した。「ワニスシだったか……ワンダースシだったか……何かそんなようなさ」「うろ覚えか」「参ったなあ。この前に行ったのは昼間だったし、全然様子が違うからよ……」3
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パンク風の女……エーリアスは、仲間内で笑いあうサラリマン群体を避け、交差点から路地を見渡した。そして思い出したようにトレンチコートの男、フジキドに言った。「今日の俺は本当、リッチだからな。何でも頼んでいいんだぜ。常識的な範囲で」「常識的な範囲でな」彼は頷いた。 4
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「まあ俺も、ようやく軌道に乗ってきたって思うんだよね……あンたとナンシー=サンには、色々世話をかけちまったからさ……今日ぐらいはカッコつけさせてくれ!」エーリアスはまくし立てた。「ナンシー=サンも実際、間が悪いよな。滅多にないぜ俺の奢りは。いつ帰って来るんだ」「詳しくは知らん」5
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「あッソ。なあ、どこだろうな?アンタ俺より詳しいンじゃねえの?」「まさか、あれか?」フジキドが指差す先には、激しくLEDを瞬かせる悪趣味な店舗があった。ネブタめいた光を放つ竹林のタイガーが「ウェルシー・トロスシ」の看板を掲げている。「違う」とエーリアス。「でも、待ってくれ」 6
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エーリアスはそちらの通りを早足に歩き出した。「ウェルシー・トロスシ」からは激しいマグロトランスBGMがスピーカーで流され、合成マイコ音声で「開店一週間!世界制覇価格!今夜は貴方はダイミョ?それともシャチョー?だってオーガニックだもの!」とまくしたてている。店の外まで行列だ。 7
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エーリアスは巨大な光と音の洪水の発生源を呆然と見上げた。それから通りの向かいを振り返った。シャッター店舗に左右を挟まれたモデストな店構え。看板に「ワザ・スシ」とある。「……ここか」フジキドが呟いた。エーリアスは訝しげに頷いた。「なんか……今日、これ、営業してるのかな……」8
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玄関先の足元に置かれた電子ボンボリは良く手入れされ、奥ゆかしくカドマツをライトアップする……のであろう。向かいにあのような店が無ければ。ためらうエーリアスを尻目に、フジキドは店のノーレンをくぐり、ガラスショウジ戸を開けた。「イラッシャイマシ」老人がカウンターからオジギした。 9
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「ドーモ」フジキドはオジギした。店内はやや手狭だが、清潔感と奥ゆかしさがあり、壁の「ウグイス」というショドーにもゼンめいた美がある。店主の老人は、やや申し訳なさそうな、卑屈めいたオジギを繰り返した。「ドーモ。スミマセ……」「よい店ではないか」フジキドはエーリアスに言った。 10
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店内の客は彼らだけだ。店主は二人にチャを出した。「何になさいます」「タマゴ」「タマゴを」「アイ、アイ、タマゴ」店主は頷き、巨大な包丁でタマゴを切り分けて米に被せた。「すみませんね。こんなしみったれた店で」店主は目を伏せた。フジキドはタマゴを口にいれた。「旨いスシです」 11
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「マグロは粉末成形とオーガニック有ります」店主は言った。エーリアスは勢い込んだ。「オーガニックだ!二人前!ダイジョブ、任せとけ」「アイ、アイ、マグロ」宝石めいた赤いマグロ肉をまな板上に置くと、巨大な包丁で切り分けて行く。そして滑らかな手つきでスシを握った。「マグロドーゾ」12
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「旨い」エーリアスは笑顔になった。「旨いな!店先のアトモスフィアが良かったから、前に通った時、覚えておいたんだよ」「ありがとうございます」店主は奥ゆかしくオジギした。「でも、いいんですか、向かいのあっちの店は、キャンペーンで実際安いですよ。光ってますし。皆あっちですよ」 13
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「俺たちは本格派なんだ」エーリアスは言った。「違いがわかるのさ!この店だって実際安いじゃないか」「ありがとうございます」褒められた為か、店主はやや饒舌になった。「儲けはそんなに要らないんです。スシが好きなんです。子供の頃からね。皆にワザマエで握ったスシを食べて欲しくてね」 14
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店外でウェルシー・トロスシが流すマグロトランスが、ガラス戸を越えて微かに聴こえて来る。そして、キャバァーン!キャバァーン!という何らかのキャンペーン音。フジキドはチャを飲んだ。エーリアスはカウンターに肘をつき、戸口を見やって顔をしかめる。「うるせえなァ……」15
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「スイマセン」と店主。「アンタの謝る事じゃ無いよ。やめろよ」エーリアスは言った。「何かあの店、すげえな。いきなりあんな店がブッ建ったらさ……」「いやぁ」店主は寂しげに笑う。「時代の流れじゃないですかね」「タラバーカニを」フジキドが言った。「……アイ、アイ、タラバーカニ」 16
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「俺はどうしようかな。グンカンかな……トビッコかな……バイオアナゴかな……」エーリアスがガラスケースを覗き込んだ。その時である。ターン!勢いよくガラス戸が引き開けられ、サイバーサングラスをかけた屈強なバイカー達がノーレンをくぐって現れた。「イラッシャ……」「タコス食いてえ!」17
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バイカー達は全部で五人。ドカドカとフジキド達の後ろを通り抜け、奥のタタミザシキ席に土足で上がった。ザシキ席で靴を脱がぬのは大変なシツレイだ!「お客さん、タコスは無いんですよ、うちは、スシ…」「ダッテメッコラー!」バイカーが叫んだ「知っとるわ!コケシマート行って買って来いや!」18
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「何だ?」エーリアスはバイカー達を見やった。「おう姉ちゃん。サケをつげ」バイカーの頭目らしきコーンロウ・ヘアーの巨漢が手招きした。「オヤジ!ジントニック」 19
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「ウチはスシ屋なんでね…」「じゃあ!買って!来いや!」バイカーが凄んだ。「ジン!トニック!」「ちょっとやめてくださいよ。他のお客さんに迷惑ですよ」店主はさとした。バイカーは歯をむきだした。「ア?迷惑かけてンだよ!見りゃわかるだろうがよ!」「……」フジキドはチャを飲んでいる。20
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「お前タフガイ気取りか?」バイカーのボスがザシキからジャンプして戻り、フジキドの肩を掴んだ。フジキドはユノミを置いた。そして問うた。「敢えて無礼をしていると言ったか?」「タフガイ、マブ!」ボスが笑った。四人も笑った。「お前面白えよ。面白え。お前スピード出すか?鎖に繋いでよ」21
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「痛えな!」エーリアスが叫んだ。手下バイカーが髪を掴んで引っ張ったのだ。フジキドは言った「ここでやるな。店の迷惑だ」「迷惑かけてんだッて言ってんだよ!」ボスが腕に力を込めた。フジキドは無視した。「オヌシに言ったのだ、エーリアス=サン」「わかってるよ!」とエーリアス。 22
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「アッコラー!あれ?」ボスはフジキドの帽子を掴んで取ったが、フジキドは一瞬で帽子をスムーズに奪い返し、立ち上がって被り直していた。「おやじさんスミマセン。我々のせいで揉め事に」「……!」店主は困惑と心配と申し訳なさで緊迫し、震えていた。「外だ」フジキドはバイカー達に言った。23
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……「開店一週間!世界制覇価格!今夜は貴方はダイミョ?それともシャチョー?だってオーガニックだもの!」合成マイコ音声は相変わらずけたたましい。「ウェルシー・トロスシ」の店外行列は、トレンチコートの男を取り囲むバイカー集団というシュラバ・インシデントを、直視せぬように見守った。24
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年9月15日
ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #2 http://togetter.com/li/373596
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