フー・キルド・ニンジャスレイヤー? #2

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
2
前へ 1 2 ・・ 5 次へ
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは荒い息を吐いた。床に転がるサケ瓶を拾い、瓶の口を破壊すると、メンポを剥がしてガブ飲みした。「ハァーッ!ハァーッ!」瓶を壁に叩きつける!やがて彼は震え出した。そして笑い出した。「ハァーッ、ハァーッ、ハァーハハハ、ハハハハハハ!」 22

2012-12-06 23:43:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その目はジゴクめいて見開かれ、紅蓮の炎が瞳の中で燃えた。歪んだ笑いを再び赤く「忍」「殺」と塗られた黒鋼メンポで覆う。「アイエッ!」様子を見に来たとおぼしき店員が戸口で凍りついた。一瞬後、その首が撥ね飛ばされた。ニンジャスレイヤーはスタスタと歩き出した。「ニンジャ……殺すべし」23

2012-12-06 23:51:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ラッシング重点!ハントでポン!」チカチカと無為なテレビ番組の光が部屋を明滅させ、電子笑い声合成が室内に満ちた。フジキドは身を起こした。薄暗い台所で湯が沸いている。彼は目を擦った。「……」そこに立つ女性の横顔を見た。 25

2012-12-07 00:06:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

誰……いや、彼はその女性を知っている……「アガタ=サン」女性は微笑んだようだった。フジキドは困惑した。「これは……私は」アガタは首を振った。「いいの。今は」 26

2012-12-07 00:07:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は」「いいの」アガタは遮った。そしてユノミを、皿にのせたマンダリンを、チャブに置いた。「あなたは充分過ぎるほど苦しんだ。だから、いいの」アガタは手を伸ばし、フジキドの頬に触れた。「あなたは自分の人生を取り戻せばいいの」「人生……」「あなたのあり方を」 27

2012-12-07 00:11:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私のあり方か」フジキドは呟いた。「……終わったのだ、それは」アガタは瞬きした。フジキドは言葉を探した。「……アガタ=サン、私は……」 28

2012-12-07 00:19:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スマッシン!響いて!」「ワー!スゴーイ!」電子笑い声合成が室内を満たし、画面の点滅が部屋を光らせた。ソファのフジキドは目を開いた。そして誰もいない自室を眺め渡した。台所には、皮の剥かれていない、干涸びかかったマンダリン。買って来たチャの袋。己が涙を流している事に気づいた。 29

2012-12-07 00:22:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待った、ちょっと待った、待てって、大丈夫だよ」「アイエエエ……!」ウミノは頭を抱え、雪深い山道を裸足で駆け続ける。山道の両脇にはびっしりとバンブーが生えている。バンブーの全ての枝には長方形の紙が吊るされ、「ニンジャ」「ニンジャ」「ニンジャ」「ニンジャ」とショドーされている。31

2012-12-07 00:33:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!」ウミノは脚をとられ転倒した。雪のかけらが01変換され、細かい粒子と化して彼の身体の周りを舞う。ウミノは手を見た。指紋が渦巻き、ウミノの身体に葉脈を伸ばす。「アイエッ!」「さあ」邪悪で慇懃なニンジャが肩に手を置き、もう一人の下卑たニンジャが、焼きごてを手に佇む。32

2012-12-07 00:38:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これで……話してもらえるかね?ウミノ=サン」「アイエエエエ!コワイ!コワイ!コ01001助けて!」「こっちを見ろ!」「ウミノ=サン」「アアアアアア!AAAAARRRRRGH!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」「ニンジャ!」33

2012-12-07 00:42:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウミノの精神は肉鈎によって四方八方に引き裂かれる。彼は砕かれる己を悲しみながら、断片的な記憶の流入に再び悲鳴を上げる。「AAARRRGH!」ザイバツ・シャドーギルド……アイボリー……苛まれ……砕かれた精神に染み込むように憑依したニンジャソウル……隙をついての脱出……。34

2012-12-07 00:46:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

雪深いバンブー……走る、転ぶ。走る。雪。ウミノの記憶は恐怖に歪み、ノイズまみれの改竄映像の中に投げ込まれる。左右に密集するバンブー。全ての枝には「ニンジャ」「ニンジャ」「ニンジャ」「ニンジャ」ウミノは手を見た。指紋が渦巻き、ウミノの身体に葉脈を伸ばす。「アイエッ!」「待て!」35

2012-12-07 00:50:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その手をぐいと掴む者があった。ウミノはうろたえた。全身を這う葉脈がポロポロと崩れて01変換され、拡散する。彼はあわてて周囲を見渡した。バンブーが無い。雪深い山道。「え?」では、目の前に立っているこの相手は……「俺だ、ウミノ=サン」エーリアスは言った。「よォし離すなよ。頼むぜ」36

2012-12-07 00:54:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エーリアスはウミノを掴んだまま飛び上がり、上空へ引き摺り上げた。「アイエエエエ!アイエエエ!アイエエエエ!」ウミノは悲鳴を上げる。ウミノは01000100010001 ( 37

2012-12-07 00:56:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0010101ったぜ」エーリアスがウミノから手を離した。「これは」ウミノは己の胸のスティグマに手を当て、それから身体のあちこちを叩いた。「これは。私は」彼らは公園のベンチに座っている。「あンた、ひでえ状態だったからさ。ちょっと整理したんだ。得意なんだ、俺」エーリアスが言った。38

2012-12-07 00:59:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「整理……ああ……ニンジャ、ニンジャかね」ウミノは薄笑いを浮かべた。エーリアスは何とも言えない目で彼を見た。そして言った「ああ。少なくとも、もう、怖くて逃げたり、苦しかったりさ、そういうのは多分、もう大丈夫だよ」「そうか、ああ、ああ」ウミノは涎を拭った。「ああ、そうか」 39

2012-12-07 01:03:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここは現実だぜ。安心してくれよ」エーリアスはベンチを立った。「そのナリ、シツレイだけど、そのう……帰る場所とかあるのかい」「寝場所は……ウフフ、どこにでも、ある」ウミノは憔悴した目でエーリアスを見上げた。「ニンジャだからね、何しろ私は。ニンジャだろう?ね?」「そりゃあ……」40

2012-12-07 01:08:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

言葉を探すエーリアスは、背筋にぞっとする感触を覚え、振り返った。足元の落ち葉が風に吹かれて舞い上がった。「え……?」「アイエエエ!」ウミノが叫び、エーリアスのジャケットの裾を掴んだ。エーリアスは眉根を寄せた。「ニンジャスレイヤー=サン……じゃねェだろ……お前?」 41

2012-12-07 01:13:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

舞い散る落ち葉の中、接近して来る者あり。赤黒の装束、「忍」「殺」のメンポ姿のニンジャ。歩きながら胸の前で両手を合わせる。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「あァ?」エーリアスは身構えた。「立てるか、ウミノ=サン!」「……」赤黒のニンジャの目が不穏に光る!「ニンジャ。殺すべし」42

2012-12-07 01:20:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エーリアスはこの名乗りに動揺した。彼女の視界には、現世の映像と重なり合うように、人々のローカルコトダマ空間の自我がぼんやりと見えている。ゆえに、接近してくる「ニンジャスレイヤー」が彼女の知る「ニンジャスレイヤー」と別人である事は、特に彼女が意識するまでもなく明らかであった。 43

2012-12-07 12:02:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。エーリアス・ディクタスです」ともあれ、エーリアスはアイサツを返す。ウミノも震えながらアイサツした。「ドーモ。ウミノ・スド……です、君は、君は、ヒーッ……君は!」「待て、待て」エーリアスはウミノを見る。「違うぜ、違うンだ。どういう事だこりゃ……」 44

2012-12-07 12:18:21
前へ 1 2 ・・ 5 次へ