ゾンビサバイバル！《ふたりあそび番外編》　『告白』

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep コンコンと軽快にドアをノックされたのはようやくうとうとし始めた頃だった。ケリー、だから言ったじゃないか。思わず不機嫌な声で言いながらドアを少し開けると、ぐいと外から更に引かれてバランスを崩す。おっかねえ顔でのお出迎え痛み入りますお客様。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 倒れかけた僕の体を抱き止めながら笑っていたのは蓮見だ。どうしてここに。あれ、ご指名頂いたんですがね？黒い瞳は悪戯を仕掛けた子供の様に光る。とにかく入れろよ。それともチェンジか？ピン、と指で額を弾かれ顔をしかめる。痛い。そうか。笑顔のまま蓮見は呟く。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 何故だろう、見慣れた笑顔の筈なのに違和感を覚える。それでもいつもの様に優しく抱き締められ大きな手で頭を撫でられると力が抜ける。体が緩む。ケリーか。そう。部屋に入ると壁中鏡張りで蓮見は苦笑する。何だってこの部屋選んだの。別に寝るだけだ。ほんとに知らないんだな。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 蓮見の言葉に思わず首を傾げる。何をだ。ここの本来の目的。宿泊施設だろう。まあそうだけど、それはおまけみたいなもんだ。頬を撫でられ、唇を奪われる。舌を吸う力がいつもより強く、体がびくりと震えた。食い散らかされる期待を、体が先に抱いてしまっている。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 蓮見の手は頬を撫で回し、指が耳に侵入してくる。輪郭を緩くなぞられ耳朶を掴まれる。声をあげようにも口は塞がれたままだ。 息をすることすら許さないと言わんばかりの攻め立て方。力が抜けかけた腰をもう片方の腕に支えられ、ようやく唇は解放された。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep こういうことする為の場所なんだよ分かる？黒い瞳は冬の夜空の様に冴えざえとしていて深い。思い出した。この笑顔は連絡を僕が絶った後、蓮見が追いかけてきた時のものだ。獣は静かに怒っている。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 俺の、この街に来る前の友人は二人だけ。その一人は女たらしでもう一人はその恋人。女癖の悪さを隠そうともせずにいる友人に静かに怒りながらも彼女は決してそいつを捨てなかった。女たらしもその恋人を絶対に手放さなかった。幼馴染みだから、ということが大きいのかもしれない。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 俺と知り合う前からの歴史。二人が時間をかけて築き上げてきた絆。そんなものに縛られるなんて煩わしくないのかと思う一方で羨ましかった。なあ、何であいつと一緒にいるの。一度訊いたらあっさり言われた。好きだからよ。何とも単純明快な答え。あんな女たらしでも？

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 重ねて問うと笑われた。そうよ、それを含めて好きなの。ここが好きであそこが嫌いなんて気持ちで一緒にはいない。俺には分からない。でしょうね。俺の執着のなさを知っている彼女は笑った。何故分からないの、とか好きな人が出来たら分かるわ、とか生易しいことは言われなかった。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 私は運が良かったのよ、そういう相手に巡り合えて。それって惚気？いいえ、正直な感想。強い女だ。その時はそう思っただけだった。今は違う。それは覚悟が出来てると言うことだ。やっぱりおっかない女だな、あいつ。今、俺にも欲しいと思う相手が出来た。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 男だったのはちょっと予想外だったけれど別に大したことじゃない。彼女の言わんとしていたことが少し分かる。どの部分が欠けてもそれはそいつじゃなくなる。全てを受け入れる、逃げないと言うのはそういうことだ。たとえそいつが女たらしであろうと、ゾンビを喰うとしても。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep そこに違いはないだろう。自分に都合の悪い部分を否定しない、そういうことだろうから。とても簡単なことだけれど実行はなかなか難しい。同時に思う。彼女はそれだけ相手を思っているのと同じ位、相手に思われていた。俺も、思われていない、とは言わない。きっと思われてる。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep けれど俺の押し付けになってないと言い切れるか？押し付けではないと思いたい。自惚れではないだろう。けれど、こういうことをされると少し不安にもなる。彼女に相談したら、多分こう言われるだろう。ほら、一人で考えすぎよ馬鹿蓮見。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 愛しい相手をベッドに組み敷きながら他の女のことを考える。何とも不謹慎。その相手は俺の大好きな深緑の瞳を僅かに揺らめかせ俺を真っ直ぐ見つめてくる。人の感情や機微に疎いこいつも、俺の感情の動きは多少なりとも読めるようになったらしい。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 溶け始めた深緑の瞳にはこれから与えられるであろう快楽への期待と、俺の怒りを察してか不安と動揺が入り混じっている。 怒りが情欲に溶かされそうになる。望むままに与えて溺れてしまいたい。そこを堪えジッパーを下ろしていく。白い肌は透き通る様で綺麗を通り越して痛々しい。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 照之。何。脱がないのか？…やらしい、俺にも脱いでほしいってこと？全く、勘が鋭い。俺の言葉に真っ赤になった顔を背ける。 そのおかげで露になった首筋に舌を這わすと、ああ、と途方に暮れた様な喘ぎが部屋に響く。それから慌ててこちらに顔を向けてきた。忙しい奴だな。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep どうした？…鏡、が。だから、そういう部屋なの。今頃気付いたの？遅いよ。いつもなら顔を背けられてしまえば隠れてしまう深緑の瞳が今日はどこからでも見れる。俺はそれが嬉しくてたまらない。逆にこいつは絶句している。お前が選んだ部屋だろ、観念しろよ。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 服を剥ぎ取りながら、付け加える。だからな、ここには誰でも連れ込むんじゃねえ。誤解を招く。俺の言ってる意味を理解するのに時間がかかったらしい。しばらくしてから慌てて体を起こしてきた。違う、僕もケリーもそんなつもりじゃ。あーそう、お前はそうかもしれないよ。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep けど相手がどう思ってるかはそいつにしか分からねえだろ。俺の言葉に更に反論しようとする口を、塞ぐ。お前の意見は聞いてない。ケリーも多少なりとも思うところがあったからわざわざ俺を呼んだのだろう。実にいい判断だ。ま、俺が何かする前にこいつに制裁されるだろうが。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep お前、ちょっとそういうとこ無防備。俺の言葉にベニーは顔を顰めた。鋭い剃刀の様な深緑の瞳。君だって椿さんとずっと一緒じゃないか。ああ、あの人には愛しのお姫様がいらっしゃるんだ。俺以上に我侭なんだとよ。凄いだろ。…そんな人間が世の中にいるのか。世間は広いよな。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 話で気を惹き、観察する。教師の典型的なやり方。俺の授業に慣れたトモは引っかからないけど、こいつはあっさり引っかかってくれた。肘の内側の注射跡。ほんと、この獣は変なところが無防備だ。危なっかしい。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep …おい、ベニー？俺の声が低くなったことを感じ取ったのだろう。ベニーは少し顔を強張らせる。この注射跡は、何？何、って。病院行ったって話は聞いてる。犬が事故に遭ったんだろ？ケリーがトモのこと心配してな、教えてくれた。さすがにケリーを悪者にするつもりはない。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep あいつが教えてくれなければ俺はずっと知らないままだった。でもさ、あの病院クソ忙しいよな。犬を診せるにはそれなりの対価が必要だろう、違うか。ベニーは俺に押し倒されたまましばらく呆然としていたがやがて苦笑した。君は教師じゃなくて探偵じゃないのか。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep ま、教師やってると探偵めいたこともたまにやる羽目になるけどな。トモの顔を思い出しながら俺は呟く。どういうことだと言いたげなベニーを無視し、鎖骨を指でなぞる。一瞬で瞳は情欲の色に支配された。何度も快楽を教え込んだ体は受け入れる準備は出来てると言わんばかりの反応。

ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 注射跡の周りの皮膚はそこだけ赤黒く変色しているのが忌々しい。この雪の様に白い肌になんてことしやがる。誰の許可を得てやった所業だ。説明して、ベニー？お前何したの。抱きしめながら体を裏返し、背中に舌を走らせる。途端に悲鳴が上がった。