遺されたものたちの、それぞれの願い

koto @ktosawa

@ZS_tl 「私、いや、俺が行っていいの？」警戒するような不安げな表情に「大丈夫、私の恋人や仲間も多分うろうろしているけれど、みんないい人たちよ。一人分くらい増えても問題ないわ。大体その顔色でご飯食べないって問題あるわよ」「いや、これはメイクで」彼が言いかけた拍子に足元が滑る。

koto @ktosawa

@ZS_tl 身長差実に１５センチくらいだろうか。そんな彼を支えようとして胸に手を伸ばして……彼がぎょっとして身を引いて余計に滑り。 「…………あ。え？　あの、もしかして……」きまり悪そうに横を向く彼、いや「彼女」に「ハルカ。ハルカ君、でいい。できれば女性扱いしないで」

koto @ktosawa

@ZS_tl 「えー、あー、はい。了解です」彼女の服の汚れをはらってやりながら、歩き出す。「すごいね、かっこいいね。びっくりしちゃった」そういう私に「そういうコンセプトのバンド……だったし」そんなふうに応える彼女を誘いながら、柊家の館とは反対方向……今日のねぐらのほうへ歩き出す。

koto @ktosawa

@ZS_tl うん、やっぱり無理。今日は……ムリ。だから、少しだけ、自分の中の整理を、そして大切な人に嘘をつかずに、今日起きたことを告げさせて。　それから、それからに、させて。手遅れにならないように今は祈るしかできないけれど、もう、今日は気力が尽きてるから。

koto @ktosawa

@ZS_tl 柊家の館のほうへ視線を向けて、振り切るように背を向けて歩き出す。ごはん、たべよう。ハルカ君と、一緒にあったかいスープでも作るんだ。命を明日につなぐために。今日は、いまは、そうしたい。　弱い私を、どうか許して下さい。

koto @ktosawa

@ZS_tl 以上。これで一応「元歌手」との出会いも含めた３日前のロールおわりです。お読みくださった方、ありがとうございました。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 強い女性だった。それが彼女の、久野優梨の感想。とても強く、とても真っ直ぐで…とても弱い。繊細でありながら豪胆。まだ若いのに抱えてしまえば自分が潰れやしないかと思うような細腕で抱えようとする、私と同じ悲しみを知りながらも奇跡に縋らなかった。なんと強い女性なのだろうか。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 私の真の名を聞いた彼女は、歌姫を息子と呼んだ彼女は、彼を止め、彼の心を救うという。今も十字架を背負う彼女に更に重い枷を与えるようなことを言ってしまったが、"取り残されたのに復活を望まなかった子供"は"復活を望むふたり"よりも強い。すぐには無理でも、もし、もしも。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 私にも、あの少年にも、誰にも本当には開いていないのであろう龍夜の心を、開かせるというのなら。彼女になら託してもいいような気がした。会長が『　』であるという事実は今きっと彼の心を更に苦しめているはず。一人になりたい時が過ぎた後、必要なのはきっと私より彼女やあの少年。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 最初はともあれ、今はお互いがお互いの幻想に縛られあって傷を慰めあっているのに近い私と歌姫の関係では、きっと一生お互いの奥深くを癒せない。彼に近すぎる私ではもう救えないが、彼はまだ間に合うのなら。彼女の言葉にそんならしくない考えをしてしまった。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 『喪われた命は戻らない。もしも戻ってきた時、その人は本当に喜ぶのか、周りが自分の為に払った代償を許容できるのか。愛する人を悲しませることにはならないのか』彼女の言葉が何度も何度も頭に響く。間違ってる、と一言言われるよりも優しく残酷な言葉。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl この問いは娘の死んだあの日から何度も何度も自問自答し、悩んだ。悩んで悩んで…悩みぬいて娘の蘇生を、人の道に背き、奇跡を求めると決めた。なのに、弱い私は彼女の言葉がアリーセ自身に言われたかのように突き刺さり、また迷っている。…もう、止まることなど許されないというのに。

シュクレ@ＪＯＫＥコーポリーダー @BadheartDiva

@zs_tl 「……アリーセ、パパは間違っているのだろうか。もう一度、アリーセに歌ってほしいのは…アリーセの、望まないこと、なのだろうか…」写真の中の最愛の娘は、ただ微笑む。　「♪貴方の為だけに歌ってあげる　貴方がそれを望むなら」プロジェクターの中の彼女の声に、声を殺して泣いた。