#キュミン同級生 第2部 しき(@rasoraso124)さん作

しきさん渾身の大作、「キュミン同級生」第2部をまとめていきます。
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しき @rasoraso124

44.…今朝は不快な暑苦しさで目覚めた。汗ばんだ身体が気持ち悪い…制服を着る前にシャワーを浴びたい。キュヒョンは無駄にエネルギーを奪っていくような、この季節が苦手だった。ただでさえ外に出るのも怠いのに。…早く夏休みになればいい。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:21:22
しき @rasoraso124

45.リビングテーブルに一冊の雑誌が置かれていた。姉がよく読んでいるクラシック専門誌だ。表紙を見て、少し驚いた。コンクール受賞者として掲載されている数人の中、例の、姉の友人…"彼女"の姿が特別に大きく写しだされていた。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:21:37
しき @rasoraso124

46.以前から姉に聞かされていた事は、どうやら本当らしい。それはどう見ても、世間からの彼女への注目の大きさを物語っていた。一度だけではあるが、自分も彼女の演奏を目の当たりにした。ーー世の中が彼女に寄せる期待…それを納得するには十分だった。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:21:47
しき @rasoraso124

47.ーー、あいつも。 きっと…これを見て喜んでるんだろうな。ふと、イソンミンの顔が脳裏に浮かんでくる。あの時の完璧な二人の姿を、抱擁を思い出す。……要らない記憶だ。自分は、全くの他人。無関係過ぎる。キュヒョンは小さく嘲笑した。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:21:59
しき @rasoraso124

48.…イソンミンと帰りの電車まで一緒だったという事に、キュヒョンは今まで気づかなかった。勿論2人以外にも多くの同校生が乗り込む車両だ。ただ、イソンミンという存在を認識した後、彼をいとも容易に見つけてしまえるようになった自らに、複雑な気持ちを覚える。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:22:31
しき @rasoraso124

49.同じ車両になる事も、そうでない事もあったが、どのみち必要以上に近づく事も、挨拶をする事も無かった。…当然のように老人や妊婦に笑顔で席を譲る姿は…さすが、全くぶれない。"イソンミン"らしい。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:22:54
しき @rasoraso124

50.キュヒョンの降りる、二駅前。とある繁華街を前にした駅で、イソンミンは下車していく。それは彼が暮して居るであろう、いわゆるセレブエリアとはかけ離れた場所で…、いつからかキュヒョンはそれを不思議に思っていた。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:23:10
しき @rasoraso124

51.その日もイソンミンは同じ車両の少し離れた座席に居て、キュヒョンはそれを視界の端に捉えていた。吊革にもたれながらその後しばらくは敢えて逆の方向を眺めていたが、急に車両がガタ、と揺れたのを機に、キュヒョンは何となくまたイソンミンの方を眺めやった。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:23:30
しき @rasoraso124

52.そこには、こくり、こくりと頭を小さく揺らし、うたた寝をする姿があった。…見ているこちらがウトウトと眠くなってしまうような、まるで昼寝をする子どものような、あどけない表情。電車の揺れにも動じず、すぅすぅと寝息をたてている。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:23:42
しき @rasoraso124

53.彼の降りる駅が近づいている。…目覚める様子は無い。つい目が離せなくなった。(…起こすか?) いや、何で俺が。第一降りる駅を知ってる事を変に思うだろ。 (…おい) (…着くぞ、起きろ) 放っておけばいいのに。…気がつけば心の中でそう呼びかけていた。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:24:57
しき @rasoraso124

54.ーー駅に到着する数秒前、イソンミンはパチリと目を見開いた。すぐに状況を理解して、鞄を手にする。(…声が届いた?)…そんな筈は無い。キュヒョンはそんな風に一瞬でも思った自分の滑稽さを、イソンミンが目覚めた瞬間に何故か感じてしまった安堵を、恥ずかしく思った。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:25:07
しき @rasoraso124

55.白い手の平で額を拭うイソンミンの姿を見て、キュヒョンも自分の額の汗に気づいた。…そういえば今日はクーラーの効きが悪い。…夏は嫌いだ。なのに、イソンミンが降りて行く瞬間、開いた扉から流れ込んだ夏の喧噪が、なぜか今日は不快では無くて、それがとても不思議だった。 #キュミン同級生

2012-12-27 00:25:35
しき @rasoraso124

56.明日から夏休み…外は茹だる様な暑さ。冷房完備の生徒会室は確かに快適だがそれでも帰りたい…こんな文化祭資料など放って。「…何で今日まで?それも急に」「顧問が期限忘れてたんだ」「その顧問はどこ行った」「…彼女と電話、かな。昨日喧嘩したらしいから」「…最低だな」 #キュミン同級生

2013-01-08 11:27:15
しき @rasoraso124

57.「第一何でお前がそんな事知ってんの」「俺だって別に聞きたくないけどな、俺に愚痴ってくるんだもん何でも」そう言いながらチャンミンの指先はキーボードを高速タイプし続けている。「しかも彼女、可愛いよ。無理矢理画像見せられたけど」「…あのメタボに不思議だな」 #キュミン同級生

2013-01-08 11:27:43
しき @rasoraso124

58.「まあ性格が男らしいから、お前と違って」「…おい」「お前結構女々しいもん。最近俺に隠し事するし」「…はぁ?」「昔は何でも話してくれただろ?好きな子が出来た時とか、お前も今よりもっとわかりやすかったし…なのに最近はな~…」チャンミンがわざとらしく溜息を吐く。 #キュミン同級生

2013-01-08 11:27:49
しき @rasoraso124

59.「お前への隠し事は今に始まった事じゃない」そう言い返すと、チャンミンはそこで初めて手を止めてじぃっと睨み返す。「キュヒョナの事は何でも知ってるつもりだったよ俺」 「…全部知られてたまるかよ」「お前最近ぼーっとしてるから。変だから」「…うるさい、放っとけ」 #キュミン同級生

2013-01-08 11:27:56
しき @rasoraso124

60.「ーーーいいかげんにしてください先輩達!!さっきからイチャイチャと…!暑苦しいんですよ!!」 「………いたの、お前」 「いたのって何ですキュヒョン先輩!さっきから目の前で仕事してるでしょう!?」 …生徒会の会計。一学年後輩のミノだ。 #キュミン同級生

2013-01-08 11:28:03
しき @rasoraso124

61.ひょろりと伸びた細身に小顔。大きな瞳をくるくるさせて怒っている。 「しかもメインの資料をあなたたちの代わりに俺が作成してるんですよ!」「これも勉強だよミノ。次期会長はお前しかいないって思ってる」 「チャンミン先輩、心がこもってません」 #キュミン同級生

2013-01-08 11:28:09
しき @rasoraso124

62.「口動かす前に手を動かして下さいよ!」「動かしてるだろ」「キュヒョン先輩が動かしてるのはPSP持ってる手でしょ!?」 「…きゃんきゃんうるさいな、出来てるよ、ほら」PSPの隣のパソコンから、何だかんだとやかましいミノのパソコンにデータを送る。 #キュミン同級生

2013-01-08 11:28:14
しき @rasoraso124

63.「……各部予算集計…構成比までおまけについて……完璧です」 「だろ」 「…これをこの短時間で、あんなにべらべら喋りながら、しかもゲームの片手間に……やっぱり先輩…天才です…」 #キュミン同級生

2013-01-08 11:28:19
しき @rasoraso124

64.「おい、ミノ。こっちもだぞ」 チャンミンがキュヒョンの手からPSPを奪った。画面をひっくり返してミノに見せ、ニヤリと笑う。 「……」たった今キュヒョンがクリアしたゲーム。その超高得点をミノはぼんやりと眺め、やっと黙った。 #キュミン同級生

2013-01-08 11:28:26
しき @rasoraso124

65.PCパーツの買い物に付き合ってくれと以前からミノには再三頼まれていた。キュヒョンは余りの面倒臭さに暫くの間それを受け流していたが、毎日の様に送りつけられる催促メールに、とうとう重い腰を上げたのは夏休みが終わる直前だった。 #キュミン同級生

2013-01-10 10:40:05
しき @rasoraso124

66.「ネットで買えばいいだろこんなの…」「いや!先輩の知識が必要だったんです!実際先輩、店員より詳しいし♡」望み通りの物が買えたミノはかなり上機嫌だ。「お礼にメシおごります!」リーズナブルだがそこそこ美味い焼肉屋で夕飯を食べ、2人は別れた。 #キュミン同級生

2013-01-10 10:40:08
しき @rasoraso124

67.駅に向かって歩いていく。繁華街とは言え、何となく薄汚れた色合いの街並みをキュヒョンは眺めた。安価で飲める居酒屋や飲食店、露店、小さなライブハウスなどが立ち並び、そこかしこが若者で溢れている。…夜は特別騒がしい。 #キュミン同級生

2013-01-10 10:40:16
しき @rasoraso124

68.そういえば、ここはイソンミンが毎日降りていく駅だ。いつもこの街で、あいつはどこに向かうんだろう。歩きながら何となく、ふと思い出しただけだった。 だから、本当にイソンミンに遭遇する事になるとは思いも寄らなかった。 …それも、こんな思わぬ形で。 #キュミン同級生

2013-01-10 10:40:27