日本国憲法と女性の権利 by 想田和広

憲法の作成に関わったペアテ・シロタ・ゴードンさんが亡くなった。彼女のことはもっといろんな人に知られていいと思う。
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想田和弘 @KazuhiroSoda

ベアテ・シロタ・ゴードンさんが亡くなった。僕が駆け出しのTVディレクターだった頃、アメリカのTVにConstitution Writerという肩書きで出演されてたのを観てビックリした。日本国憲法の草案を書いた人がそこにいるってことが衝撃だった。

2013-01-01 03:40:42
想田和弘 @KazuhiroSoda

ベアテさんの父親はレオ・シロタという世界的なピアニスト。ベアテさんは子供のころ家族で日本に住んでいた。だがアメリカに留学中に太平洋戦争が勃発。ベアテさんは、日本に残してきた音信不通の両親に会いたい一心で、敗戦後GHQにスタッフとして志願した。それが唯一、日本に入る手段だった。

2013-01-01 04:33:40
想田和弘 @KazuhiroSoda

GHQの一員として来日したベアテさんは、やがて日本国憲法の草案を書くチームに配属された。当時彼女は22歳。唯一の女性。戦前の日本で女性が虐げられているのを目の当たりにしていたため、女性の権利を憲法に盛り込もうと奮闘した。それは両性の本質的平等を定めた憲法第24条として結実した。

2013-01-01 04:47:06
想田和弘 @KazuhiroSoda

日本語が堪能なベアテさんは、GHQ草案を日本語に訳す作業や、日本政府との折衝での通訳としても活躍した。草案は1つ1つ日本側と協議され、両性の本質的平等を定めた第24条については日本側から「日本文化に合わない」と激しい抵抗を受けたそうだ。

2013-01-01 04:52:15
想田和弘 @KazuhiroSoda

紛糾の末、最後はケーディス大佐が「この条文はベアテが書いた。彼女に免じて受け入れないか?」と日本側に提案した。ベアテさんと緊密な交流があった日本側は、結局はそのひと言が決め手になって受け入れたそうだ。因みに両性の本質的平等という概念は、合衆国憲法にもない先進的なアイデアである。

2013-01-01 04:57:00
想田和弘 @KazuhiroSoda

「日本国憲法はアメリカに押し付けられた憲法だから改憲が必要だ」という声が高まっているが、僕は押し付けられて良かったと思っている。少なくとも「婚姻における両性の本質的平等」は無理にでもネジ込んでもらって良かった。あれがなかったら、日本の女性は今よりも不利な立場に置かれただろう。

2013-01-01 05:03:29
想田和弘 @KazuhiroSoda

そもそも、GHQが草案を書くことになったのも、最初に日本側が出して来た新憲法案が大日本帝国憲法とほぼ同じだったからである。GHQが日本の草案をそのまま受け入れていたら、戦後の日本の民主主義はあり得なかった。

2013-01-01 05:06:38
想田和弘 @KazuhiroSoda

無論、GHQに圧力を受けず、最初から日本政府が自主的に民主的な憲法を書けたのなら、それほど素晴らしいことはないだろう。だが、押し付けられた日本国憲法と、自主的に書いた「大日本帝国憲法モドキ」のどちらが望ましいかといえば、圧倒的に前者であろう。

2013-01-01 05:13:29