蓮子が死んだから始まるSS

あーん、連子ちゃんが死んだ!2012年は新譜が2枚も出て『今、時代は秘封倶楽部だ!』って思ってたのに…美人薄命だ…ぐすん… というわけで『宇佐見蓮子が死んだ』で始まる即興SSをまとめました。
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ろき @loki__k_

(あ……)ぐらりと体が後ろへ倒れようとする――寸前、メリーの右手が私の左手を力強く捕らえる。引き寄せられた体を左腕でがっちりと支え、互いの距離が限りなく近付く。「メリー、ちょ、近い……」「――ねえ、蓮子」「ひゃ、ひゃい!」普段と違う大人びたメリーの様子に思わず声が上ずる。 #便乗

2013-01-01 23:14:46
ろき @loki__k_

「お姉さま、でいいのよ?」「……はあ?」かあ、と見えないカラスが頭上で阿呆の様に鳴いたかのような錯覚を覚える。学食の片隅で繰り広げられるこの茶番劇に周囲の学生達の好奇の目が向き始め、居たたまれなくなった私はメリーを引きずり、急ぎその場を後にした。勿論紙コップはゴミ箱へ。 #便乗

2013-01-01 23:18:16
ろき @loki__k_

校舎裏のベンチで不機嫌そうにコーヒーの缶を弄びながら私は己の将来についてぼんやりと思案する。後輩かー宇佐見ちゃんかーうふふふふなどという不審者の独り言をノイズキャンセリングする機能が早急に求められる。「ねえ蓮子」「……」「このままいくと私の方が先に卒業するわよね」 #便乗

2013-01-01 23:28:03
ろき @loki__k_

「ええそうですよはいはい私は一年間余分に学費を収めなければならない親不孝者の学生ですよ」「不貞腐れないでよ」馬鹿げてる。そうせずにはいられないっていうのに。ああ、両親にはなんて伝えればいいのだろうか……頭痛が酷くなってきた。今日はもうとっとと寝たほうがいいのかもしれない。 #便乗

2013-01-01 23:31:24
ろき @loki__k_

「つまり、私が四年で大学を出て社会人になった後に学部生で一年間。院に進んだとしたら三年間は学生の蓮子をヒモに出来るのね!」「はぁ??」「いやぁ蓮子には悪いけれども、これで人生の楽しみがまた一つ増えたってものよ」呆れて物も言えない。でも、不思議と悪い気分ばかりではない。 #便乗

2013-01-01 23:35:55
ろき @loki__k_

学費なんてバイトなり奨学金なりでなんとかすればいい。親にはこってり絞られるだろうけれども、それもまたきっといい経験になるのであろう。メリーに諸々をリードされるのも……そう悪くはない。そう考えると随分と気が楽になってきたようだ。「あはは……ありがと。少し気が晴れたわ」 #便乗

2013-01-01 23:39:27
ろき @loki__k_

「じゃあとりあえず試験お疲れ様記念と」「と?」「将来の私達の同棲が決定した記念で」「ヒモになるのは確定なの!?」「だってヒモを飼うのって人生で一度位やってみたくない?」「ならねえよ!」 ――ちょっぴりだけ不安はあるが、まあ面白おかしい学生生活はまだ続けられそうだ。 #便乗 #終劇

2013-01-01 23:42:20

安心してクズ蓮子さん読めました。

便乗そのろく。枯辺(@carebehinata)さん

枯辺日向 @carebehinata

少しタイムラインから離れている間に蓮子が死にすぎている。

2013-01-01 23:26:48
枯辺日向 @carebehinata

宇佐見蓮子は生命活動を停止――死んだのだ!

2013-01-01 23:29:41
枯辺日向 @carebehinata

宇佐見蓮子は死んだ。自身の与り知らぬ世界で何度も死んだ。愛撫されることと同じくらいの価値観で、次々と殺され続けた。それでも目の前の宇佐見蓮子は、スプーンでカップスープを掬って、舐めるばかりを繰り返せていた。せめてその蓮子だけは、殺してはならぬと、私は。

2013-01-01 23:46:50
枯辺日向 @carebehinata

交す言葉もないままに、彼女の背中の温度を自身の胸で感じていた。宇佐見蓮子は未だ生きている。彼女の肩に顎を投げ出して、窓が映し出す自分たちをじいと眺め続ける。生産性の無い時が、漫然と満ちていた。

2013-01-01 23:54:47
枯辺日向 @carebehinata

「今日はいやに甘えん坊ね。どうしたっていうのよ、メリー」彼女の口元から、僅かにコンソメと唾液の混じった香りが漂う。「お構いなく」「……怖い夢でも、見たの?」「怖い現を視たのよ」

2013-01-02 00:01:00
枯辺日向 @carebehinata

蓮子は私に抱きつかれたきり、何も問い掛けはせず、カップスープをふうふうと冷ましてばかりいる。吐息と、スプーンがカップに触れる音以外は凡そ寂寞の世界に、電子音が割って入る。蓮子は、充電ケーブルごと携帯端末を手繰り寄せた。

2013-01-02 00:07:48
枯辺日向 @carebehinata

「うわー」端末を眺めながら零れ出たその声は、嫌悪でもなく、恐怖でもなく。どこか棒読み気味の声は、諦観、と言い表すのがきっと適切かもしれない。肩越しに覗き込む画面には、私も良く知っている言葉の羅列たちが写り込んでいる。

2013-01-02 00:13:11
枯辺日向 @carebehinata

蓮子はそのまま呟いた。「また死んだ」と。「……知っていたの。蓮子が、死に続けていることを」 彼女はどうしてか、きっと、へらりと笑ったのだと思うけれど、距離が近すぎて表情を窺えない。カップの湯気が視界をぼやかしてしまって分からない。

2013-01-02 00:18:12
枯辺日向 @carebehinata

「私の死にざまが綴られて、まとめられるたびに、通知されるように設定されているの。だから、全部知ってるの」と。

2013-01-02 00:22:42
枯辺日向 @carebehinata

「そんなことよりメリー。そこの瓶詰めの水、取ってよ。このスープ、熱すぎてまだ飲めないから」「えっ、あ。水?」「ローテーブルの上。そのまま、手を伸ばせば届くでしょ」窓に映る宇佐見蓮子は、苦く笑っている。「もしくは、解放してくれると嬉しいかな」私は、手を伸ばすことを選んだ。

2013-01-02 00:30:32
枯辺日向 @carebehinata

天然炭酸水とは随分と高級なものを。少しばかりぬるい瓶、封は開いていない。手渡す前に、ぎちりと封を捻ってはみるけれど、存外に固くてびくともしなかった。手汗を拭いて、ぐっと捻りなおしてみる。

2013-01-02 00:38:55
枯辺日向 @carebehinata

ぶしゅう、と。 吹きだした炭酸水は蓮子に握られたままの携帯端末を、躊躇いなく濡らしてゆく。「ご、ごめん蓮子」「あっ」端末の画面は次第に暗転し――。

2013-01-02 00:42:18
枯辺日向 @carebehinata

壊れた端末の画面はもう映らない。それなのに、通知音は鳴りやまない。死に続けていることだけしか、わからなくなった。

2013-01-02 00:48:48
枯辺日向 @carebehinata

蓮子曰く、幸せな死に方をすれば、オルゴールのような音が鳴るのだと。酷い死に方をすれば、ブザーが鳴るのだと。 炭酸水を飲み干しても、スープがすっかり冷め切ってしまっても、鳴るのはブザーばかりだった。

2013-01-02 00:52:29
枯辺日向 @carebehinata

ブザー音の中で、私は蓮子を押し倒さずにはいられなかった。誰か、宇佐見蓮子をもっともっと幸せに殺してやればいいのに。 #便乗

2013-01-02 00:58:28
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