@home 運命線の上をひた走る 夢で見た通りの道順をなぞる 角を左へ右へと曲がり ついには端からこぼれて落ちて、僕の生は終わるだろう ねえ神様
2013-03-26 01:40:28@home よくわからない色の砂に足をとられる あの日浴びた生臭い血潮の色にも、それが皮膚の下で行列していた時の色にも見えた 肉が削げて覗いて見えるあの骨の色ではないのだけがなんとかわかった時に、僕はもう鼻のところまで埋まっていた
2013-03-25 01:01:05@home 去年死んだ恋人のお墓の上にお弁当を広げてランチにする 小さくてふわふわの毛並みを持った悪意のかたまりみたいなうさぎの恋人だった
2013-03-23 09:22:45@home 間に合わないと知った またひとつ消えた蝋燭に向かって自分に暗示をかける為に息を吐く 薬品の匂いにまみれた両の手を眺めているうちに、それが自分のものであるのかわからなくなった
2013-03-20 22:46:32@home 幸せだよ?って自己暗示をかけて甘いケーキで喉を汚す君 お気に入りのワンピースにぼたぼた落ちる生クリームなんか気にしていない風だ 君の喉に空いた穴から流れ出す甘すぎる紅茶がどこもかしこも汚していく 甘く汚れていく君を眺めてすする紅茶の美味しいことといったら
2013-03-06 16:50:41@home 毛布にくるまった自我を 切れ味の悪い包丁で叩き潰す そこに詰まった僕とそのほかのものすべて それを眺めてゆくだけの人間の顔 人間の目 こちらを見ているのに絶対に目が合わない そんな彼らと浅ましい僕が押し込まれた見世物小屋みたいな布団の上
2013-03-05 06:31:11@home 君という名のでこぼこしたリボンを首に巻く もう先に行ってしまったのだろうか それならば追いかけなくてはと思った 独りよがりな友愛を突き立てて、狂った様に泣き喚く 衣服がリボンと同じ色になってゆく 僕が僕ではなくなってゆく
2013-02-27 19:20:15@home 長いだけのテーブルに並べられたありとあらゆる憐憫の目 それを片端から食べてゆく 顔のない隣人が掴んだ虚ろ 無花果という空虚 両手に掴んだそれを握り潰して虚ろが流れだしている 幾数もの拳から流れだす テーブルクロスは虚ろ色に変わった
2013-02-27 19:13:32@home 遠慮も無くじろじろを見ている月 目の端から鼻の頭へ 物足りなさ気な目をくれてやると、答える様にまばたきをする頭上 骨が軋んだ気がしておそろしくなって、両の目を潰した これでやっと眠れるのだろう
2013-02-27 19:09:41@home 青いリボンを骨に巻いて 夜会へ繰り出す骨肉ども 解けてゆくリボンを踏みつけて何度転ぶのやら それで何度バラバラになるのやら 血液が足りていないのだと叫び、会場に赤い雨を降らす僕は きっと彼らには神様に見えたに違いないのだ
2013-02-18 18:50:05@home 腹から生やした花だか草だかよくわからないもの それに主導権を握らせたまま横たわるだけのおまえ いつ飛び起きるかわからない得体の知れない動きをしながら、それでも死んでいっているのだとわかる顔をして ガラス越しに僕の意識を投げてやる
2013-02-18 18:43:51@home 僕の背を棒でぶち抜いて、お馬さんごっこをしましょうと言う君の無邪気さに ぐるぐる回ってみせる 僕の腹の中をシチューでも混ぜる様に棒も回っている 目が回った
2013-02-16 23:45:52@home 剄る幼い頃の僕を 冷めた紅茶でも飲み干すかの様に 染みの出来たシーツの端を掴んで冷たくなった手 嫌な匂いがする 宙に浮かんだナイフの柄を掴み損ねたので、腕に傷をつけてしまった ああ 嫌だ 嫌だ
2013-02-16 23:40:44@home ほらそこの、交差点 なに、と言いながらそれに目を向ける彼女に もう数秒したら事故が起こるよと指をさす いつまでたってもそんな事は起こらない起こりやしない 飲みかけの珈琲もそのままに、貴方はなんて馬鹿な人なのと叫びながら車に飛び込んだ、君
2013-02-15 19:06:53@home ぼくのメアリーアン ぼくのメアリーアン 命令してあげないと不安で首をくくりにゆく かわいそうなぼくのメアリーアン きみは一体、何度しんだというの
2013-02-13 09:40:27@home 泣いたままでいる青磁の壁 夢に浸かったままの幼いあかがね あの子たちは手をつないだまま、同じ方向へも往けず、どんな終わり方をするのだろう
2013-02-11 14:31:05@home 大事に仕舞っておいた葛籠を踏み壊す 好き勝手散らばる光る石 飛び散る脳漿 骨と石に埋もれる僕は、嬉しさのあまりそれを手折った
2013-02-07 22:16:37@home 泥と雨にまみれた顔をさらして窓の外に立っている顔 陥没した頭蓋を麻の布にくるんでぐいぐい窓に押し付けている ひびの入る窓と頭蓋 血に塗れるおまえとわたし
2013-02-07 22:04:27@home 足首をくくって、おまえの望む姿にしてあげよう 海に帰りたいと嘆くおまえを、人魚にしてやろう きれいなきれいな赤い縄でくくって、崖の上から突き落とせばきっと 地上に戻ってくることのない様に、縄の先に重石をつけてあげようね
2013-02-07 01:49:26@home 首を振る仕草だけで僕を拒もうとする君を ゆるゆると切り分けるだけ 何かを言おうと口を動かすので、耳を近づけて聞き取ろうとするけれど音がしない そういえば声帯は昨日売り払ってしまったのだっけ 少しだけ残念に思いながら身体を離そうとしたら、君に耳を食われてしまった
2013-02-02 10:57:44@home 僕が愛そうとした喉笛を、それを、抱えたまま君は屋根の上から降ってきた なにをしているんだと訊ねる 飛び降りるだけではあちらへ行けないかもしれないから、首を絞めて飛び降りればいいのではないかと思ったのだ と言う 僕が愛そうとした喉笛を守って傷ついた手の甲を見る
2013-01-31 19:13:09@home 眠る度に何度も降り立つ場所 先客がいた 座り込んで地面に何かを書き続けているその人の肩を叩く 触れた瞬間同化を始めてしまったので、焦って腕を斬り落とした 彼はまだ一点を見つめたまま地面に何かを書き続けている その地面を擦る様に蹴ってやる 何も書かれてはいなかった
2013-01-30 02:38:07