- ninoseakihito
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らりこはこの撮影ディスクを大量にコピーしてあらゆる伝を使い配布、世界中に自国の領土をアピールした後、再来訪した外相に歴史に残る名言『クトの船はアームの爪の先まで私たちのもんじゃこのたわけ!!』を放ったという。
2013-01-06 22:51:30特に逞しさを魅力と感じるメンタリティを持つパンゲアの男性からは非常に好意的な反響が多く、『砂漠以外にもこんなに逞しい女が居るとは』『俺の嫁は宇宙(そら)にいた』『彼女は遠い同胞』『宇宙タンクトップ萌え』などの意見が相次ぎ、現在の両国の友好的な関係の切っ掛けとなった。
2013-01-06 22:59:33―クト編小話―
がふ、がふ、と油圧の作動音が響く。降下ポッド内は真空だが、「風切羽」のテスト時は、機体の固定具を伝って音が聞こえるのだ。自身の耳を使って具合を確かめられる機会は船外ではそうない。ナダはその音を聴く度に安心感を得るが、今回の作戦に参加する新兵はそうはいかないようだった。
2013-01-24 22:20:53「…少尉。テストは各部二回で充分だ。それ以上は意味がない」 「はっ、申し訳ありません少佐。…しかし、この『機外から聞こえる音』というのは、どうも落ち着かないものでして」 「二度目には慣れる。そのための一度目だ」 「そういうものでありますか」 「そういうものだ」
2013-01-24 22:28:30嘘をついた。何度となく降下を繰り返したナダでも、緊張はなくならなかった。ただ、『降りてしまえば後はどうにかするしかない』という、ある種の諦観にも似た覚悟が決まるだけだ。 だが、それには『どうにかなった』一回目の経験が必要なのは、確かなことだった。
2013-01-24 22:39:38「大丈夫だ少尉。少佐がいれば何があってもフォローしてくれる。訓練通りにやることに集中しろ」 ナダの意を汲んでか、二番機の部下も新兵の緊張をほぐしにかかる。が、何でもは些か無茶振りが過ぎると言うものだ。通信に映像が入らないことを良いことに、ナダは露骨に顔をしかめた。
2013-01-24 22:49:01気分転換も兼ねて、三番機の寡黙な男に話掛ける。 「調子はどうだ、中尉」 「機体でしょうか、自分でしょうか」 「両方だ」 「特にこれといって、問題はありません」 「貴官に問題があったところを見たことがないな」 「…拙かったでしょうか」 「否、何よりだ」
2013-01-24 22:59:53ひとしきりの声掛けが終わったところで、本艦からの通信を示すランプが点灯した。 「1600、作戦開始時刻です。これより投下装置(ランチャー)の制御を引き渡します」 「確認した」 「降下進行をナダ少佐に委任します。御武運を」 「ありがとう」
2013-01-24 23:10:33普段ならば即座に降下を開始するところだったが、今回の四番機はルーキーだ。一言入れる必要があるだろうと、ナダは少し逡巡してから口を開く。 「各自知っての通り、今回の『降下作戦(ドロップ)』の目的は、クト本艦を狙う軌道狙撃砲の破壊にある。」
2013-01-24 23:19:10三番機の彼ほどでないまでも、ナダは饒舌な方ではなかった。この演説も、ブリーフィングの焼き直しでしかない。内容はどうでも良く、『間』さえあれば充分であるからこその、似合わない行動。 「オーソドックスな施設攻撃になる。地理的に特殊な要素はない。施設重要度から鑑みて、増援も考えにくい」
2013-01-24 23:28:53返事がないことはわかっている。構わず続けた。 「何もかもが訓練通り、あらゆる要素がシミュレータ通りだ。訓練の延長に過ぎない。もう一度言おう、これは訓練の延長だ。各自いつもの通りに私について、いつもの通りに仕事をこなせ。わかったか」 はっ、と言う返事が重なった。 「よろしい」
2013-01-24 23:37:33ポッドの固定を解除する。各機もそれに続いたことを確認した。 「では、降下を開始する。番号順にシグナルに従って降下しろ。作戦中だ、フライングして私のケツにキスするんじゃないぞ…よし、先行する!射出!!」 コックピットに軽くかかったGが、ナダの神経を少しだけ撫でた。
2013-01-24 23:44:56