「キラキー邸の黒猫の話」

これはオレが学生時代に平塚市の中央図書館で読んだ怪奇・オカルト系のムック本にイラスト付きで載っていた話ですが、惜しいことにその本の書名を忘れました('A`)y~。話の最後に出てくる「黒猫の絵」も一緒に載ってたんですけどねえ。
思い出 妖精 妖怪 怪談 アイルランド ぬこ
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satakein:limbotemple @satakein
「キラキー邸の黒猫の話」
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アイルランドのどの地方だか忘れたが、ある騎士の一族が代々住んでいる館があって名前を「キラキー邸」という。この館は「黒猫」をシンボルとしており、家の紋章にも黒猫の頭があしらわれている。どうして黒猫が騎士の居館のシンボルになったのかその経緯は定かではないが、噂によれば(続く)
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(承前)このキラキー邸には黒猫の姿をしたある種の超自然的な存在が永きにわたって住み憑いており、代々の館の住人一族の前に稀にその姿を現すのだという。20世紀初頭の話だそうだが、英国のロンドンから一人の画家が招かれてこのキラキー邸にやって来た。彼は壁画やフレスコ画の修復を(続く)
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(承前)得意としており、この度招かれたのは邸内の通廊の壁に描かれた地方の歴史や一族にまつわる伝説を題材とした壁画の修復のためであった。邸内に一室を提供された彼はそこに起居し、かなりの長期にわたって貴重な壁画の修復作業に心血を注いだ。作業は通廊に照明を設置して夜間に(続く)
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(承前)及ぶこともあった。館にやって来て数週間が過ぎたある夜のこと、彼はいつものように照明の灯の下で脚立を上り下りしながら気骨の折れる繊細な作業に没頭していたが、ふと何か「違和感」を感じて手を止めた。なんだかおかしな空気というか雰囲気を感じた。ふ…、と彼は脚立の上に(続く)
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(承前)腰を据えたまま、今作業している通廊の左手に顔を向けた。通廊の左手は突き当りで右に折れており角には庭園に通じる扉があるが今は開け放たれている。彼が不思議な雰囲気に飲まれたまま見ていると、その通廊の突き当りを右手から、すう… と、丈の高い、漆黒のローブを纏い、(続く)
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(承前)頭をすっぽりとフードで覆うた人物が足音もなく、威厳ある足取りで通廊を過ぎって扉から庭園に出て行った。この館に来た際に彼は館の主人一家や使用人達に紹介をされているが、この邸の住人の内に今通った人物のような時代がかった出立ちの者は一人もいなかったはずである。なにか(続く)
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(承前)催し物でもなければそんな仮装などする筈もない。彼は暫く脚立の上で凍りついていたが、それでも自棄糞気味に勇気を鼓舞して「おい。こっちからは見えてるからな」と声をかけてみた。半ば嗄れた自らの声が通廊の壁の壁画に描かれた景色に谺するようなその時。かれの背後から(続く)
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(承前)…「きみなどに見える筈がない。あの扉は開けたままにしておきなさい」と。低い、深々とうつろに響くような、威厳ある壮年の男の声が、した。 …かれは再び凍りついたが、脚立の上にいるという不安定な今の状況が却って頭を冷静にさせた。そして彼がその声のほうに、そっと、顔を(続く)
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(承前)向けてみると、   美しい時代がかった壁画の続く通廊の右手の突き当たりに、まるで牡牛ほどもある巨大な躯で、漆黒の毛並をつややかに輝かせた、信じられない程巨きな黒猫が床に身をくつろがせていた。その両眼は燃える石炭の火のように赤く炯々とし、やや不機嫌そうに耳を寝かせた(続く)
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(承前)態で尊大に彼をねめつけていた。 それからの事はよく覚えていないと彼は言う。脚立から転げ落ち、顔料や筆やらを辺りに散らばせながら手近の部屋に逃げ込み、ドアを押さえて震えているうちに気を失ったのか眠ってしまったのか。あくる日になって彼が館の家事を取仕切っている(続く)
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(承前)代々館に仕えている「執事」をつかまえて昨夜の出来事をぼそぼそと打ち明けると、老年の執事は驚いた素振りも見せずに「では貴方様も、あれに気に入られたのでしょう」と、平然と答えた。彼の種々の質問に執事ははかばかしくは応えなかったが、ただあれはこの邸の守護神であって(続く)
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(承前)邸の主以外の者にその姿を見せることは滅多にないのだ、と明かした。彼はそれからも数ヶ月をその館で作業に明け暮れたのち、ロンドンに戻ってから一枚の水彩画を描いた。巨大な黒い躯に燃える石炭のような赤い両眼、やや不機嫌そうな表情で威厳を露わにしたその妖しい黒猫の絵は(続く)
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(承前)「キラキー邸の黒猫」として21世紀の現在まで伝わっている。(了)

コメント

satakein:limbotemple @satakein 2013年1月15日
えー正直に言いますと、その話と一緒に載ってた、件の画家が描いたという黒猫の絵は本職の画家が描いたにしては上手くなかったです(´・ω・`)。まあそんなもんだ。