2010/08/23 ツイッター小説 お気に入りセレクト
#twnovel わが家の公用語が英語になった。「Hello,Danna」「Hello,Tsuma. How are you?」「Fine,Thank you. And you?」「Me too」「……」「……」わが家の公用語が日本語に戻った。
2010-08-23 00:16:38暗い。壁は肌に密着して窮屈な姿勢を強いられる。定期的に一定の振動と唸りが伝わる。冷たい、のだろう。明るさと温度は扉が開く時にしか感じ無い。眩しさと暖かさが一気に吹き込んで来ると、そこには彼の顔がある。困惑した表情だけど無言。今回解った事。私は冷蔵庫の中に居る。 #twnovel
2010-08-23 00:20:04僧侶は手ずから交接器をまさぐり、三尺はあろうかという錫杖を抜き出した。そうして再び差し戻しては抜き出し、花のかんばせは恍惚の表情に取って代わり、遂には融解し、程なく気化する。見上げれば、だらしなく横たわる裸婦の蜃気楼の股ぐらに、有象無象が吸いこまれていった。 #twnovel
2010-08-23 07:51:45#twnovel 生まれて初めて空を飛べた鴉の雛は無知ゆえにどこまでも飛翔した。大気圏を抜けて宇宙に飛び出し、人工衛星に辿り着いた。真空中で凍り付くことを知らない雛も喉の渇きは自覚出来たので、水色の惑星に向けて飛び降りた。帰還して親鳥に叱られた彼は二度と地球を出ることはなかった。
2010-08-23 08:52:34座より束縛を解き放ち、演者たちは乱舞する。伸び上がり、両腕を振り上げ振り下ろし、脚はこまかくリズムを刻み、顔面を左右に振り向けながら、口々に豊饒な言葉を叫んでいる…「お、お客さまがた! どうなさったんですか? 当機は現在上昇中です。お座りになっていてください!」 #twnovel
2010-08-23 09:12:07入ってきたのは濃紺のスーツを着た男。それは彼女の夫以外の人物であるはずがない。「私が呼んだの」男の方は見ずに、僕を見つめながら言う。「あなたの気持ちが本当なのか確かめたかった。本当に奥さんと別れてまで私と…」男は自分の足元に視線を落としたまま、黙って立っている。 #twnovel
2010-08-23 12:30:16#twnovel 朝早く出かけた娘が昼過ぎに帰ってきた。自分の部屋に駆け込み、何かをドアに投げつけた後は、物音ひとつしなくなった。私が夕方からの打ち合わせを終えて戻ってくると、門の前に男の子が立っていた。彼のポロシャツの胸ポケットから煙草を取り上げた。悪いが俺は吸わないんだよ。
2010-08-23 12:37:31#twnovel 「おじいちゃんはどこにいるの?」と孫娘に聞かれて、私は「お祖父ちゃんはね、雲の上にいるんだよ」と答えた。意識と記憶の完全なバックアップを取る事が可能になり、死ぬ前にデータ化するのが当たり前の時代。去年亡くなったあの人の意識は、クラウド上に保存されているのだから。
2010-08-23 13:00:49#twnovel 観察日記をつけることにした。アリの観察用にはアントクアリウムがあるが、球形のおもしろいのがあったのでそれを買うことにした。飼うのもアリじゃない。どんどん増えていっぱいになり全滅した。店の人に相談したら「地球で人間を育てるのに成功した人はいないんだよね」
2010-08-23 13:23:06隣に住む竹野内さん一家が突然引っ越すことになった。20年以上もの長い間近所づきあいをしていたのだが引っ越しの理由や引っ越し先については一切話そうとはしなかった。引っ越し当日の朝、ゴミ収集車が来る直前の時間に、ゴミ集積所には大量の大きな黒いゴミ袋が捨てられていた。 #Twnovel
2010-08-23 15:00:43相談です。彼がゴミ箱を見ちゃったらしく、「このカップ焼きソバは何だ!誰と一緒に食った!」と怒りまくってます。反論せずひたすら謝るべきでしょうか、それとも、カップ焼きソバふたつを一気食いする女だとカミングアウトするべきでしょうか。(東京都:18歳♀158㎝45㎏) #twnovel
2010-08-23 15:42:52僕は柴犬。お姉ちゃんがせっせと荷造りしている。旅行に行くんだって。僕は隙を見て、お気に入りの骨のおもちゃをポトンと入れておいた。お姉ちゃんが困った顔でやってくる。「ごめんね、コロ。連れては行けないの」うん、わかってるよ、貸してあげる。寂しくなったらそれで遊んで。 #twnovel
2010-08-23 18:00:42夕食の準備をしつつ時計を見上げる。近頃マジックに凝っている夫はまた手品喫茶に行ったらしい…今日は早く帰れと言ったのに。嘆息した時、チャイムが鳴った。ドアを開けた途端におめでとうの声。マジシャンの扮装の夫が仲間の笑顔を背に、シルクハットから出した花束を差し出した。 #twnovel
2010-08-23 20:17:45#twnovel だらだらとマックにたむろっていた仲間の顔が、最近ちょっとずつ変わってきた。宿題どうしようかとか、すぐに運動会が始まるなぁとか、皆二学期のことを考え始めているのだ。祭りの季節は終わるのである。僕? まだ夏休みの目標を達成していない。休みの間にあの娘を誘えるかな。
2010-08-23 20:27:40彼は眼鏡を掛け厚い本を読み耽っている。腕時計が邪魔なのか外してテーブルの上に。私は暇なので其の腕時計を弄ったり胡座をかいている所に横になって膝枕を堪能したり。でも何の反応も無いから諦めてポッキーをポリポリ。「俺にも頂戴」と言うから悪戯して口に咥えて渡してやった。 #twnovel
2010-08-23 20:44:06些細な事でケンカした。悪いのは完全に私。どうしようかと思っていたら目の前に小さな女の子。「今謝らんでいつ謝るん?」ニヤニヤと全てを見透かした顔。分かったような口を聞くんじゃないと両方のほっぺをむにむにした。ごめんねとメールして顔を上げると女の子は消えていた。 #twnovel
2010-08-23 21:03:04#twnovel 路面電車は夕日を浴びながら、鰹節町商店街から香箱山天文台下への坂道を登っていた。鰹節町の猫達を鈴なりに乗せて、小さな車体に似合わぬ勇ましい音をたてて登ってゆく。今夜は夏の終わりの星祭り。天文台までのささやかで騒々しいパレード。空には今年の最後の夏星座のパレード。
2010-08-23 21:09:47ある町に巨大な円盤が現れた。その大きさ恐らく東京ドーム20個分はあっただろう。だが円盤は町を攻撃するでもなくただぷかりと空に浮かんだままだった。日当たりが悪くなった。人々はそう言って次々と町から出ていった。遂に最後の住人が町を去ったその日。円盤は静かに着陸した。 #twnovel
2010-08-23 22:55:11ラグビー大会決勝。無名の選手に過ぎないはずの彼の突進を誰も止められずにいた。束でタックルにかかっても、全てスルスルと交わしてしまう。相手の監督が嘆く。「何故誰も止められない。奴は何者だ!」彼は笑いながら答える。「幽霊部員です。」 #twnovel
2010-08-23 23:06:37#twnovel ぷう。膨らませてみたけれど、ぱぱみたいな大きな真ん丸にはならない。おかしいなぁ。教えてもらったとおりにやってるのに。ぷう。ぷう。ぷう。ままがたくさん膨らませちゃダメって怒ってる。でも上手なりたいんだ。ぷう。ぱぱが頑張れって笑いながらまん丸お月様を空に浮かべてる。
2010-08-23 23:45:26