第三回twitter小説大賞投稿候補作品集

第三回twitter小説大賞の投稿作品候補をまとめました。読んでくださってもしこれがいいとかこれはダメとかあったら言っていただけると嬉しいです。
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日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 母の骨を拾っていると種が出てきた。帰って植えると四十九日で母が咲いて、またいつもの家族に戻った。そんなおり、僕に末期ガンが見つかる。母や父は僕の種を植えてくれるだろうか。そもそも種から生える僕と今の僕は同じなのだろうか。妹の苗に水をやりながら考える。

2011-12-11 23:15:24
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 生きていても仕方がない。絶望した鴨はこうすれば人間が捕まえてくれると長ネギを背負って人里へ降りた。一人の女が鴨へ近づく「あら、ことわざみたい。でも鴨のさばき方も調理法もわからないから鴨鍋はできないわ。ネギは何にでも使えるわね」ネギを持ち去る女、立ちすくむ鴨。

2012-04-25 21:42:11
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 火星が土星に恋をした。相談された木星、「土星はお揃いのわっかをつけたいみたい」とアドバイス。わっかは粒でできている。手近なものを砕いて粒にしよう。こんな事情を知らない地球は、月が消えて大混乱。火星の輪にも気がつかず。

2012-04-27 19:59:13
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 透明な花火を作る職人がいた。今日も夜空に打ち上げる。音さえしないその芸術は誰にも気づかれない。もしあなたが不意に火薬の匂いを感じたり、急にもう夏だなぁと思ったり、何もないのに不思議とときめいたりした時、あなたの眼前には透明な花火があがっているのかもしれない。

2012-05-03 19:46:29
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 「おめでたです」夫婦は喜びあい、親薬を処方される。全ての親になる人が飲む親薬は人を優しく、夫婦仲良く、伝統を守り、世間に迷惑をかけないよう心がける等の親にふさわしい心持ちにしてくれるのだ。薬を飲んだ後神社でお参りをする。産まれたら子薬で良い子に育ちますように。

2012-05-08 20:15:51
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel アコースティックギターをしょって少年は路上に立つ。叫びたいことがある。家族、勉強、世間、いじめ、初恋。警備員がいないのを確認し、チューニングをすると自作の曲を歌いだした。振り向く人々。彼は今から3分40秒間路上のヒーロー。ただこのヒーローはFコードが苦手だ。

2012-05-22 22:52:46
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 彼は本をとばしとばしに読む。昨日は8ページとばし。今日は13ページ。本が閉じられると彼ことはさまれたしおりの読書が始まる。主人公がケガしてるけど転んだ?いつこの二人くっついたの…とんでしまった箇所は想像にまかせて、持ち主より文学を楽しむしおりの夜が更けていく。

2012-05-29 19:53:55
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 天井の木目が顔に見える。冗談で話しかけると「よう」と返事してきた。驚いたがとりあえず会話してみる。木目は悩みを親身に聞いてくれ、慰めてさえくれた。その優しさに思わず涙ぐんでしまった目を拭う。一瞬視界から消えた木目はもう顔に見えなくなり、言葉も聞こえなくなった。

2012-05-31 16:39:05
日向日影@HUB @hyuugahikage

「先生!ディストピア小説の書きかたを教えてください」「じゃあ明日までに、最高のユートピアを文章にしてくるのです」「え、はい…」 #twnovel 「書いてきました」「それをそのままディストピアとして出しなさい」「えっ?」「誰かの理想郷は別の誰かにとって最悪の絶望的世界なのですよ」

2012-06-17 12:54:58
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 審査の結果、5年延長だった。私は安堵したが、体の問題で最長の10年ではなかったことは不安だ。振り返るといつもの嫌な行列が目に入る。泣きながら地下に下りる人々、多くは障害や難病や貧困にある彼らは国の役に立たないため生存の延長が許可されず、安楽死させられるのだ。

2012-06-25 22:10:53
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel ガタン。今朝も家族配達がきた。縮んだ家族に水をかけると妻は朝食作りを始め、息子と娘は学校へいく準備をする。犬に餌をやると私は会社へ向かった。帰宅すると家族と夕食をとる。娘は社会見学だったという。食後に息子の宿題を一緒に解き、家族と犬を返却口に入れ眠りについた。

2012-08-05 21:47:23
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 「コツ…コツ…」足音を聴き2階に上がった警備員は水音に気づいた。寒気を感じながら向かうとトイレの洗面台だった。周囲を懐中電灯で照らすも何もない。そうだ、幽霊なんかいるはずない。安心して階段を降り、1階の警備員室の地図を見て、彼は思い出した。この建物は1階建て。

2012-08-13 01:43:36
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel やり直したい瞬間に戻る薬を飲むと、私は甲子園のマウンドにいた。10回2アウト満塁。私は当時頷いたサインに首を振り得意のスライダーを投げる。ボールよ、どうかあの時のようにスタンドへ飛んでくれ。高校生の私の選択したストレートが、間違いではなかったと証明するために。

2012-08-22 18:58:46
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 新聞を郵便受けに入れる手を上下に伸びる手すりが邪魔する。この家の誰かのための介護用品だろう。毎日いちいち手すりを避けながら新聞を配達する。この手すりなくならないかなぁ。配達人のその願いはある日叶う。配達人は喜んだ。手すりがなくなったその意味を理解するまでは。

2012-08-26 21:48:21
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 教室に早朝みんなで集まり、あいつの生前を思い出していた。みんなにいじられてた楽しいやつだった。クラスのみんなは沈痛な表情になり、何人かは目に涙を浮かべた。やがて始業近くに何も知らないあいつがやって来ると、教室は嘲笑に溢れ、僕たちの葬式ごっこは最高潮を迎える。

2012-09-21 20:49:19
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 愛を液体化することに成功した。愛情不足の人に病院で愛が点滴され、心身に様々な薬効を示した。ただし、過剰摂取は問題となった。愛は依存性が強く、また溺れてしまえば有害でさえあるものだからだ。今日も愛に飢えた人々が、闇のルートで手に入れた愛を直接飲用する。

2012-11-18 21:36:15
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 満員電車の暑さと匂いにボーナスで車を買おうと決めた。停車とともに工場へ走る。「遅いぞ、国からの委託事業なんだからしっかりやれ」上司の説教を聴き流し、書類の記入と充填をするとボタンを押した。仕事といっても楽なもので、あとは敵性民族がガスで死ぬのを見守るだけだ。

2012-11-26 21:22:16
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 年に一度、生存理由申告書を自治体に提出することになった。自分が来年も生きるに足る理由を200字程度にまとめるのだ。とはいえそれをチェックしてどうこうということはなく、ただ出せばいいのだが、なぜか毎年申告書を書く時期になると心を病む人と自殺者が急増するという。

2012-12-02 21:48:43
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel カレーライスが空に浮いていた。掴むと浮き上がらないように押さえつけながら一口。蕎麦屋で食べるような、黄色くて美味しい和風カレーだ。お腹が空いていたので一気にかきこむ。持っていた水を飲むと苦情の電話をかける。天気予報は晴れ時々チャーハンって言ってたじゃないかと。

2012-12-18 23:00:55
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 絶望工場を見学した。ここでは自動車を組み立てるように絶望が製造される。貧困、健康、孤独、パーツがラインに流れる。カイゼンを繰り返した工程により、驚くべき速さでドス黒いドロドロの絶望が出来上がる。工員たちは皆楽しげ。やはり他人を絶望させるのは楽しいものだ。

2013-01-03 21:20:41
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel またメールが返ってきた。適当にスマホをいじる。最近毎晩こいつと長くメールをしている。別に好きとかそう言うんじゃない。なんとなくダラダラとくだらないメールを繰り返してるだけ、そう思ってた。でも、あいつから返信が必ずあるように語尾を疑問系にしている自分に気づいて、

2013-01-05 19:17:11
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 世界の誰より幸福になる指輪が見つかりました。しかし賢き者は、これははめた人以外全員が不幸になることで相対的に自分が幸福になるのではないかと、指輪を火口へ投げ捨てました。そこではめていれば世界中の皆が幸せになって、みんなから感謝された賢者が世界一幸福になったのに。

2013-01-12 21:56:02
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel とある町の海浜公園では棄民祭の真っ最中だ。名物の海の幸もいいが、ハイライトは神輿に乗った棄民達が町の若い衆に崖へ運ばれ、次々母なる海へと投げられる棄民返しだ。各地から送られた重度障害者、最貧層、難病患者、ホームレス等が投げられるたび群衆からは奇声と咆哮がおきる。

2013-01-22 11:01:55
日向日影@HUB @hyuugahikage

#twnovel 心がポイント制になった。脳から思考の記憶を読み取り、よきことを考えたらプラス、あしきことを考えたらマイナスとして採点するのだ。これで頭のおかしいやつらを断罪できると市民は喜んだ。その頭のおかしい人々より自分たちがはるかにマイナスだと知るまでは。

2013-01-28 11:31:43