第3回Twitter小説大賞への応募作品

せっかくなので今回も。 http://www.d21.co.jp/campaigns/twnovel ご感想を送ってくださった皆様、ありがとうございました。 続きを読む
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応募作品

たくわん @takuwan_takusan

車窓にベチンと貼り付いた茶色の液体と、所により「にかわ雨」というラジオの声を認識して、しまった、と私は思った。「にかわ雨」は激しさを増し、瞬く間に視界は薄茶色に染め上げられてしまった。タイヤは路面に貼り付き、ドアも開かず、私は座席の上で固まるしかなかった。 #twnovel

2011-06-27 21:00:46
たくわん @takuwan_takusan

女性下着の専門店に学ラン姿の男子高校生が入ってきた。なぜ、と思ったが、店外にたむろしている悪ガキ共を見つけて全てを理解した。彼は顔を真っ赤にして、きわどいのを、と口ごもった。にやにやと笑う傍観者たちを横目に、私は自分のスカートをめくって、ほら元気だせ、と言った。 #twnovel

2011-08-02 01:21:20
たくわん @takuwan_takusan

昔使っていた教科書を何冊か見つけた。ぱらぱらめくると、隅っこで小さなキャラクターが動いていた。壮大な物語は複数冊にまたがって展開されたが、クライマックスで唐突に途切れていた。僕は続きの描かれた教科書を探した。諦めたんじゃないよな、と昔の自分を問い詰めながら。 #twnovel

2011-09-21 00:30:17
たくわん @takuwan_takusan

頭の上にたんぽぽが咲いていた。いつの間にこんなものが、と思ったが、簡単には抜けそうになかったので放っておいた。すると翌日には綿毛になっていた。外に出ると、春風に乗って綿毛は飛び散り、誰かの頭の上にふわりと着地した。たんぽぽエピデミック。ちょっと楽しい春がきた。 #twnovel

2012-03-08 19:19:58
たくわん @takuwan_takusan

布団が吹っ飛んだ。我が家の布団を見送りながら、私は呑気につぶやいた。春の空を背景に、無数の白い鳥が羽ばたいていた。たった今、息を切らした青年が正面の通りを駆けていった。皆が皆、布団を追いかけていた。私のベッドを温めてくれた布団はどこに向かったのだろう、と思った。 #twnovel

2012-03-26 09:25:47
たくわん @takuwan_takusan

町にワニが出たと聞いて猟銃片手に飛び出した。そして今まさに鞄屋の主人に襲いかかろうとしていたワニの脳天を俺は迷わず撃ち抜いた。ワニは遺言をした。「人間になりたがっている彼女に、俺の革で作った鞄をプレゼントしてやってほしい」 娘の名前も住所も俺たちにはわからない。 #twnovel

2012-05-30 12:24:51
たくわん @takuwan_takusan

毎年、梅雨が明ける頃には祖父を嫌いになった。祖父はいつも晴れやかな顔で西瓜を持ってやって来た。しかし、私は瓜科のアレルギー持ちで、「今年のは上等だぞ」という常套句を毎回突っぱねるのがひどく面倒だった。母が切り分けた西瓜をひとりで食べる祖父の姿が嫌いだった。 #twnovel

2012-07-11 14:23:26
たくわん @takuwan_takusan

『ドラゴンに襲われた?』と先住民の長は尋ねた。『ドラゴン?』『大きい、火を吹く、空を駆ける』ジェット機のことだと気が付いた。『世界の終わり』『いいえ、始まり。私はドラゴンの使いです』長は驚き、私を崇めた。私はこの地のレアメタルに思いを馳せ、口から火を漏らした。 #twnvday

2012-12-14 09:54:36
たくわん @takuwan_takusan

そこには黒い紙があった。これはなんですかと尋ねると、「ただのメモ用紙だよ」と博士は答えた。実験が進み、博士はその黒紙を手に取った。書き込む場所がないことに気が付くと、博士は白いペンで数式を書き始めた。黒紙がみるみる白紙に変わっていった。私はその紙の厚さを感じた。 #twnvday

2012-12-14 08:42:48
たくわん @takuwan_takusan

一日の感情エネルギーは有限で。彼女ができた僕にはそのことが悩みの種だった。デートの時間を遅くすると、朝のうちから楽しみが募りすぎて、約束の時間を待たずに僕の中身は空っぽになってしまう。だから、朝からデートをしていたのに。「ねえ、今晩うちに来ない?」 どうすれば。 #twnovel

2012-12-28 07:39:51

3/3 以下の3作品を応募候補から除外

たくわん @takuwan_takusan

とある砂漠の村に、粉塵をあげながら巨大な蛤が転がり込んできた。村人たちはいつものように蛤に水を飲ませて、「今回のニュースはなんだい」と尋ねた。蛤が一息つくと、隣村が野盗に襲われている映像が浮き上がった。村人たちは顔を見合わせた。蛤はカチカチと殻を打ち合わせた。 #twnvday

2012-11-14 00:35:13
たくわん @takuwan_takusan

山奥の村で見つけたその玩具屋には、数世代前のゲーム機が顔を連ねていた。懐かしく思う反面、時代遅れを感じた僕は、冷笑を浮かべていた。白髪の店主はその様子を見ていた。「坊主、それで勝負しようじゃないか」 僕が戸惑っていると、負けるのが怖いかい、と大人げなく挑発した。 #twnovel

2012-05-20 10:56:26
たくわん @takuwan_takusan

女が穴に落ちた、と思ったら女は上から降ってきて、また穴に落ちていった。女が再び降ってきたところを友人が受け止めた。どういうわけかこの穴は上空と繋がっているらしかった。「お前試してみろよ」と友人に言われ、僕は穴に飛び込んだ。それ以来、僕は落ち続けている。 #twnovel

2011-11-12 13:37:57

3/1 以下の4作品を応募候補から除外

たくわん @takuwan_takusan

「他人は自分を映す鏡」だというのならば、人と人が相対すれば無限の鏡面反射が起こるはずである。私はあなたのどこに恋をしたのだろうか。私はあなたの中の私に恋をしたのではないだろうか。鏡の中の私はただ沈黙し、こたえを待っている。 #twnovel

2012-02-06 19:52:42
たくわん @takuwan_takusan

満開の桜に蝉がはり付いていた。蝉があまりにもうるさく鳴くものだから、人が寄ってこないことを嘆いた桜は、「蝉さん、どこかへ行ってくれませんか」とお願いした。数日後、再び蝉は現れた。花びらが散って見向きもされなくなった桜に、そっと寄り添い、決して鳴くことはなかった。 #twnvday

2012-04-14 21:02:53
たくわん @takuwan_takusan

鍛えられたお陰で、女性の値札が見えるようになった。値札には毎月の予想出費額が書いてある。この厚化粧のけたたましい女は実に高価だ。向こうの、地味めだが品の良い女子は安価だ、自炊しているのかもしれない。こういう女性には金をかけたくなる、と俺は歩みを進めた。 #twnovel

2011-11-13 21:13:57
たくわん @takuwan_takusan

その痩せた水鳥は鯉に餌をやっていた。鯉が丸々と太った頃、水鳥はいよいよご馳走にあずかろうと思った。しかし運ぶには重くなり過ぎていたため、水鳥は諦めざるを得なかった。水鳥が立った水面で、鯉は何かを言いかけていた。一羽と一匹は、それぞれ異なる理由で悲しげだった。 #twnovel

2011-03-04 13:47:42

2/26 以下の5作品を応募候補から除外

たくわん @takuwan_takusan

「今日のパンツ何色?」と突然聞かれ、私は足を滑らせた。「ご、ごめんね」と謝る彼に事情を尋ねると、彼は私の親友の名前を出して、お前は奥手すぎるからパンツの色確認してこいって怒られて、と弁明した。ふと、彼の視線が私の股間にとまった。彼の顔が私のパンツの色に染まった。 #twnovel

2012-02-25 19:34:01
たくわん @takuwan_takusan

不老の薬と不老不死の薬が同時に世に出た時、不老の薬は飛ぶように売れたが、不老不死の薬はほとんど売れなかった。誰もが死を恐れていた一方、心の片隅では死を憧れていたのだ。在庫の山を目の当たりにして、販売元の社長は自殺を図ったが、どう足掻いても死ぬことはできなかった。 #twnovel

2011-05-05 13:02:33
たくわん @takuwan_takusan

開かない自動扉があった。そこに小柄な女性が現れ、突如タップダンスを始めた。彼女の華麗なステップは道行く人々の足を止めた。いつしか彼女の周りには人だかりができていた。「あくまでお付き合いください!」と彼女は叫んだ。 #twnovel

2012-02-24 17:27:14
たくわん @takuwan_takusan

毎朝、彼女がこの道を通るたびに僕は顔を赤らめ、彼女の足止めをした。彼女と過ごす至福のひと時だった。しかし、その日は様子が違った。「いつもここで引っ掛かるな。道変えようかな」と彼女は言った。僕は青ざめて、彼女はすたすたと歩き出した。彼女がにやりと笑った気がした。 #twnovel

2012-01-24 22:06:07