「エイラ、誕生日プレゼント気に入ってくれた?」微笑むサーニャ、吐き気をこらえるエイラ。サーニャは続ける「苦労したのよ。エイラの生理周期を調べつくして、絶対きょう来るって言う日に男の人にエイラを差し出したのは。私からの贈り物きにいってくれた?」「サ……ニャ……」
2013-02-21 00:19:25「エイラの子供が欲しかったの。でも私じゃエイラと子供は作れないから。私と誰のものとも知れない子供じゃエイラはいやでしょう?だからエイラが産んでふたりで育てればいいわ」「そうじゃ……ないだろ……」「何も間違っていないのよエイラ。私たちはしあわせな家庭を築くんだから。失った家庭を」
2013-02-21 00:21:18背中に「約束の女畜です」と書かれた紙を貼り付けられていることに気づかないまま整備場裏へ誘い込まれたエイラの末路。何人もの男性兵士からの強要だった。あいつらは処分を受けたらしいが、エイラの下腹部で何が起きているのかはしばらく待たなければわからなかった
2013-02-21 00:23:38その間エイラはずっと自分に「妊娠してない、絶対妊娠してない」「何かの間違い、何かの間違い」と言い聞かせていたのだ。そういう知識はまったくなかった。あとから危険日というのを調べて絶望した。それでも無根拠に大丈夫と信じたし、サーニャの同じように言ってくれたから縋りついた。
2013-02-21 00:24:56サーニャの言う「大丈夫」はまったく別の意味だったのだ。ひどい。私はサーニャと仲良しでいたかったし、サーニャがすきだけど、誰とも知れない男の子供をサーニャのために産むなんておかしい。そう言うとサーニャは少し俯いた後にまた明るく笑って「すぐエイラも慣れるから」と。根拠のない大丈夫再び
2013-02-21 00:26:30「下ろす」「駄目」「いやだ!絶対産まない!こんなのおかしい!」半狂乱で泣き叫んでいたエイラが、仲間たちに気づかれる頃には「下ろしたくない」「私の赤ちゃんのことは私が決めるんだ!」と言うようになっていたのには光悦すら覚えた。サーニャはそれを見る度興奮した。エイラが母親になってゆく
2013-02-21 00:28:41エイラは飛行任務から外され、さらに後方の病院にうつった。サーニャはエイラが母親になる日が待ち遠しかった。そうすると自分が父親だろうか?それでもいい。家庭の必要とする金など自分が稼いでみせる。未来を想像するサーニャは幸せだった。エイラの子供が死産だと知るまでは。
2013-02-21 00:31:45「なんで?」面会にいくなりサーニャはそういった。エイラはなんの反応も返さなかった。既に彼女の心はここにはなかった。「なんで?エイラと私の家庭を作り直していけると思ってたのに。なんで?」原因が何なのかは既にどうでもよくなっている。「もう一度……」その言葉にエイラの眼が現実に戻った
2013-02-21 00:34:01「イヤだ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああああ!!!!」絶叫、頭部をベッドのスチールパイプに叩きつける音、赤。看護婦と医師、注射器、ぐったりとするエイラ。私は病室から放り出された。何がいけなかったのだろう。
2013-02-21 00:35:14「サーニャさん」戻るとミーナ中佐に呼び出された。「あなたは何を考えているの」「エイラは私の家族を一緒に探してくれるって」「それとエイラの子供に何の関係が」「エイラの中に私の新しい家族がいるんです!」 激昂するサーニャなどそうそうみれるものではないし、狂ったサーニャも同様だろう。
2013-02-21 00:36:33サーニャは全員から羽交い絞めにされて独房にぶちこまれた。エイラは二度と501に戻れまい。ミーナは溜息を何度も吐きながら、エイラの転属命令書を作成した。「遅い遅いプレゼントね。最初にこうしていれば」彼女はスオムスに戻るだろう
2013-02-21 00:39:10スオムスに戻ったエイラが精神病院の窓から子供が見えるたびに「こども あかちゃん わたしの」と鉄格子ごしの外へ手を伸ばす光景を見に来る501の面子などいなかったし、それはもうニパの仕事だった。「501め」「エイラをこんなにしやがって」やがてエイラを取り戻そうとサーニャが来る。
2013-02-21 00:41:47だがそれは先の話だし、サーニャとニパのどっちが勝つのかなど些細なことだ。問題はサーニャからエイラへの誕生日プレゼントは、エイラへのものじゃなくてサーニャ自身のためのものだった、ということだ。相手を思いやるようで結局自分のことしか考えていなかった。そも、エイラがプレゼントを貰える訳
2013-02-21 00:43:51