ザイバツ・ヤング・チーム #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「で、実際ギルドに来て、どうだよ」「なにもかも新しいよ」ディミヌエンドは答えた。ドモボーイは笑った。「ヘッ!シェルター暮らしと比べりゃあ、何だってそうさ」そして呟いた「実際、ギルドは昔と全然違うんだ、俺にとっても、色々とよ……」「……」ディミヌエンドが手で制した。別れ道だ。44

2013-03-05 12:16:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チチチ……二人の携帯端末にIRCノーティスが灯った。「あン?クアース=サンか」「……」二人は通話をアクティベートした。「ドーモ。首尾は?」「……」彼らは目を見合わせた。「何?……それはつまり……」「……」ドモボーイが目を見開いた。「どうした!」ザリザリザリ、ノイズが被さる。 45

2013-03-05 12:54:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あの野郎。死体が何だって?」「ノイズがひどくて……」「ア?」ドモボーイがディミヌエンドの肩越しに、別れ道一方の角からしめやかに現れたものを見つめた。彼は一瞬、呆気に取られた。ウカツである!「アー……イイ……」その者が……その者の逆さに垂れ下がった頭が呻き、両手を掲げる! 46

2013-03-05 13:22:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドウン!続けて、反対方向の天井ダクトが吹き飛び、同様の歪んだ存在が着地した。なぜ気づかなかった?ドモボーイはニンジャアドレナリンの逆流を感じた。足音や呼吸音があれば、知覚する事は出来たはず……息もせず、動く事も無く、じっとしていた……?「イヤーッ!」ディミヌエンドが跳ねた! 47

2013-03-05 13:38:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイー」歪み者の両腕が瞬時にケジメされ、ディミヌエンドが着地と同時に身体を回転させると、垂れ下がった首も切断されて吹き飛んだ。「イヤーッ!」ドモボーイは残る一体にスリケン投擲!「イイー」頭部をトマトめいて砕く!「何だこりゃ」彼は呆然と呟いた。「アーイー!」ナムサン!新手! 48

2013-03-05 13:47:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「てめェら!」ドモボーイは上からボタボタと落ちてくる人間型の生き物にカラテを構えた。「イヤーッ!」ディミヌエンドが振り向きざまに短剣を投擲!ドモボーイに同時に襲いかかった二体のうち一体の胴体を刃が貫通、ひるませる! 49

2013-03-05 14:18:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ドモボーイがその者の脚部をケリで破壊し、迫るもう一体にチョップを叩き込む!「イイー」肩口を叩き伏せられた歪み者はべしゃりと崩れ、床に潰れた。それをのりこえ、さらに一体!「おい、こいつら」「イヤーッ!」ディミヌエンドのトビゲリがその者を壁に吹き飛ばし、叩きつける!50

2013-03-05 14:20:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつら……何だ?ヤクザ?ゾンビーか?」「クアース=サン!」ディミヌエンドが通信を試みる。「どうだ!」ドモボーイが足元でひくつく歪み者を踏み潰し、ディミヌエンドを見た。「通じない、イヤーッ!」回し蹴りが迫る一体の長い首を刎ね飛ばす!「何のジツだ畜生……ニンジャだと!」 51

2013-03-05 14:23:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モシモシ!駄目だ……でも、データが来てる」ディミヌエンドが端末を確認した。MAPデータの同期が成った!「アイツもどうにかなってやがるに違いねえぞ」ドモボーイが最後の歪み者を念入りにカイシャクし、言った。ディミヌエンドは一瞬沈思黙考し、呟いた。「進もう。宝物殿。もう近い」52

2013-03-05 14:56:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を言ってやがる!合流が先……」抗議しようとしたドモボーイの声は立ち消えた。「ああ。畜生仕方ねえ。クエストが先決だ」ディミヌエンドは無言で頷いた。下級ニンジャのかわりなど、ギルドには幾らでもいる。センチメントを捨てよ。クエストを果たし、アーティファクトを回収して帰還すべし。53

2013-03-05 15:04:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

いまや彼らのニンジャ聴力は、周囲にざわざわと蠢く物音を知覚していた。あの者たちはもはや、息を潜める事をやめたのだ!「こっちへ」ディミヌエンドが先導する。再びの別れ道、壁に悪趣味な油絵有り。モンツキ姿のカネモチの肖像画だ。顔の部分が無残に漂白され、「闇」のカンジが書かれている。54

2013-03-05 15:13:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だこりゃ……闇?」「とにかく、ここからよ」ディミヌエンドが肖像画の額縁に手をかけた。「見取り図には、壁の奥の隠し通路の情報があった」「イヤーッ!」ドモボーイがディミヌエンドの横から額縁を掴み、力を込めた。ガゴン……額縁が15度ほど斜めにずれた。歯車音が響いた。 55

2013-03-05 15:26:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

すると、壁の両脇に垂直の切れ込みが生じた。ディミヌエンドは端末をドモボーイに見せた。「ここから城の中央部に繋がるはず。他の場所からのアクセス方法が無い。ナミコモ・トウイチロウの隠し部屋……」ゴゴゴゴ、目の前の壁が肖像画ごと、シャッターめいて上へスライドしてゆく。奥には階段! 56

2013-03-05 15:48:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「上か」ドモボーイは頭上を見上げた。天井が見えない。ジグザグの階段が闇に呑まれている。おおおお……唸り声めいた不気味な音が、生温かい風とともに吹き降りる。「なあ。さっきの奴ら、何だと思う」ドモボーイが訊いた。 57

2013-03-05 16:01:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わからない」ディミヌエンドは言った。「でも昔は……古事記の時代には、ああいうものを作るジツもあったって……ギルドの書庫の、何かの古文書に書いてあったわ」「さすが勉強熱心な奴は違うな」ドモボーイが混ぜ返したが、その声音に余裕はない。「ニンジャがいやがるぜ。カネモチじゃなく」58

2013-03-05 16:03:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「戦って倒す」ディミヌエンドが新たな短剣をベルトから引き抜く。「勝てるならの話ね」彼女は笑おうとしたが、笑顔は引きつった。ドモボーイは鼻を鳴らした。「とにかく一人が脱出すりゃいい。要は墨壺だ」「うん」その時は、どちらが囮となり、どちらが逃げる?彼らは階段の先へ視線をやった。59

2013-03-05 16:11:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

縦長の空間、壁沿いの階段を早足で上がりながら、ドモボーイはキョート城の転送の間を思い出す。「お前、この前のクエストと今回、どっちがキツい」ドモボーイが訊いた。「ニーズヘグ=サンもいたんだろ……あと、スパルトイの野郎のワザマエはどんなもんなんだ?奴はよ……」おおおお……おおお!60

2013-03-05 16:17:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

唸り声の主が、階段の淵に立っていたドモボーイに、垂直落下しながら襲いかかった。ディミヌエンドの反応は、咄嗟にカラテガードを行おうとしたドモボーイの頭を長い鉤爪がスシめいて切り裂くよりも一瞬早かった。「イヤーッ!」ディミヌエンドはドモボーイの装束を掴み、強く引っ張って助けた! 61

2013-03-05 16:23:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!それは雷撃めいた一瞬の閃光交錯!「グワーッ!?」ドモボーイは階段をすぐ下の折り返し点まで転がり落ちた。一方ディミヌエンドは、振り下ろされた襲撃者の鉤爪を曲刀で跳ね返し、短剣を繰り出していた!「イヤーッ!」「おおおお!」 62

2013-03-05 16:29:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

襲撃者は空中で身体を捻り、ディミヌエンドの短剣にケリを繰り出した。刃が足の裏を貫通した!「おおおおお」襲撃者の吠え声は苦悶ではなく、むしろ笑いだった。ディミヌエンドは短剣から手を離そうとする。遅い!その者は足を貫く短剣を支点に回転し、ディミヌエンドの上半身を捉える!ナムサン!63

2013-03-05 16:35:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ディ、」「上へ!行って!」「おおおお」歪んだニンジャはディミヌエンドもろともに、階段から下へ身を踊らせる!「ディミヌエンド=サン!イヤーッ!」ドモボーイはスリケンを投げた。二者は垂直に闇へ落下!「後で!」ディミヌエンドの声!「畜生ーッ!」ドモボーイは階段を……駆け上がる!64

2013-03-05 16:38:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「畜生!畜生!」ドモボーイは階段を駆け上がる。上へ!上へ!ディミヌエンドを捉えた歪んだニンジャの、邪悪で虚ろな目が網膜に焼きついている。そう、あれは歪み者であり、ニンジャだった。ここは何なのだ?何が起こっている?ザリザリ……そのとき、耳元のIRC通信ノイズが、ブツンと爆ぜた。65

2013-03-05 16:45:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ザイバツ・ヤング・チーム」 #3 終わり。#4 に続く)

2013-03-05 16:46:29