【竹の子書房】玉手箱 →黒蜥蜴← 怪集【タイトル&目次連携企画】

「タイトルと目次が同じなのに、内容はまったく違う本があったらおもしろいよね」 という思いつき。 【黒蜥蜴(くろとかげ)】というタイトル、目次は全て同じ、このお題で、方やBL、方やガチ怪談という2冊セット本を企画。 続きを読む
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須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「よく分からないな。何のために?」拒絶に限りなく近い躊躇い。秋月の返答から感じ取れるのはそういう手応えだった。言葉だけが疑問の形を装っているのは、申し出の裏側にある意図を見透かしているからだ。形ある約束に守られた関係。亮輔がそれを求めることを秋月はおそれている。

2010-09-09 17:27:51
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(3)」です #tknk

2010-09-09 17:28:01
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「厭ならいいんだ。……変なこと頼んでごめん」そう言って亮輔はカフェオレのグラスを手にした。秋月がこんな話に気安く乗ると思っていたわけじゃない。ダメだと言われればさらりと受け流すつもりだった。そのために考えて用意してあった答えだ。それなのに、声の震えが抑えきれない。

2010-09-09 17:28:41
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(4)」です #tknk

2010-09-09 17:28:52
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「別の男に頼むつもりか?」秋月が低く言った。眉間の皺が一層険しくなっている。「誰のことだよ、別の男って」その残酷な問いかけに答えながら、亮輔はこんな店ではなくホテルに呼び出すべきだったのだと思った。そうすればグラスの中身をぶちまけてやることだってできたのに……。

2010-09-09 17:29:08
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(5)」です #tknk

2010-09-09 17:32:24
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「俺以外の誰かだよ。そんな話を持ちかけた馬鹿がいるんじゃないのか」秋月も苛立ちをぶつける先を欲していたのだろう。テーブルの上の拳が、ぎゅっと握り直されたのはそのせいだ。「いるかよ、そんな物好き」言い捨てて、亮輔は席を立った。逃げたかったのは、その拳からではない。

2010-09-09 17:32:53
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(6)」です #tknk

2010-09-09 17:33:25
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 勢いあまって椅子を倒しそうになった。それに気を取られてまごついたりしなければ、秋月に腕を掴まれる前に店を出られたはずだ。視界を滲ませているものの正体を秋月に知られることだってなかったのだ。そのことが悔しい。亮輔を見下ろす秋月の表情には明らかな動揺が浮かんでいた。

2010-09-09 17:33:36
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(7)」です #tknk

2010-09-09 17:33:52
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p そのまま強引に店から引っ張り出された。秋月はタクシーを止めて亮輔を押し込むと続いて自分も乗り込み、行き先を告げる。最寄り駅と交差点の名前だけの簡単な説明。どこへ連れて行かれるのか亮輔には見当もつかなかった。少なくともいつものホテルではない。確かなのはそれだけだ。

2010-09-09 17:34:03
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(8)」です #tknk

2010-09-09 17:34:16
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 見るからに不機嫌そうな秋月の表情をミラー越しに見て臆したのだろう。運転手は何も話しかけてこない。「持ってきてるのか、ピアス」その気まずい沈黙を破って、秋月が言葉を発した。「……うん」小さく頷く。秋月の視線はずっと窓の外に向けられたままで、亮輔を見ようとはしない。

2010-09-09 17:34:27
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー(9)」です #tknk

2010-09-09 17:34:54
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 思いついたのは泣きながら秋月の腕の中で眠りに落ちたあの夜だ。翌日にはもうピアスを買っていた。だが、言い出せなかった。秋月はその後も何度も店を訪れ、そのたびに亮輔を抱いたのに。こんな願掛け、柄でもない、そう自嘲しながら、亮輔は今日までその金色の輝きを見つめていた。

2010-09-09 17:35:12
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 3 ゴールデン・ピアッサー10)」です #tknk

2010-09-09 17:35:30
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p タクシーが停まったのは私鉄駅の駅前から続く商店街の一角だった。一階にコンビニとクリーニング屋。見上げると洗濯物が干してあるベランダもあって、家族構成まで一目瞭然だ。店舗脇の階段に向かう秋月の背中を見て、亮輔はここが秋月の住まいなのだとようやく理解しはじめていた。

2010-09-09 17:38:29
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

ブログ更新しました>>>「竹の子・正統BL『黒蜥蜴(18禁)』(連載)3.ゴールデン・ピアッサー(再録)」 http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10644647229.html

2010-09-10 18:09:57
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 4 手首のある風景(1)」です #tknk

2010-09-16 06:54:35
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 秋月が玄関のドアを開いたとき、亮輔の視界に飛び込んできたのは引越しの真っ最中かと見紛うほどのダンボールの山だった。「奥はもう少しマシだ」秋月はそう言って靴を脱ぎ、室内へ踏み込んだ。積み上げられたダンボールは玄関から続く通路を半ば占領し、リビングへと続いている。

2010-09-16 06:54:48
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 4 手首のある風景(2)」です #tknk

2010-09-16 06:55:01
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玄関とリビングを仕切るガラス格子の扉も、積み上げられたダンボールに阻まれていた。なんとか人が通り抜けられるだけの隙間は残っているが、扉は閉めきることも開ききることもできない中途半端な位置で立ち往生している。別に不衛生というわけではないのに、荒廃の匂いが立ち込めていた。

2010-09-16 06:55:15
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 4 手首のある風景(3)」です #tknk

2010-09-16 06:55:28
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p おそらくリビングと呼ぶべき部屋なのだろうが、そうは見えない。家具と呼べそうなものは壁際のソファだけだった。コーヒーでもこぼしたらしい染みだらけの座面から、使い古した毛布がだらりと床に垂れている。埃っぽい、からっぽの空間。ここで秋月はどれだけの時間を過ごしたのだろう?

2010-09-16 06:55:42
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 正統BL(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 4 手首のある風景(4)」です #tknk

2010-09-16 06:55:54
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