【竹の子書房】玉手箱 →黒蜥蜴← 怪集【タイトル&目次連携企画】
@ts_p リビングにもいくつかのダンボールが投げ出されるように置かれていた。玄関先に積み上げられたものとは違って、ガムテープの封は剥がされている。きちんと畳まれた衣服がしまわれている箱、脱いだものを乱雑に投げ込んだらしい箱。そこにはかろうじて人間らしい生活の気配が感じられた。
2010-09-16 06:56:23@ts_p 手首を掴まれて促されるままにソファの方へ行くと、秋月は亮輔の服を脱がし始めた。そんな面倒な段取りを踏むのは初めてだった。ホテルではいつも、亮輔は勝手に脱いでシャワーを浴びに行く。一緒に入ろうと誘えば秋月は拒まない。亮輔はホテルの狭いバスルームで抱かれるのが好きだった。
2010-09-16 06:57:04@ts_p いつもとは違うことをするつもりなのだ。そしてそれが秋月の好む性の行為なのだろう。亮輔が好んで押し付けてきたやり方に、秋月は“別の男”の匂いを感じていたのかもしれない。服を全部脱がされたとき、亮輔は普段より剥き出しの裸を秋月の目にさらしているような気恥ずかしさを覚えた。
2010-09-16 06:57:27@ts_p 「どこがいいんだ?」唐突に尋ねられて、答えに窮した。「ピアス、つけるんだろ。どこにつけたい? ここか?」そう言うなり、秋月はいきなり亮輔の乳首をつまみ上げた。これまで一度だって乳首を愛撫したことなどなかったのに……。そこが感じる場所だと秋月はいつの間に知ったのだろう。
2010-09-16 06:57:50@ts_p 「どこでもいい。秋月さんの好きなところに……して?」声が甘く震えていた。別に場所などどこでもよかった。亮輔にとって大事なのは秋月の手でピアスホールを穿たれ、あの金色の輝きを埋め込まれることなのだ。秋月が亮輔を抱くときに、もっとも強くピアスの存在感を愉しめる場所に……。
2010-09-16 06:58:20@ts_p 「軽々しくそんなことを言っていいのか? 後悔するぞ」そう言い放つと、秋月は亮輔をソファに押しやり、衣服の入っていたダンボールから古いネクタイを取り出した。俯せになった亮輔を背後から抑えつけてソファの肘掛に手首を縛り上げる。押しあてられた秋月自身が、硬く勃起していた。
2010-09-16 06:58:47@ts_p SM趣味のある男と付き合ったこともある。縛られるのは初めてではなかった。その手際の悪さからすれば、秋月がそういうプレイに馴染んでいないことも分かる。埃っぽい、からっぽの空間。柄の違う二本のネクタイに囚われた自分の手首を見つめて、亮輔は目眩のような絶頂を感じていた。
2010-09-16 06:59:17ブログ更新しました>>>「竹の子・正統BL『黒蜥蜴(18禁)』(連載)4.手首のある風景(再録)」 http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10650349396.html
2010-09-16 19:42:41@ts_p その姿を見下ろして、亮輔の興奮に気づいたのだろう。あるいは秋月自身、もう待てないほどに興奮しているのかもしれない。「先に挿れて欲しいのか?」そう問いかけながら、秋月は答えを待とうとはしなかった。ソファの座面に膝を立てて腰を高く上げるように促して、その場所に舌を這わす。
2010-09-18 05:27:07@ts_p 「あ、ああ……んっ」窄まりの縁を舌先でねっとりと舐め上げられて、亮輔は思わず声を上げた。「ローションなんか用意してないからな。淫乱のおまえでも、乾いたまま咥え込むのは無理だろ」荒い吐息と共に漏らされる声。その舌先から滴る生暖かい唾液に後孔を嬲られて、亮輔は達していた。
2010-09-18 05:27:29@ts_p 「おまえ、いつも前でイッたあと中をびくびく震わせて欲しがるよな。いやらしい体だ。嬉しそうに締め付けやがって……。どこの男にこんなことを仕込まれた? それともそう生まれついたのか?」怒りなのか、それとも興奮しているせいか、言葉だけでなく行為そのものがいつもより荒々しい。
2010-09-18 05:27:57@ts_p 激しく揺さぶられて、手首を縛られた肘掛に何度も顔をぶつけた。その痛みさえ快感を煽る。「このまま壊れちゃいそう……すごく、いい」「こういうやり方が好きか。縛られて犯されたいのか? 感じるところ全部にピアスをつけて、おもちゃにされたいのか」秋月の言葉はどこか苦しげだった。
2010-09-18 05:28:28@ts_p こうすることをずっと望んでいたのだ。そう言われたような気がした。「いいよ、それでも……秋月さんなら、いい。毎日、可愛がって? 俺の体で愉しんで……俺が気を失うまで、ガツガツ掘っ……」言い終えないうちに髪を掴まれる。「くそっ」忌々しげにうめいて、秋月は鈍く体を震わせた。
2010-09-18 05:28:52