2010/09/03 ツイッター小説 お気に入りセレクト　

ジュン @jun50r

#twnovel ふと思い出した。昔、隠れん坊していて見つけられなかった子の事を。気になって探してみると、子供の頭蓋骨が遊具の影に転がっていた。「やっと見つけてくれたね」と言っている気がした。僕は「ごめんね。探してる途中で川に落ちちゃったから。次は君が鬼だよ。僕も、見つけてね」

ひなたま @hinata_ma01

#twnovel １９８８年・小三の課題作文『未来の予想』　二十一世紀にはポケットに入る小さな電話をみんなもってます。テレビつきです。パソコンで世界中のことが調べられます。ロボットが人気でアイドルにもなります。とても楽しいです。それでも人はまだ自らの豊かさに気づかないであろう。

りつか @ri2ka

春、人々の入れ替わる通勤ラッシュで眼鏡が歪みそうなほど押しつぶされる彼女を偶然助けた。夏、彼女の眼鏡がコンタクトになっても見つけられるようになっていた。秋、携帯電話を見ながら微笑む横顔を見つめていた。冬、左薬指に指輪をした彼女は次の春その電車からいなくなった。 #twnovel

layback @laybacks

街にゾンビが発生した時は大騒ぎになったが街の者全員がゾンビウイルスに感染してしまうと呆気無く事態は落ち着いた。街全体が高い塀で囲まれゾンビ特区として統治される事になったのだ。僕たち子供のゾンビも普通に学校に通っている。給食だって出る。塀の外から運んでくる死体だ。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

秋の初めのクワガタさんは、だいぶ力も衰えていて、戦う気持ちもあんまり無さそうだった。つまみあげて肩に乗せてみても脚をすくませて動こうとせず、武器は固まっている。それでも、わたしには、「耳飾り」という遊びはできないのである。敬意と畏れを、きみにいだいているからね。 #twnovel

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」発売中 @Takuya11

#twnovel ビルから飛び降りようとする男を見つけた。死のうとしている。助けるべきか。自分の死ぐらい自由にさせるべきでは? 彼は会社をリストラされて妻からも離婚を迫られている。人生に絶望してもおかしくない。いや、それでも助けよう。まだ彼には寿命がある。死神は彼の体をおさえた。

浅葉積木 @tsumiki_a

吸血鬼の牙が乙女の柔肌を突き破り血を流させる。乙女は牙の陵辱を耐える。吸血の途中で振り払うと、あとで傷口が痒くなるから。血を吸い終えた牙は力尽きて根本から抜けた。牙を失った吸血鬼はまもなく死んで灰になる。その吸血鬼が生きた証しは、乙女の肌の中に残った白い牙のみ。 #twnovel

hamanaga kazumasa @hamanaga_k

会場でテーブルとイスを運ぶ仕事だった。「女の子は力仕事はしなくていいよ」と責任者が言った。悪いなあ、でも楽なバイトで良かった、と思っていたら、気が付くとテーブルとイスだらけで、会場から出られなくなっていた。「成功させるため、君を生贄とする」と責任者は言った。 #twnovel

ONEP/お姉ちゃんP@misskey.io @mini_humbucker

暑い中冷房もつけず部屋にいたら溶けた。姉が「なに溶けてんの」とやってきたので、「なんでもねえ」と言ったらガリガリ君突っ込まれた。「やめろよ冷たい。あと混ざる」「溶けた弟戻すのは姉の義務でしょ」と言いながら早くも混ざり始めたガリガリ君と俺の中でくりくりと棒を回す。 #twnovel

yosirabi @yosirabi

#twnovel 町を散歩中、一件の古本屋を見つけた。売り物の整理だろうか、店先に二、三台ワゴンを出して本を並べている。つい、「ためになる本」という本を買った。ページをめくりながら歩いていると、手が滑って地面に落としてしまった。拾い上げると泥がついて「だめになる本」になっていた。

アネ @ane915

「行ってきます」そうやって旦那を見送り続けて随分と経った。その生活も旦那の定年退職によって今日が最後。平凡だけど健康で会社勤めをしてくれた事に感謝している。でもね、私が時々友達と出かけても怒らないでね。まずは無趣味の旦那の趣味が「妻」にならないようにしなくては。 #twnovel

にゃおっく @_nyaok

#twnovel 不動産屋は戸惑いを隠せない。「もう新しい物件をお探しで？」「前の２ＬＤＫでは苦しいみたいで」。客のペットのヤドカリは、最初こそ貝だったが成長し続け、次第にマグカップ、ドラム缶という具合に引越してきた。「ヤドなしは落ち着かないみたいで…今、表に待たせてるんです」

140字物語 @shortshortshot

最近私の彼氏を夢中にさせているヤツがいる。彼は「友達だよ」と弁解するけど信じられない。だって私より一緒にいる時間が長いし、何よりその時の彼の表情の輝いていること！もう我慢の限界。私は彼の部屋に入り込みヤツを切り刻んだ。後はサッカー部にある方もやっておかなくちゃ。 #twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 実家に帰ると、母が離婚届を書いていた。父は定年退職したばかり。驚いて問いただすと、母は笑顔で答えた。「新婚旅行はハワイよ！」…何をいってるの？「ほっときなよ」呆れ顔の妹。「独身を半年楽しんで、また結婚するって」。黙って新聞を読む父。耳が赤いのは気のせいじゃない。

҉A҉ a.k.a ҉A҉ @4x1h170fh41vlvl

暑い。眠さで目が開かないまま、クーラーのリモコンを手探りで探していると、なにやらひんやりした物が手に触れた。ちょうど良いやと抱きついて再び夢の世界へ。目が覚めると横には綺麗な女の人が寝ていた。しかし息もしてなければ足もない。だからひんやりしてたのか……。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

自分ちの飼い猫とおもっていた猫が実は家を二股かけていて、ある日ちゃっかりキレイな首輪をもらい、完全に他所の家の猫になっているところを小学校の帰り道で見てしまったKは、貧しさに負けたんじゃない世間に負けたのだと、深く心に刻んだ。 #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

ある男がＢＯＴを開発していたが、事情によりそれをツイッターで試用運転中に完成を断念した。しかしＢＯＴは彼を待ち続けた。自分を完成させてくれると信じて。そのＢＯＴは今でも、毎朝決まった時間にツイートしている。｢おはようございます。｣ #twnovel

重藤 貴志［Signature］ @Siqoqtaq

鱗雲の下、アスファルトに音もなく揺れる陽炎。そんな真夏の余韻を、海からの潮風が冷やしていく。二本目の橋を並んで渡る頃、夢のような一日が終わる。終電間際、僕たちは別れの挨拶を交わす。向かい合わせのホーム、どこかで上がる花火の音。少しだけ早く、君が電車に乗り込んだ。 #twnovel

nohironogi on earth @nohironogi

#twnovel 夢占いと弟子が、政治家に招かれた。「鏡を見たら、首に木目があった。そんな夢なんだが……」「吉兆ですな。漢字を並べてごらんなさいまし」夢占いと弟子は多額の報酬を受け取り、屋敷を出た。「先生、さっきの……」「見抜いたか。木目が見えるのは切られた木。早晩、失脚するな」

藍　真史 @shin1960

#twnovel 夏休みに転向する生徒は一学期の終わりに紹介され、みんなにさよならを言う。でも中には二学期が始まってから事後報告として知らされることもある。僕をいじめていた奴らが突然標的を失ってうろたえている様を想像するのは楽しかった。僕のいない、僕の死んでしまったような世界。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 暑さをしのぐ方法を多少は心得ているが、今年は酷い。集まってきた仲間たちもぐったりしている。それでも皆プライドを武器に立ち上がる。日に日に早くなる夕暮れ、長くなる夜。しっかり練習を重ね、秋が深まる頃には人間たちに我々の素晴らしい演奏を聞かせてやろうじゃないか。