毎年10月末なら『ツイノベ祭』 2013/10/31お題「ハロウィン」
10月1日~15日
はろうぃん?挨拶された瞬間に勝利宣言もされるのか。ふざけているのか否かこちらを見ずの返答はなるほど日本ではまだ馴染みない行事なのだなと思わざるを得なかった。仮装やお菓子、ランタンの話をすると輝いた目が振り向いた。あいわかった夕餉は南瓜の煮付けだな?そうですね。 #twnovel
2013-10-10 01:51:30かぼちゃのピューレを生地にまぜて、カップケーキを焼いてみた。ほんのり甘い香りがする、黄色いケーキのできあがり。アイシングでお化粧して、チョコシロップで何を書こう、何を描こう。メッセージ?ランタンの顔?それともとっておきの、こわいおはなし?迷っちゃうね。 #twnovel
2013-10-10 16:45:59おいしいお菓子はいらないから、あなたをちょうだい。南瓜のお化けを装った恋人が、忙しさで会えない寂しさを吐き出す。抱きしめるしか出来ない腕に、力をこめた。あげるよ、僕の時間を全部。いいの、この瞬間だけで。もうじゅうぶん。恋人は腕の中ですっと消えた。 #twnovel
2013-10-10 17:51:12「ハロウィン、ハロウィン」「副会長が死んだ目で呟いて」「某音楽の地平線の歌がトラウマ状態でな。明るい曲のようで深読みしたら暗いかも知れないし、あれは解釈は貴方次第がモットーなのだが」「そうなんだけどね……」「引きずられるところはありますね」 #twnvday #twnovel
2013-10-11 00:30:27パンプキンから手足の生えたようなやつ、とは聞き及んでいた。問題はパンプキンがカボチャではなかったことだ。いわく飛べない鳥のよう。いわく硬そうな石のよう。おおよそ左手では描けそうにない複雑な毛並みの丸みの大波は果たして日本海の真冬の益荒男の燃え盛る吐息を思わせた #twnovel
2013-10-12 01:31:3910月16日~30日
#twnovel 中身をくり抜かれたかぼちゃが転がっている。床には果肉が汚く散らばっている。その上を何十もの靴が行く。踏み潰され砕け散ったそれは土と泥に混ざり食物としては既に手遅れだった。靴は中身の無いかぼちゃをひとつだけ持って立ち去る。だから自殺者の靴にはかぼちゃがついている。
2013-10-17 18:42:03#twnovel 僕の仕事はこのかぼちゃ。かぼちゃにこんな風に穴を開けて中身を抉り出すでしょ。そんでこうして頭に被れるようにする。目の位置にも穴を開けて完成。後はこれを被せに行くよ。3日前に樹海に入ってまだ出てこない人がいるんだ。縄は用意しておいたからもうぶら下がってるでしょ。
2013-10-17 18:51:26#twnovel 何を言っているのやら。これはオブジェ。それ以上でも以下でもない。クリスマスの時期になると家に侵入しようとしている赤い服を着た中年男性の人形を飾る家があるだろ。それと同じだ。ハロウィンの時期には庭の木に人形を、首を吊って飾るもんだ。もちろん頭にかぼちゃを被せてな。
2013-10-17 19:07:45ハロウィン #twnovel 「仮面をつけたデモ隊はこちらに向かってきています」 「何だあれは!」 「ハロウィンですよ」 「子供のお祭りだろ、それは」 「元々は、悪霊を追い出す行事でもあったそうです。飢えた民衆は、大統領――あなたに要求しているのです。トリック・オア・トリートと」
2013-10-19 15:54:28「カボチャをくり抜いてーコスプレの準備してーあとはお前からお菓子を奪う!」「奪う前にせめてトリックオアトリートと言え」ハロウィン当日は激辛系のお菓子ばかりを用意しよう。お菓子=甘いとは限らないからな。 #twnovel
2013-10-23 01:56:47死者が蘇り我が家を訪ねてくる。収穫祭。悪霊や魔女も祭に集まってくる。妖怪の扮装をすれば、黄泉の物の怪どもは紛れるだろう。カボチャの提灯に映えるように、あつらえた服を靴を帽子を自慢する。足下には囃し立てる打音。気分は更に昂る。コンクリートとアスファルトは破れない。 #twnovel
2013-10-25 23:25:13#twnovel 初めてタルトを食べたのは16歳の時だった。学校帰りに寄ったファミレスだった。門限があったものの自由にできる時間を持てる年齢になったからだった。記憶に残るタルトはしっとりとして美味しいカボチャのタルトだった。社会人になった今も、そのカボチャのタルトを食べに行く。
2013-10-26 20:06:13我が家に帰ってくる死者を迎える。埋められた墓地から蘇り、収穫祭を共に祝う。生者たちは、死者たちが醜い姿を気にしないよう物の怪たちに紛れるようにと、妖怪の扮装をする。溢れかえる魑魅魍魎。帰っておいで。物の怪たちと仮装パーティー。墓石より重いアスファルトは破れない。 #twnovel
2013-10-27 01:05:04カボチャの被り物をして、彼が部屋の前に来た。合鍵を使わずにわざわざドアホンを鳴らす。そっと玄関の中から様子を伺うと、崩れたカボチャ顏。驚かせる気だよね。あれ? ほんのささいな違和感。本当に、あなたなの? “ピンポーン””ピンポーピンポーン””ピンピピンポーン” #twnovel
2013-10-27 02:06:38神々が出雲へ出掛ける「神無月」も月末ともなれば、Uターンラッシュで天の道は混雑を極める。住み慣れた社へ帰ると口々に「やはり(お家が)いい」と漏らす。やがて時代は下り、神々が妖怪へと零落すると、ねぼけたひとがききまちがえたのさ。後の「ハロウィーン」の始まりである。 #twnovel
2013-10-27 07:03:36トリックオアトリートって言ったのに「じゃトリックどうぞ」とすまし顔。想定外。「お菓子を期待していたのに…しらけんだけど」と頬を膨らませていると、では「僕からトリック」と花束を取り出した。バラの花びらには金の指輪。トリックアンドトリート。えぇただの惚です。#twnovel
2013-10-27 15:10:19薄暗い部屋の中に蝋燭の光だけが浮いている。沈黙が、帰宅した私の分だけ揺れて、沈む。「おかえりなさい、あなた♪」闇の中から妻の声。姿は見えない。光が揺れ影が踊る。「どうした? 何があった?」問う声に応える笑い声。背筋を舐める冷気。「悪戯で、お・も・て・な・し♥︎」 #twnovel
2013-10-27 17:37:20開発に失敗した廃団地は住人が大勢いる。ピーマンの幽霊は、自分を嫌った都会帰りの孫を思い出していた。ハロウィンがしたいと騒いでたなあ。じゃあ今夜やろうよと誰かが言い出したので、ピーマンはカボチャに、イチゴはカカシに、稲刈り機はカエルになってかつての村を徘徊している。#twnovel
2013-10-27 17:56:24「イタイ」と呻く声に少女は目を覚ます。窓の外にはジャックオーランタンがひとつ。彼は「ナカミガナイ」と泣いていた。「中身はかぼちゃパイにして食べたのよ」少女の言葉にカボチャはいった。「ソウカ、ナラ、キミヲタベヨウ」カボチャは言った。「ウップ、ナカミガイッパイ」 #twnovel
2013-10-27 21:23:11街のあちこちがカボチャ色をしている。ハロウィンが定着し始めて何年経ったのか。元々妖怪とかが好きな民族だからか、クリスマスと違って恋愛色がないからなのか、ひと月近く盛り上がる。「凄い、ジャックオーランタンだ!」だからってこの格好でうろついても驚かないとは、恐ろしい。#twnovel
2013-10-27 22:47:51ガラクタの山を小さな影が漁っている。黒色のマントのようなそれは穴だらけで、もう意味を成していない。影は動きを止めて顔を上げた。その顔はカボチャでできていた。小さなオバケは建物を出る。外はひび割れたアスファルトと荒廃したビルが並ぶ。お菓子を求めてオバケは行く。 #twnovel
2013-10-27 23:59:37#twnovel 客なんかカボチャだと思えとどれだけ言っても、あのへっぽこ役者は怖がったまま。だったら実際にカボチャだらけにしようじゃないかと、リハーサルを見に来た人にくりぬいたカボチャをかぶってもらった。「うわあああ!あそこのカボチャが、わ、わ、笑ったああ!」……ダメだこりゃ。
2013-10-28 15:43:40#twnovel 大人はいい顔しないけど、僕らはこの日が楽しみだ。トリック・オア・トリート!「みんなの仮装、すごいわ。魔女に吸血鬼、狼男と… ひとつ目小僧? ほんとリアル、誰だっけ君?」ヒトに混じって慌てずにっこり、お菓子をもらう。十月末日、今や日本妖怪のこども百鬼夜行。
2013-10-28 22:36:31