作家・鳥山仁(toriyamazine)氏の【試論・長編娯楽小説の連続性】

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鳥山仁 @toriyamazine

(1)この辺からようやく本筋の一部に入るのかな? ただ、まだ完全に検証していないので不備は多々あるかも。

2013-03-14 05:31:54
鳥山仁 @toriyamazine

(2) 【試論・長編娯楽小説の連続性】  長編娯楽小説を書く際に最も注意すべき点の一つに、シークエンスの連鎖、もしくは連続性が挙げられる。

2013-03-14 05:32:26
鳥山仁 @toriyamazine

(3) つまり、ある場面Aで起こった出来事が、次の場面Bの引き金になる、あるいは次の場面Bを暗示していないと、物語が仕切り直されてしまうため、読者にとって各シークエンスがバラバラにしか思えず、物語が空中分解を起こす。

2013-03-14 05:32:36
鳥山仁 @toriyamazine

(4)  これも具体的に説明していこう。  たとえば、「朝、学校に遅刻しそうになった主人公が、パンをくわえて家を飛び出したら、女の子とぶつかって転倒した」というありきたりなシークエンス(1)で物語を始めたとしよう。

2013-03-14 05:33:07
鳥山仁 @toriyamazine

(5)  もしも、このシークエンス(1)の続きが、普通に学校へ行って平凡な日常生活を送ってしまったら、シークエンスの連鎖は起こらず、従って読者は仕切り直しが起こったと判断して話の続きを読むだろう。

2013-03-14 05:33:33
鳥山仁 @toriyamazine

(6)  これでも話は書けるし、作品中の時間経過も矛盾が無いかも知れないが、面白いかと言われたら「シークエンス(2)は面白いとは言い難い」と答えるしかない。

2013-03-14 05:34:34
鳥山仁 @toriyamazine

(7) つまり、シークエンス(1)で起こった出来事が、次のシークエンス(2)の不条理を引き起こすトリガーになっていないと、平均的な読者は「続きを読みたい」とは思わないのだ。

2013-03-14 05:34:51
鳥山仁 @toriyamazine

(8)  それでは、どうやったらシークエンス(1)と連鎖したシークエンス(2)が書けるのか? ここでは、シークエンス(1)で提示された情報を羅列してみよう。 A.主人公は遅刻しそうである。 B.主人公は登校の途中で女の子とぶつかった。

2013-03-14 05:35:19
鳥山仁 @toriyamazine

(9)  前述したシークエンス(2)に連続性が感じられないのは、シークエンス(1)で提示された情報が、シークエンス(2)を引き起こすためのトリガーとして利用されていないからだ。

2013-03-14 05:35:42
鳥山仁 @toriyamazine

(10)  遅刻しそうだったことも女の子とぶつかったことも無関係に話が進んでしまったら、確かにそれは読者にとって予想外の展開になるのだが、同時に前のシークエンスで提示された情報を使わないことは、話の振り出しに戻った、あるいは個別の話が展開している=空中分解したことを意味している。

2013-03-14 05:36:47
鳥山仁 @toriyamazine

(11)  そこで、次は前述した(A)と(B)をトリガーにして、シークエンス(2)を作ってみよう。  シークエンス(1)で主人公は遅刻しそうだ。にもかかわらず、女の子とぶつかってしまった。そうなると、

2013-03-14 05:37:24
鳥山仁 @toriyamazine

(12) C.女の子とぶつかったために時間を大幅にロスして遅刻した。 D.女の子とぶつかったために時間を大幅にロスしたので、何らかの非常手段を用いて(例えば他人の敷地を通過する)遅刻せずに教室に辿り着いた。 E.女の子とぶつかったことで、学校に行けなくなるような事情が発生した。

2013-03-14 05:38:27
鳥山仁 @toriyamazine

(13)  という3つの流れを思いつけるはずだ。これに、 F.女の子も同じ学校の生徒だったために、一緒に行動した。 G.女の子は別の学校の生徒だった、あるいは同じ学校に通う生徒だったが何らかの事情で個別に行動することになり、主人公は単独で行動した。

2013-03-14 05:39:15
鳥山仁 @toriyamazine

(14)  という2つの流れも思いつけるはずなので、これらを組み合わせて、 C-F C-G D-F D-G E-F E-G  の6パターンは最低でも即座に思いつくはずである。  そして、この6パターンから1つを選択し、次のシークエンスを組み立てれば、各シークエンスに連続性が生じる

2013-03-14 05:40:09
鳥山仁 @toriyamazine

(15)  これも、実作で検証してみよう。  たとえば、前述した6パターンの中からC-Fを選んで次のシークエンスを考えたとする。

2013-03-14 05:40:45
鳥山仁 @toriyamazine

(16) (作例)  女の子とぶつかった主人公は、そのせいで時間をロスして遅刻が確定する。しかし、ぶつかった女の子も同じ学校の生徒で、しかも軽く脚を捻って捻挫してしまった(ここまでがC-Fにあたる)。

2013-03-14 05:41:23
鳥山仁 @toriyamazine

(17)  そこで、責任を感じた主人公は女の子を保健室までエスコートすることを申し出て、彼女に受け入れられる。  二人はゆっくり通学路を歩いて学校に到着し、保健室に向かう。しかし、保健室に入った段階で養護教諭に「隠れろ!」と注意される。

2013-03-14 05:42:15
鳥山仁 @toriyamazine

(18)  実は二人が遅刻している間に、テロリストとおぼしき一団が学校に潜入。二人は偶然占拠をまぬがれた保健室に顔を出したのだった……。 (以上、作例終了)  という感じで「朝、学校に遅刻しそうになった主人公が、パンをくわえて家を飛び出したら、女の子とぶつかって転倒した」……

2013-03-14 05:43:09
鳥山仁 @toriyamazine

(19)  ……という話を、連続性を持たせたままサスペンス&アクション作品に展開することは可能である。  恐らく、これを読んでいる大多数の人は「何だ、こんな話の作り方なんて簡単じゃないか」と思ったはずである。その通り。

2013-03-14 05:43:59
鳥山仁 @toriyamazine

(20)  展開の巧拙はあるだろうが、プロとして活躍している作家、あるいはかつで活動していたことのある作家であれば、この程度の連続性を作り出すことは簡単なはずだ。  逆に言うと、こんな簡単なこともできない作家志望者がデビューすることは極めて難しいわけだ。

2013-03-14 05:44:52
鳥山仁 @toriyamazine

(21)  つまり、小説を書く際に各シークエンスの連続性が確保できることは、プロとして最低限の技術なのだ。この技術の重要性に比べれば、文章力などは取るに足らないおまけのようなものである。

2013-03-14 05:45:17
鳥山仁 @toriyamazine

(22)  当然だが、話作りが下手な作家志望者は、この連続性の確保が下手だ。その原因に関しては色々と言われているが、私が見た範囲では、そもそも連続性を確保する事に意識を向けていないことそのものが原因のように思われる。

2013-03-14 05:46:04
鳥山仁 @toriyamazine

(23) つまり、最初に粗筋を思い付き、次に各シークエンスを思いついたら、連続性を確保せずにそのままで書いてしまったり、あるいはテーマなどの一貫性(これは連続性とは違う)に拘るくせに、やはり各シークエンスについて考慮せずに話を書いてしまう、などのパターンが非常に多い。

2013-03-14 05:46:35
鳥山仁 @toriyamazine

(24) (以下は例外則、及びに変則技術に関する記述を省略)

2013-03-14 05:47:15