【4】おとでおしごと! ~音響監督のお仕事とは その4~

数多くのアニメで音響監督を担当しご活躍なさっている、えびなやすのり氏(@yasunorisan)による音響監督のお仕事解説。 第四回は現場作業編。 初めての収録からダビング作業まで。 第一回:http://togetter.com/li/466607 続きを読む
7
えびなやすのり @yasunoriebina

ヨルムンガンドの銃器の音はリアルを目指したいと効果さんにお願いしました。リアルな音って、つくった音よりも地味なんですよ。銃の音バキューンじゃなくてパンなんです。ヨルムンガンドはそのリアルさが上手くいったかと思います。

2013-03-19 10:17:15
えびなやすのり @yasunoriebina

効果打ち合わせが終われば、その日の作業は終了。長い期間かけて準備してきた作品がゆっくりと動きだした感じです。 ワンクール物だとこの後あっという間に過ぎていきます。準備期間がゆっくりなだけに、消化するスピードは早く感じて オンエアが始まると更にスピードアップします。

2013-03-19 10:47:07
えびなやすのり @yasunoriebina

収録が終わったら、ダビングの準備に入ります。2話以降のキャスティング等やる事は山積みですが、ここは1話のダビングに向けての話をします。音監としての仕事はやはり選曲でしょうか。人によっては自分で選曲、編集までやって現場に持ち込む人もいますが、僕の場合は選曲までやります。

2013-03-19 14:21:21
えびなやすのり @yasunoriebina

音監の仕事で作品にカラーがでるのが、音楽ではないかと思います。音楽発注時の曲の方向性。作品における音楽の付け方。10人いれば10種類の作品が出来上がる位、人によって変わります。音楽の付け方で人を感動させたくて音響監督になったと言っても過言ではありません。

2013-03-19 15:12:58
えびなやすのり @yasunoriebina

ですから音楽の付け方は非常に悩みます。役者の芝居は演出を上回る演技を見せる事があります。音楽はもう出来上がっております。悲しいシーンに付けたら、更に悲しく鳴り響いてくれるわけでは無いのです。悲しさを引き出す曲をつけないと人は涙してくれないのです。

2013-03-19 15:17:44
えびなやすのり @yasunoriebina

アニメの音楽の付け方で1番楽な方法は、全編音楽をつける事です。登場人物にその人のテーマをながし、決まった場所には場所のテーマを使う。映像に隙が出来ないので特に考えずに見る事ができます。その代わり芝居の邪魔をしないようなさりげない曲を多用するので音楽の印象はのこりません。

2013-03-19 15:31:26
えびなやすのり @yasunoriebina

演出としての音楽の使い方は、見ている人にさり気なく状況を分からせ、ハラハラを後押しして、こぼれそうになった涙を音楽で号泣させる。そう考えて貰えると分かりやすいかもしれません。そしてそのセオリーを破って見てる者を裏切る。音楽の付け方は無限大 だから大変だけど楽しいです。

2013-03-19 15:42:04
えびなやすのり @yasunoriebina

音楽の付け方は様々です。感情に沿った音楽の付け方。感情を代弁させる音楽の付け方。台詞では分からないけどこの人怒ってるんだ…みたいな。長い説明台詞で中だるみしない様にループ系の曲を使ったり、緊張を途切れさせない様に、重厚な曲を流し続けたりなどをいろいろ組み合わせて考えます。

2013-03-19 18:20:57
えびなやすのり @yasunoriebina

音楽は毒にも薬にもなります。全部の感情につけるとなんだかせわしなくなって作品の雰囲気を壊してしまうこともあります。上手く使えば、イントロのピアノの一音だけでも涙を誘うことができます。逆に音楽を無くす事で、緊張感を煽るやり方もあります。舞台での音楽の使い方は参考になります。

2013-03-19 18:53:07
えびなやすのり @yasunoriebina

どの曲を映像のどのシーンからどのシーンまで流すかを書いた一覧表を音楽ラインと言います。その音楽ラインを音響制作に送ったら、ダビング前の音響監督の仕事は終了。あとはダビング当日を待ちます。それではちょっと音響スタッフがダビング前にどんな作業をしてるか見てみましょう。

2013-03-19 19:17:48
えびなやすのり @yasunoriebina

と言ってもスタジオで作業の受け持ちはバラバラ。なので、自分がミキサーの頃どうやってたかを話します。収録が終わったら、録音助手がセリフの整理をします。NGが数テイクあったりするので、それを全てOKテイクにします。他に台本をめくるノイズや移動の時や座る時に出るノイズをカットします。

2013-03-19 23:33:38
えびなやすのり @yasunoriebina

その後映像の口に台詞を合わせて行くセリフ合わせという作業に入ります。アニメの場合は役者が映像に合わせて台詞を充てて行くのでアテレコと呼ばれます。映像が動くのを見てから喋るので若干遅れがでます。その遅れを修正していきます。吹き替えはヘッドホンから原音がながれてその音を聞いてから→

2013-03-19 23:38:52
えびなやすのり @yasunoriebina

喋るので、同じく遅れが生じます。同じく台詞合わせでその役者が喋っているように合わせて行きます。実際はもっと複雑な作業をしていて自分は30分アニメだと4時間。90分の外画だと8時間ほどかかっていました。その他ロボットの声や電話の音 エイリアンの声など自分なりに考えて作ります。

2013-03-19 23:44:55
えびなやすのり @yasunoriebina

俗にいう加工音ですが、アニメの場合は参考がないので自分達でこんな音かな?と考えて作りますが外画の場合は元音があるので、その音に近くなる感じで作ります。 一方、音響監督から音楽ラインが届くとミキサーはその指示に従い、指定の曲を 指定の位置に収まるように曲を編集します。

2013-03-19 23:49:58
えびなやすのり @yasunoriebina

曲の編集とは元々100秒ある曲を40秒のシーンに収まるよう短くしたり、2分ほどシーンだと逆にのばしたりして編集をします。上手くそのシーンに編集して収めるのはかなり大変です。無理やり編集すると音楽的におかしく聞こえるので、ある程度の音楽知識を持っていると役に立ちます。

2013-03-20 00:00:51
えびなやすのり @yasunoriebina

音楽編集が慣れてくると、シーン変わりに転調部分を持ってきて映像に変化を持たせたり、感動するタイミングで、曲の盛り上がりを持ってきたりできるようになります。音楽編集と映像のシンクロ率が高くなると、ただ映像に音楽を充てただけでは無く、物語の盛り上がり方が何倍にも大きくなるのです。

2013-03-20 00:08:57
えびなやすのり @yasunoriebina

スタジオでの作業はそんな感じです。台詞合わせはまた写真でわかりやすく説明します。音の加工は何と無くEQをいじってればできるものでもないです。よく街の商店街でスピーカーから流れる音や駅のホームで聞こえるアナウンスなどを聞いて、それを参考に作ってました。

2013-03-20 00:14:55
えびなやすのり @yasunoriebina

そして効果チームは映像に合わせて、自分の仕事場で生音(足音や服がこすれた時に出る衣擦れ音)を録ったり 自分達で作った効果音や録りにいった環境音をつけていきます。アニメでは偶然入る音は何一つありません。なのですべての音は効果さんが付けてきます。またアニメ的表現の効果音も付けてきます

2013-03-20 00:25:53
えびなやすのり @yasunoriebina

それぞれのスタッフが自分達の作業をこなし、台詞素材、音楽素材、効果素材が纏まり出していよいよダビング作業へと突入いたします。

2013-03-20 00:32:01
えびなやすのり @yasunoriebina

さていよいよダビング突入、プロデューサーとアニメプロデューサー、監督と制作、各話演出などが絵のチームから。音響監督、ミキサー、効果マン、録音助手、音響制作が音のチームとして集まります。まずはテスト。何しろ初めての音出しなので、みんな期待と緊張でイッパイです。

2013-03-20 09:43:30
えびなやすのり @yasunoriebina

皆さんBGMは貰って聞いてますが、どのように使われるかは知りません。同じく効果音もどんな音が付くか聞いた事がありません。例えば、ナルトの変化の術や影分身。心転身の術だって原作では見てますが、誰も聞いたことない音なのです。全て。本当に全て効果さんが考えて作っている音なのです。

2013-03-20 09:48:45
えびなやすのり @yasunoriebina

とにかくテストに突入。一度聞きます。この段階はそれぞれの音が皆、自分の解釈のもと音を作ってきた状態。収録の最初の時と感じは似てますね。音がぶつかり合ったりして聞こえない台詞があったり、音楽が効果音と似ちゃったりして打ち消し合う箇所もあります。テストを見て監督達とはなしあいます。

2013-03-20 09:54:43
えびなやすのり @yasunoriebina

ここで色々な意見が出ます。音楽の使い方、音楽を出すタイミング、効果音の種類の是非、ロボットが出るならその声の加工の仕方等々、特に話し合いがされるのが、どの曲をどういう風に使うのかと、演出的に使われる効果音俗にいうタッチ音の付け所です。

2013-03-20 10:02:48
えびなやすのり @yasunoriebina

日本のアニメの特徴として、コミカルシーンに集中線の多用や、わざと背景なくし、単一色にしたり、現実ではあり得ないカメラワークを使ってテンポを出す手法があります。実写で使うとアニメ的手法と言われるのでやはりアニメが元祖なのでしょう。そこには必ずタッチと言われる効果音が付けられてます。

2013-03-20 10:17:16
えびなやすのり @yasunoriebina

そのタッチ音は効果会社毎に、または効果マン毎に特徴があります。長年仕事をしてると、そのタッチ音でどの会社が又は誰が効果を担当しているかわかります。皆さん自分で作ったり、会社代々に伝わるものを使っていますが、その音を多用する程コミカル度が強くなり、使わない程シリアス度が強くなります

2013-03-20 10:23:15