【宮高bot】フォロワーさん5000人企画

宮高bot(@mytk_bot)のフォロワーさん5000人企画まとめ
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宮高bot @mytk_bot

「あ、…オレ、がんばった?」「…うん、がんばったよ、えらいな」俺の意図を汲み取ったらしい少年が俺の頭をそっと撫でる。さっきより手つきが優しく、柔らかくて、俺は少年の手にすり寄った。少年は俺の行動にちょっと驚いたみたいだったけれど、そっと笑ってくれた。

2013-03-29 14:30:08
宮高bot @mytk_bot

「手、繋ぐか」俺に向かって真っすぐ手を伸ばしてくる少年がまぶしくて、俺は目を細める。ゆっくり少年の手に自分の手を伸ばすと、少年が焦れたように俺の手を引っ張った。「ほら、もうこけんなよ」

2013-03-29 14:45:06
宮高bot @mytk_bot

少年がデパートに向かう道は人が多くて、また頭がぐるぐるするかと思ったけれどそんなことはなくて。不思議に思っていると、俺の視界が少年を中心として狭まっていることに気付く。俺の視線が少年に集中していることで、視界が狭くなっている。俺はこの時、ホークアイの制御の仕方を知った。

2013-03-29 15:00:08
宮高bot @mytk_bot

デパートに着いて件のケーキ屋に行くが、そこにカズの母親はいなかったらしい。悲しそうに首を振るカズの手を少し強く握って、何の根拠もないのに「大丈夫だから」とデパート内を歩き出した。

2013-03-29 15:30:14
宮高bot @mytk_bot

カズに聞いて母親が向かいそうな店を回る。ジュエリーショップ、婦人服、子供服、化粧品売り場、食料品…けれどどこにも、カズの母親はいなかった。もうデパートにはおらず、カズを探しに行ってるのかもしれないなと思った頃。

2013-03-29 15:45:07
宮高bot @mytk_bot

「迷子のお知らせです。黒のTシャツにベージュのハーフパンツを着た、高尾和成くんとおっしゃる8歳の男の子が迷子になっております。お母様が探していらっしゃいますので、見かけたら迷子センターまでご連絡ください。」

2013-03-29 16:00:10
宮高bot @mytk_bot

「え、あ、俺?」「…今のやっぱりカズか?」「う、ん」「なら、迷子センターに行けば母さんに会えるぞ。良かったな」カズはちょっとびっくりした顔をしてたけど、すぐに嬉しそうに笑って俺の手をぎゅっと握った。

2013-03-29 16:15:06
宮高bot @mytk_bot

「カズ!!」「母さん!」嬉しそうに母親に向かって駆け出すカズ。離れた手がほんの少しだけ寂しいとか。でも、母親に抱きついて、頭を撫でられているカズが何より嬉しそうだったから、本当に良かった。

2013-03-29 16:30:10
宮高bot @mytk_bot

離れていたのは1日にも満たないのに、母さんと本当に久しぶりに会えたみたいな気持ちになって、思わず飛びついた。いつもの様に優しく慣れた手つきで俺の頭を撫でてくれる。それに違和感を感じたのは、少年が俺を撫でる手のぎこちなさが印象的だったから。

2013-03-29 17:00:06
宮高bot @mytk_bot

「あなたがカズをここまで連れてきてくれたのかしら?」「あ、はい」「本当にありがとう。この子ったらいつの間にか後ろにいなくなっちゃってて…ほら、カズもお兄ちゃんにお礼しなさい。」

2013-03-29 17:15:06
宮高bot @mytk_bot

カズがまたこちらに走り寄ってくる。と思うとその勢いのまま俺に抱きついてくる。「うおっ!?」「お兄ちゃん、ありがと!」俺の腹に頭をぐりぐり擦りつけた後、とびきりの笑顔でこちらを向いて言うもんだから、俺もつられて笑顔になった。

2013-03-29 17:30:11
宮高bot @mytk_bot

「もう母さんとはぐれんじゃねーぞ」「うん!」「よし、いー返事」カズの頭を軽くひとつ撫でる。「じゃあ、俺帰るな。ばいばい、カズ」「…またね、お兄ちゃん!」またねと笑ったカズが可愛くて最後にもう一度だけ頭を撫でてから、俺は家に帰った。

2013-03-29 17:45:06
宮高bot @mytk_bot

「なーんてことがあったんすよ!ちなみにこれ、俺の初恋!」「…へぇ」「えー、宮地サン興味なさそー!もしかしてヤキモチっすかー?」「馬鹿言うなよ焼くぞ?」「ぎゃーすいません!」

2013-03-29 18:30:08
宮高bot @mytk_bot

「でも名前も年も聞くの忘れてて…ほんと俺の馬鹿、またねって言ったのにあれから会えてないんすよ…」と呟く目の前の後輩の初恋話には、身に覚えがありすぎる。俺が小5のとき助けた迷子のカズとの思い出にそっくり…いや、そのものだ。

2013-03-29 18:45:06
宮高bot @mytk_bot

「今思えばその少年、宮地サンにちょっと似てるかもしんねー!髪の色とか、ぶっきらぼうな優しさとか?」「似っ…!てるわけねえだろ轢くぞ!」「そ、んな全力で否定しなくても…」「あ、わ、わりぃ…」

2013-03-29 19:00:08
宮高bot @mytk_bot

しゅんとなって俯いた高尾の頭をぐりぐりと撫でまわす。「あ、でも、頭の撫で方は違うかなー」「あ?」「あの少年はもっと撫で方がぎこちなかった!」「ふーん」「ふは、やっぱ興味なさそー!」

2013-03-29 19:15:06
宮高bot @mytk_bot

本当のことを言えば、俺はカズが高尾だってことをずいぶん前から知っていた。『高尾和成です!ポジションはPGです!よろしくお願いします!』その名前と、艶のある黒髪、強がりで我慢強いところ。俺の中でカズは、まあ、そこそこ大きな存在だったわけで。気付くのに時間はかからなかった。

2013-03-29 19:30:09
宮高bot @mytk_bot

けれど俺はそれを、高尾に言うつもりはなかった。高尾が覚えているか分からなかったし、忘れられていたら…ショックだし、何より、これからチームメイトになるのは、カズではなく高尾だったから。高尾とチームメイトになるために、カズではなく高尾と一から関係を築いていこうと思ったのだ

2013-03-29 19:45:07
宮高bot @mytk_bot

だからまだ、言わないでおこう。お前の最初の恋も、最後の恋も、俺であることを。

2013-03-29 20:00:31