湖の女神は...。

木こりが、大事な斧を湖に落として途方に暮れていると、湖面に女神が現れ聞きました。「お前の落としたのは、この金の斧か」正直者の男は、違うと言います。すると、銀の斧を見せて同じように聞いてきます。やはり違うと答えると、女神は金と銀に鉄を合わせ、三本の斧をくれました。 #twnovel
0
夢名 七志 @mumei7c

い寸胴の熱いスープにスプーンを落として困っていると、鍋の精が現れた。「お前が落としたのは、裕福になると通販で買ったがその為に金に窮して手放した金か、生まれた時に咥えていたのに腹が空いたと大泣きで吐きだした銀か、大切な記念で友人から貰った鉄か」匙加減が悪すぎた。 #twnovel

2009-11-21 13:31:33
夢名 七志 @mumei7c

が湖に斧を落として途方に暮れていると、湖面が波立ち女神が姿を現した。「あなたは...」男が話しかけると、女神は手に抱えた金の斧、銀の斧、男が落とした鉄の斧を押しつけた。女神は無言のまま水面下に姿を消す。一目惚れした内気な女はプレゼントを渡すのが精一杯だった。 #twnovel

2010-03-06 20:27:01
夢名 七志 @mumei7c

が湖に斧を落として途方に暮れていると、湖面が波立ち女神が姿を現した。「あなたは...」男が話しかけると、金の斧を持った女神は無言のまま水面下に姿を消し、二度と姿を表わさなかった。「あ~ぁ、まったく最近はろくな男が居やしないじゃんか」女神は筋金入りの面食いだ。 #twnovel

2010-03-06 20:27:13
夢名 七志 @mumei7c

かに円形に近い形ですね」湖底に降りながら話す。「湖に衝突して、また水が溜まった訳だ」クレーターに似た底を行く。「隕石は蒸発したんでしょうね」と、中心辺りに隆起が二つ。掘り返すと金と銀の固まり。「聞く時間は無かったろうな」「貴方の落としたのは鉄隕石ですか、か」 #twnovel

2010-03-08 23:45:07
夢名 七志 @mumei7c

子力発電の使用済み燃料を投棄する深い穴が掘られた。放射性廃棄物を下ろすと、底から女神が現れ言う「あなた方が落としたのは、大きくなった量子ブラック・ホールですか、対消滅に使う反物質の塊ですか」「違う」「正直者には全てを与えます」「せめて核融合」最後まで言えずに、 #twnovel

2010-04-26 12:41:39
夢名 七志 @mumei7c

に斧を落とすと、斧を持った女神が現われて聞く「お前が落としたのはこの。くっ」刃の辺りを摘んで苦悶の表情だ。「落としたのは。ぐぬッ」顔が真っ赤だ。相当の力が入っているらしい。「あの、鉄に付けるのはネオジム磁石じゃ無い方がいいのでは」もう、何も聞こえてないようだ。 #twnovel

2011-01-10 21:46:19
夢名 七志 @mumei7c

こりが湖に斧を落として途方に暮れていると、対岸にダンプの大群が到着し、産業廃棄物、建設残土、不燃ゴミ、浚渫土砂を次々と沈め始め、水が溢れる間も無く不法投棄の山となり、シアン、鉛、ヒ素、六価クロム、水銀が地下に浸透し、重金属の中に紛れた斧は帰って来ませんでした。 #twnovel

2011-05-10 01:18:30
夢名 七志 @mumei7c

の女神が斧を渡す話は、解っていたならさっさと渡せばいいのにとの見方もあるけど、木こりは愛着のある道具を落として苦渋の表情をしていた訳で、鉄の斧が帰って来て本当に嬉しい顔になって解ったんだし、ずるをした木こりがバレたのは、へらへら笑ってたからだ。お前みたいに」 #twnovel

2011-09-23 00:46:43
夢名 七志 @mumei7c

なたが落としたやる気はこの金のやる気ですか」「いえ、そんなに重く無いです」「この銀のやる気ですか」「いえ、そんなに輝いてません」「では、この鉄のやる気ですか」「いえ、堅い意思で鋭く研いだやつです」「何年も沈んでると錆びるし、よく見ると刃こぼれもしてるのです」 #twnovel

2011-10-17 13:22:52
夢名 七志 @mumei7c

銭箱に少額貨幣を落とすと、中から女神が現れ。「お前が落としたのは、金や銀の硬貨では絶対ないし、とてもニッケル黄銅や白銅でもなく、青銅や黄銅をすら惜しみ、まさか、直径20mmほどで重量が1gのアルミニウム硬貨ではないだろうなと、去年の今頃聞いた庶民か」と言った。 #twnovel

2012-01-02 23:22:58
夢名 七志 @mumei7c

っと、『この金の斧か』って続くんだろ。全部解ってんだ。近頃、樵を誑かして、斧を取り上げて働けなくしたり、働かなくても暮らせる金銀を渡してる不埒な女神ってのはお前さんだな。お陰でこちとら材木が入って来なくて商売上がったりだ。逃げようったって無駄だ。忍法影縫い」 #twnovel

2012-08-06 14:37:17
夢名 七志 @mumei7c

前の落としたのは、海岸で弾ける夏か。山荘で静かに過ごす夏か。それとも」先を遮り俺は叫んだ。「夏なんかあるもんか」女神は動きを止め、湖と森の景色と共に消えた。見慣れた陽炎が立つ通勤路。何人かの通行人が見ている。涙が落ちたような沁みが歩道に。すぐに乾いて消えた。 #twnovel

2012-08-22 23:40:48
夢名 七志 @mumei7c

前の落としたのは、海岸で弾ける夏か。山荘で静かに過ごす夏か。それとも」先を遮り俺は叫んだ。「夏なんかあるもんか」女神は動きを止め、湖と森の景色と共に消えた。見慣れた陽炎が立つ通勤路。何人かの通行人が見ている。涙が落ちたような沁みが歩道に。すぐに乾いて消えた。 #twnovel

2012-08-22 23:40:48
夢名 七志 @mumei7c

なたの落とした斧は、この金の斧ですか」湖から現れた女神は、両手で真新しい斧を差し出しながら問いかけてきた。表情は穏やかで、口元には微笑すら浮かべ。頭頂には鉄の斧が見事に刺さり、だらだらと血を流している。ネタか怨みか。どう答えるか。じりじりと無言の対峙が続く。 #twnovel

2012-12-29 18:42:38
夢名 七志 @mumei7c

日からどうすればいいんだ。湖の畔に腕を突いて呆然としていると、水が盛り上がり女神が現れ言った。「お前が落としたのは、この金ダライか」両手で捧げ上げた巨大なたらいには、水が満ちているのだろう。腕がぷるぷると震えている。もう、選択は無い。落ちるしかないじゃないか。 #twnovel

2013-03-18 21:55:20
夢名 七志 @mumei7c

を切る音が途絶えると同時に「しまった」の声。水に落ちる音。平らな水面に、波紋が広がっていく。湖底では、金と銀の斧を抱えた女神が白けた視線で沈んで来る物を追っていた。正直な人だとは解っている。それでも、出て行く様子は無い。其所彼所に散らばる、沈んだチェーンソー。 #twnovel

2013-04-11 21:54:52