ツイート連詩・春組【船を出す】＃pw１３

林明乎 @acico55

きっともう海の上くらいだ。とがめられずにいられる場所。夜明け前に乗り込んで、湾を出たあたりで錨を下ろす。溜めこんだ叫びやきたない言葉を、体がからっぽになるくらい吐きだして、腫れた目で仰ぐ朝日。背中ごしに港はあって、どこに漕ぎだすの、こんな細い腕で。 （船を出す1) #pw13

陶坂 藍 @ohagikinako449

太陽が私の姿を露わにしてゆく。もうあそこへは帰れない、今の私にわかるのはそれだけ。凪ぎの海は上下に揺れ、私の頼りない身体を船ごとあやす。懐かしい記憶。十月十日、この海のゆりかごに揺られて人はこの世へ運ばれてきた。ならば今少しここで、臨月まで。(船を出す2) #pw13

春森しゆう @junju_usako

いつでも先に乗っていた貴方が差し出す大きな掌。漕ぐのを止めて振り向けば心配そうな微笑。隣には顔を寄せ手を握り返す小さくて無垢な強さ。傾いでものめっても瞳のある海原。たゆたう夢は幼き白鳥のボートの上に。舞うはなびら。光り射抜く水面。私の海は花園のなか。 (船を出す3) #pw13

かとう たか @taka423kato

深海に眠る教会の／鐘楼の隙間から射し込む／細い光に輝く窓辺には／白いブラウスの襟に四月の蝶がとまる／やがて凪いだ宇宙の夜を／ひとりぽっちで旅する花弁が越え／今日、生まれたばかりの君が／はじめて袖を通す海に／星の言葉を沈めるなら／舟は朝を待たなくてもいい (船を出す5) #pw13

田中宏輔 @atsusuketanaka

トウモロコシ畑が黄金色にキラキラと輝いてる。一粒一粒の実から潜望鏡がのぞいてる。死んだ者たちが小人の幽霊となって、一粒一粒の実のなかから潜望鏡でのぞいているのだ。百億と千億の潜望鏡のレンズがキラキラと輝いてる。トウモロコシ畑が黄金色にキラキラと輝いてる。(船を出す６) #pw13

二匹の猫は互いに同時に存在する。 @zwei_katzen

雨季になる、と蟹が這い出してくる、無数の蟹だ、台所、や、洗面台、寝室、にまで、押し寄せて、目に、見えないもの、を食べている、床、はぬかるみ、海、の匂いがする、アイーダおばあちゃん、の骸骨、は海の底に、眠り、蟹の夢が海を割る、遠い漁火、ただいまの、準備を (船を出す7) #pw13

なぎさひふみ @hifumi_nagisa

蜃気楼の甘い揺れ。隔たる永遠が、時に想いを寄せて波になる。凪いだ海は夢を写し、航跡になる切っ先は、愛の企みを哀で先導させていた。屯のカモメと疎らの白雲が、海の色を破る。続きに消えた記憶の彷徨が、舟の軋みに時を奏でた。一直線上の世界が境を無くしつつある。 (船を出す8) #pw13

上野江来晴 @UEraharu

境界を海賊が突っ切る。目指す砂浜のテープ。うずくまる少女。葉桜で引っ掻く放物線。頂点が感情の秘密基地へ誘う。シーソーのタラップ。揺らぐのは世界か自分か。足裏をくすぐる田螺。声帯が思わず鍵盤を鳴らす。ねえ海賊さん。俺にも名前はあるさ。故郷は幼き日の湯船。（船を出す９） #pw13

おつき @ikiro_

私だけのチューバ吹き、バイキングから落とされた四月の少女。夜に一度船を止めるのは、波の立たぬ海に映る朔月を掬うため。白いブラウスを星の隙間で洗い通せば、もうすぐだよと声がする。心を還らすための船旅だ。17歳の目は恐ろしい？だから私は、生きろと言った。(船を出す10) #pw13

ブックワーム @BIBLIOTHEQUEa

私が光だ。繰り返し濾過した光だ。春にしか届かない手紙、朝焼けのスタンプを押され、空の部屋へ梯子が架かる。乗組員の投げキッスに背中を押されて駆け上がれ。私が熟し、湧き出し、包む時、水平線が封を切る。「愛のない話は嫌い！！」時の緩みに、もう闇は目を閉じる。（船を出す11） #pw13

早川 純一 @junicci

読み解かねばならないサルガッソ、まだあった。１３の海流が交わるところ。粘りつく電脳の南海。積荷の怪訝なスープ缶を捨て、ゆるい男女になれば、波間で廻るプルメリアが船を導く。二槽式だから隣で廻るのは妻の脱水機だが、そこはもうある座標。観覧車が見えてきた。（船を出す12） #pw13

宮尾節子＊新刊『明日戦争がはじまる 対話篇』好評発売中です。 @sechanco

またせたね。みなとみらいのベンチには、春が座っている。ボロを着て。七つの海を越えたあと、一つの恋に木端微塵よ。飛び散った花片集めて、流してきました花筏。ねえこの桜吹雪が目に入って？と入間の川姐。もういいかい。君のために温めた、船のスープを。召し上がれ。（船を出す13） #pw13

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あなたに詩を書かせるものは何ですか？に「〆切」と答えた詩人が居ました。ほとんどの詩人は、自分で作らない限り掲載場所を持てない現状で。ちょっと、シラッとしてしまう、答えですが。ツイッター連詩をしていると実感しますね。やっぱり書く場所があり〆切があるとこんなに言葉は、詩は元気になる。

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@sechanco 書く場所があり、〆切があり、そして、受け取った、読んだという知らせが、届くと。言葉は、詩は生き始める。そして、もらった言葉から、つぎの詩を生きることができる。プレッシャーもあるし、うまくいかないときもある、でも好きなことの、ワクワクを胸は隠せない。たのしいね。

ブックワーム @BIBLIOTHEQUEa

pw13が折り返してから、読むたびにずっとBEIRUTの曲が鳴っているなぁ。 http://t.co/oEal0vIkZx

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春組のみなさま。おはようございます。入間の川から落花浮かべて、花筏にて只今入港（笑）。たのしい連詩のひとときをご一緒くださって、本当にありがとうございました。みしらぬなかで、ことばかけあう仲間が、できたことが幸いです。またいつかの季節に、会いましょう。おつかれさまでした！（組長）