工房径ついのべ集2013年4月〜6月

だんだん作数が少なくなって3ヶ月で計27作。作らないと本当にへたくそになるので、もう少し精進したいと思います。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

嘘をつきたかった。メレンゲのようにほろりと溶ける甘い嘘を。彼が転勤して1年、嘘をつく相手もいない。「『春には帰る』なんて、嘘つき」ぽろりと落ちた涙と一緒にドアホンが鳴った。「ただいま」「帰ってきたの?」「うん、お待たせ。あれ、泣いてた?」「ううん」嘘、つけた。 #twnovel

2013-04-01 18:34:04
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel こんな暴風雨なら、飛べるはず。飛んできて、と私は願う。電話やメールじゃ足りない、あなた本体が欲しいの。声も、肌も、匂いも、温もりも全部。「俺はメアリー・ポピンズか」悪態をつきながら、それでも来てくれたのは。低気圧ならぬ低血圧で目覚めが悪い、水も滴る私の恋人。

2013-04-03 12:42:56
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 君は、苺。傷つけないようにそっと摘んでも、葉が、茎が、ふるりと震えて。その罪深さに僕は、手にしたその実をすぐに口に入れてしまう。噛めばほとばしる君の味。晴れた日の子供たちのように飛び出して、それぞれに散る。爪先まで君に満たされて、僕はまたその実を、もうひとつ。

2013-04-08 20:40:41
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 故郷への長距離バスを、何度もこのダイナーから見送った。「あなたの夢のためなら」と送り出してくれた君の泣き顔が浮かんだからだ。食べ残したドーナツをリュックに押し込み僕は席を立つ。さよなら夢の砂漠。傷ついた翼は一旦たたもう。ジーンズのポケットには君の写真と片道切符。

2013-04-10 13:35:16

日向日影 (@hyuugahikage)さんの「 #世界もう滅ぼしたい協会 スタート半年記念『 #半滅亡祭 』」 togetter.com/li/487495 に参加させていただきました。

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel すべて滅びろと念じた、君が手に入らないなら。ざんぶ、と潜って水の底。くたばれ、下らない虚栄心も、薄っぺらの人間関係も、努力も我慢も全部。朦朧としながら最後の息の泡を吐き出して悟った。ああ駄目だ。君だけはどうしても滅ぼせない。 #世界もう滅ぼしたい協会 #半滅亡祭

2013-04-11 22:26:49

4月14日ついのべの日【お題案】ミサイル、縄・紐、ベスト、再生、迷子、die、タイタニックを使って。 

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

ミサイルが飛んでくるとか来ないとか、僕は知らない。しがらみの縄で身体をぎちぎちに縛られようと、指先が動けば僕らはどこまでも飛べる。腐ってもまたにょきにょきとベストの形で再生する。迷子になったら集合は #twnvday のタグの下だよ。僕らは風の様に自由、140字の垣根の中なら。

2013-04-14 12:47:14
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 「お題が盗まれた?」立ち上がった拍子に警部の椅子ががたんと倒れた。「初めからないってことは」「4年の経歴を洗いましたが前科はありません。毎回前日までにはきっちりと」「うーむ、久々に大きなヤマだ。必ずやお題を探し出し、ついのべを書いて書いて書きまくれ!」「はっ!」

2013-04-14 13:47:43
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday Do it or die(死ぬ気でやれ)なんて簡単に言うな。俺の命はお前に預けるほど安かない。あの子と初めて握った手の感触。心がふるえた先人の言葉。死は生きてる実感の先にある。いいぜ? お望み通り死ぬ気でやろう。俺の命がほとばしるとびきりのお題をくれたなら。

2013-04-14 17:47:35
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 豪華客船タイタニックが沈むとは、誰が予想できただろう。僕も君も、いつ絶えるかもしれない命。『君が好き』というこの瞬間だけが真実だ。だから少しでも早く、君のそばにいさせてよ。「随分大袈裟なプロポーズね」なんのこれしき。僕の溢れる愛情の、ほんの氷山の一角さ。

2013-04-14 20:24:58

この書き出しいかがですか より 音ノ夜 @oto_no_ya さんの「読んでない本たちが家出してしまった。」をお借りしました。

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 読んでない本たちが家出してしまった。夥しい数の本が。本は煉瓦になって堆積し、山の頂に高い城を築く。昔は、光を失ってもその城で朽ち果てることを夢見た。今はその光が惜しくて、必死で目薬を差す。せめてその美しい城を見ていたいのだ、この命果てるまで。 #書き出し

2013-04-18 08:40:54
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「暑いんだか寒いんだか。春ははっきりしなくていやだよな」そう言って同期の彼が息を吐く。歓迎会の帰り、ふたりきりで歩くほろ酔いの夜。入社して3度目の春。友達でいいの、違うの。熱い指で問いかけるように手を繋ぐ。曖昧よりも甘い、その先が欲しいから。

2013-04-19 21:06:59
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「海の見える部屋をとったから」。空港で会った彼はそう言って笑った。休みを取るために無理したんだろう、いつもより深い目尻の皺までも愛しい。窓辺で海の青を見た途端、後ろから回る腕。「会いたかった」私たちはシーツの波間をたゆたう舟になる。眺めなどもうどうでもよかった。

2013-04-29 05:43:37
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel つかまえて、細いヒールを鳴らして石畳を駆けていく私を。風船売りにぶつかり、色とりどりのバルーンを空に放ったら、果物屋の木箱を倒してオレンジを転がすの。あなたが私の手を取って目が合ったときが、台詞の合図。「厄介な人だな、君は」。そのあとの、甘い言葉はアドリブで。

2013-05-02 08:30:51
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 性格も、好みも違う、君と僕。なのにときどき、魂がぴたりと寄り添う瞬間があるんだ。ビートルズの"If I Fell”をうまくハモれたときみたいにさ。クローバーを編むようなゆるさで、僕らの歴史は交わる。ほつれたら直せばいいよ。緑あふれる庭には、クローバーがいっぱい。

2013-05-06 17:56:35
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 休み明けがつらいって? いいや、仕事がしたくてうずうずしてた。ほら、空は晴れて、満員電車だって『生きてるな』って実感するし。会社に着いた瞬間スイッチが入る、この緊張感も意外と捨てたもんじゃない。「おはようございます」。ま、一番のお目当てはあの娘の笑顔なんだけど!

2013-05-07 08:19:31

バーナードさんは、「夜の畳の上」で登場人物が「笑う」、「かかと」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://shindanmaker.com/28927

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel ひとり減り、ふたり減り。夜も更け、彼の部屋での飲み会の、客は私ひとりだけ。「もう草食系なんて流行らないよ」安全牌の彼を揶揄すれば、突然畳の上に倒される。ざり、と音を立てて逃げるかかとに、笑う気配。「煽ったのは君なのに」。猛る野獣が、ぎらり、生え立ての牙剥いて。

2013-05-08 20:37:44

5月14日 ツイノベの日【お題】「ボーダー(境界)」

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday ボーダーシャツの君を見たら、海に連れて行きたくなった。俺はビンテージのアロハでキメて、後ろからクラクションを鳴らすんだ。友達に甘んじて1年。そろそろ一途だってわかった頃だろ?「ドライブ? どうしようかな」いたずらに俺をもてあそんで。邪(よこしま)な女だよ、君は。

2013-05-14 12:53:56
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 決算期が終わったら。年が明けたら。僕が引いた告白期限のボーダーラインは、そのうち赤道になって地球をぐるりと回ってしまうだろう。ため息をついた社食で、彼女の声を背中で聞いた。「転勤って言われて迷ってるんだ」。「行くな!」思わず叫んだその想いは、赤道直下より熱く。

2013-05-14 13:18:54
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 君に首ったけなのを知られたくなくて、僕は苦虫を噛み潰したような顔をする。なのに君は無邪気に笑って、僕をあっさり駆逐してしまうんだ。まるで冷たいアイスクリームに熱いエスプレッソのアフォガード。指を絡めて抱き合えば、ふたりの境界はもう見えない。

2013-05-14 19:21:57

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