仲俣暁生氏、『クォンタムファミリーズ』(東浩紀 著)読書中、読了後の感想

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仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

あえてハッシュタグつけずに書くけど、『ねじまき鳥クロニクル』第3部の結末を、もっと上手に書くと『クォンタム・ファミリーズ』になるのかも。また、ある意味、舞城王太郎『九十九十九』への返答でもあるだろう。

2009-12-19 07:11:22
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

笠井潔『哲学者の密室』のことも思い出した。もちろん、ディックへのオマージュでもある。つまり、『クォンタム・ファミリーズ』SF、ミステリ、純文学のアマルガムとしては実に見事な実作例。文章も端正でじつによいのでは。いや、これ読んで小説家は少し嫉妬したほうがいい。

2009-12-19 07:13:38
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

草思社にいた時代に量子力学についての一般的啓蒙書をつくったことがあり、そのときにかなりきちんと量子論を勉強しておいたのも、この小説を楽しめるひとつの理由かも。

2009-12-19 07:14:47
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

「世界の終わり」派対「ハードボイルドワンダーランド」派とか、「人間原理」派と反「人間原理」派というのもけっこうリアル。東浩紀という「思想家」のことを理解するには、僕には彼の他の本より、ずっと『クォンタム・ファミリーズ』のほうが分かりやすい。

2009-12-19 07:18:09
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

いまのところ、いちばん感心したのは「楪 渚(ゆずりはなぎさ)」という女の造型。ティプトリー・ジュニア「接続された女」をふまえているのだろうか。

2009-12-19 07:21:38
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

世の中には、SFを読む人と読まない人(あるいは「読んで育った人」と、「読まずに育った人」)がいるけど、こういう本を読むと、自分はSFを読んで育ってよかった、と思う。

2009-12-19 07:26:07
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

小説として単純に面白いから、思想家・東浩紀にまったく関心のない人も、『クォンタム・ファミリーズ』は読んでみるといいと思う。ことに村上春樹ファンとか、SFの読者は。

2009-12-19 07:29:51
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

東浩紀はこれからどんどん小説を書きはじめる予感。そういえば以前、東さんは「現代における花田清輝」になる、と言っていたことがある。花田清輝も晩年、小説をたくさん書いた。

2009-12-19 07:35:08
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

日本のSFをほとんど読まなくなったのは、梶尾真治あたりから。つまり、もう30年ぐらい読んでない。したがって神林長平の時代を完全にスルーしている。高校時代にバカにしていたミステリを、大人になってからは読むようになってしまった。

2009-12-19 07:40:26
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

『クォンタム・ファミリーズ』という題、「ファミリー」が複数形であることも重要。連載時の「ファントム、クォンタム」よりずっといい。

2009-12-19 07:47:08
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

『クォンタム・ファミリーズ』(あえて訳せば「量子家族」)は、量子論や人間原理を平易に解説してくれる啓蒙的な小説でもある。ポピュラーサイエンスの土壌があまりに貧弱な日本では、エンタテインメント小説がその代わりをしないといけないのかも。

2009-12-19 08:31:41
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

そういえば、ハヤカワ文庫で福島正実『未踏の時代~日本SFを築いた男の回想録』が出ていたので買ってきた。『クォンタム』終わったら読む。

2009-12-19 08:36:13
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

SFをよむと言うことは、「文明」という水準で人類について考えるということ。対して「文学」は、「文化」という水準でしか考えること。そしていまは「文化」を考えるより、「文明」を考えることのほうが大事な時代。グローバリズムの時代とはそういうこと。

2009-12-19 08:38:34
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

アメリカの底力は、文化ではなく(あるいは文化=歴史がないゆえに)、たえず「文明」を更新してきた点にある。文明に対して文化で対抗しようとしても無意味。

2009-12-19 08:42:24
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

東浩紀が小松左京を尊敬するのは、たぶん日本人として稀有な、「文明」単位でものを考えられる人だったからだし、いわゆる「文化左翼」を東さんが低く観る理由もそこにある。ある意味、東浩紀は「文明左翼」。

2009-12-19 08:58:27
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

『クォンタム・ファミリーズ』読了。読んでいる途中の期待を上回る終わり方だった。まじで今年の日本の小説ベスト1じゃないのか。来年の各媒体ランキングでの評価が楽しみ。

2009-12-20 07:03:17
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

そういえば立ち読みした『本の雑誌』の今年のベストワンが佐藤友哉『デンデラ』だった。人が変わって路線も変わったのか。それにしても謎の結果。悪い小説ではなかったけれどねぇ。

2009-12-20 07:04:29
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

今年は純文学系は不作の1年だったなぁ。読んでないなかにいい本もあるのだろうけど、そもそも食指が動かず。記憶に残ったのは鹿島田真希、川上未映子ぐらいだけど、作品としてはどちらも不満。

2009-12-20 07:10:50
仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて』続編企画中) @solar1964

阿部和重『ピストルズ』は年内刊行は無理なのだろうか。東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』と同時期に出れば、相乗効果で面白かったのに。

2009-12-20 07:13:55