ヨウカイスレイヤー短編集「シュート・ザ・バラージ!!」より「ネヴァー・ガット・ザ・シーリング・オブ・キンカク・テンプル」
「……カメラに結界を張っていなければ無駄死にするところでした」所々が破けた制服を着たアヤがため息混じりに言った。「あんなダンマクを見たのは、何年も生きてきましたが今のが初めてです」「あら、天狗様に褒められるなんて思ってませんでしたわ」カグヤは静かに笑った。26
2013-04-21 23:51:08「でも、いい写真が撮れたでしょう?私のダンマクの特集記事、とても楽しみにしてるからね」カグヤは無事だった天井板を、力技で再度元の天井に張り付け直した。見かけによらずパワフルだ。「褒めてませんからね」「違うの?」「……宇宙人の思考には付き合いきれません」27
2013-04-21 23:52:18アヤは手元の写真に目をやる。金色に輝く物理ダンマクが画面いっぱいに広がる写真。これは使えない。何枚か選定し、結局一番最後に撮られた写真を採用することに決めた。インパクトのある見出し文を考えようとするアヤだが、ここで一つの疑問がわいてきた。28
2013-04-21 23:53:39「そういえば聞きそびれていたのですが、キンカク・テンプルとはどのような建物なのでしょうか?」出来上がった画像を改めながらアヤが問う。「私もよくは知らないけど……キンカク・テンプルはキョートに築かれた建物で、なんでも大昔にニンジャが一斉にセプクをしたとかいう噂があるらしいわ」29
2013-04-21 23:56:14「荒唐無稽な話ですな」「何せ千年以上も前の出来事だしね。伝説と化していてもおかしく無いのじゃない?私のマジックアイテムみたいに」「どうだか。数千年前から生きているヨウカイが蔓延るゲンソウキョウの住民なら、実際見たというヨウカイがいてもおかしくは無いですからな」30
2013-04-21 23:57:22笑いあう二人は、キンカク・テンプルの一枚天井が静かに訴えかけるニンジャ真実に決して気づくことは無いだろう。ここはゲンソウキョウ。ニンジャが世間から忘れ去られ、ゲンソウキョウに辿り着く運命となるには、まだまだ時間がかかるのだから。31
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