自作ツイッター小説まとめ。

拙作ツイッター小説のまとめ場です。随時更新。
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すなお @Svnao

お盆を少し過ぎた頃、久し振りに夫がやって来た。お線香を取り出したと思えば、「悪い、ライター忘れた」と苦笑。禁煙成功したってことね、良かった。それよりいつもお花ありがとう。あなたから花を手向けられるとプロポーズの日に贈ってくれた花束を思い出すので、いつも照れながら受け取っています。

2013-04-11 17:58:11
すなお @Svnao

結婚したい人がいる、と娘に男を紹介された。外見は地味だが実直そうで、どこか若い頃の自分に似ていた。良い男を捕まえたなぁと彼の帰宅後に呟くと、娘は笑った。「私、お母さんに似て良かった」「ああ。母さん譲りの美人だもんな」「顔じゃないよ。男を見る目」本当に、母さん譲りの良い女に育った。

2013-04-11 17:52:08
すなお @Svnao

Q.霊が見えることで嫌な思いをしたことは? A.私の場合怖い思いをしたことはないんですが、夫の葬儀での読経の最中に夫の霊が木魚のリズムに合わせてお坊さんの頭を叩いているのが見えて、堪えきれず爆笑したところ、親戚の強い勧めで精神科を受診させられたことがあります。

2013-04-11 17:51:19
すなお @Svnao

催眠術師を生業にする男がいた。やっと名前が売れて生計を立てられるようになった頃に、長年支えてきてくれた彼女にプロポーズをしたが、彼女は『男に気持ちを操作されているのでは』と両親に猛反対されたと泣いた。家族との板挟みになり苦しむ彼女の心の中から、催眠術師はそっと自分の存在を消した。

2013-04-11 17:50:13
すなお @Svnao

父は職人だ。言葉の角を取る仕事をしている。そのままでは相手の心に傷をつけてしまう尖った言葉を、丁寧に丸くし研磨して出荷する。近頃は未加工どころか態と刺々しく加工した言葉を使う人間がいるのだ、と父はぼやく。父の手掛けた言葉は幼子や高齢者が飲み込んでも安全で、多くの人に愛されている。

2013-04-11 17:49:38
すなお @Svnao

薬を買った。使用者が笑顔で死んで行くという評判で、楽に死ねる薬として秘かにネットで流通している物だ。躊躇っていたがこれでやっと自殺できる。しかし、飲んで暫くすると全身が激痛に襲われた。(話が違う!)苦しみの中、体は動かないのに表情筋だけが勝手に収縮し、笑顔を形作っていくのを 感じ

2013-04-11 15:59:50
すなお @Svnao

飲んで帰った夜はクレンジングに気を付けないといけない。化粧を落とさず寝てしまい肌がボロボロに、というのはまだ良くて、酔った勢いでゴシゴシ顔を擦って落とすと酷い。30を過ぎてから目鼻が落ち易くなったので、しばしば排水口から眼球を拾い上げる羽目になる。毎日顔面を作る女子は大変なのた。

2013-04-11 15:55:07
すなお @Svnao

夫婦喧嘩をした時は、財布だけ掴んで家を飛び出す。実家に帰らせて頂きます!という勢いで。実際に向かうのはスーパーで、家に舞い戻ると猛然とお菓子作り開始。出来上がったらあとは、自室に篭っていた旦那が表情だけは不機嫌なまま「何の匂いだ」と出て来るのを待って、二人分のお茶を淹れるだけだ。

2013-04-11 15:52:46
すなお @Svnao

小指を失くしたもので、約束はできません。頭を垂れながら端の欠けた左手を差し出すと、お嬢さんは「どうして」と目を瞠った。組を抜ける時に置いて参りました。行く末の保証はできやしませんが、ついて来てくれますか。そう尋ねれば、「まだ薬指があるでしょう」とお嬢さんは笑って、その手を取った。

2013-04-11 15:48:17
すなお @Svnao

コミュ障検定を受ける事にした。合格すれば人間関係を良好に保てなくても免責されるらしい。一次試験の筆記は問題無かったが、二次三次は極度の緊張で全く上手くいかず、諦めていたところへ合格通知が届いた。「そうか、グループディスカッションと面接でまともに会話できなかったのが良かったのか…」

2013-04-11 15:43:22
すなお @Svnao

「わかった、じゃあアンタの人生俺にくれ」。それがプロポーズの言葉だった。通りすがりの他人の身投げを必死に止め、挙句結婚までしてしまった馬鹿な人。あの日のように泣きながら「行くな」とベッドに縋る夫の手に、皺だらけになった手を重ねる。一度は捨てた人生ですが、あなたのお陰で幸せでした。

2013-04-11 15:40:28
すなお @Svnao

世は不況。働けど生活は苦しい。立ち飲み屋で隣り合ったオヤジに愚痴を零すと、「アンタの頑張り、神は見てるよ」と慰められた。「飲み屋じゃ会わんなぁ。神ってのは下戸かい」「そう酔ってちゃ隣にいても気付かねぇだろうよ」「違いない」笑って杯を呷った直後、オヤジの姿が消えていた。あれ、今の…

2013-04-11 12:13:39
すなお @Svnao

佐藤という苗字が嫌だった。学校や職場に必ず同姓がいて、誰かが呼ぶ度に自分の事かと振り返るのが面倒だった。結婚して苗字が変わると、やっとその定めから解放!と思いきや、却って街中で反応してしまうことが増えた。でも、それは嫌ではない。幼い呼び声が聞こえる度に反射的に振り返る。「ママ!」

2013-04-11 12:13:16
すなお @Svnao

「最期に母さんへ手紙を書くから」と頼まれて長男が買ったという便箋は、病室の枕元に白紙のまま遺されていた。五十年連れ添ったが筆を執った事など無かった人だ、仕方ない、と笑った後に気付いた。便箋の一行目には、強すぎる筆圧で、私の名と「有難う」の文字が幾度も丁寧に書き直された跡があった。

2013-04-11 12:11:07
すなお @Svnao

島に生まれた赤子に、長老が「この子はいずれ島を滅ぼす」と凶兆を見た。やむなく赤子を殺め大きな桃の樹の下に埋めたが、その樹から夜ごと泣き声が聞こえるようになった。慌てて樹を伐り実を川へ流すと治まったので、島民はやっと安堵した。数年後、赤子が成長した姿で鬼が島へ襲来するとも知らず――

2013-04-11 12:10:24
すなお @Svnao

携帯を弄りながら歩いていたら、路上占い師に声を掛けられた。「あなた先週フラれましたね」「えっ」「それに先程財布を落とした」「すごい!そうなんです。何かアドバイスないですか」「ツイッターのアイコンを顔写真から別の物になさい」「そうします。あなた何者なの?」「あなたのフォロワーです」

2013-04-11 12:10:02
すなお @Svnao

たくさんの野の花の中から、地味な私を選んでくれて嬉しかった。「好き、嫌い、好き、」男の子の小さな手にちぎられて、花弁が1枚1枚落ちていく。私の花びらは奇数枚だから、大丈夫、『好き』で終わるはず。恋のお役に立って散れるのなら幸せだけど、本当は、きみがその相手へ贈る花になりたかった。

2013-04-11 12:09:31
すなお @Svnao

いつものようにキッチンでインスタントコーヒーを入れていると、「お父さん私にも」と高校生の娘に声を掛けられた。「お前コーヒー飲めたっけ?」「苦手だけど飲めるようになりたいの」「試験勉強の為か」「ううん、一緒に飲みたくてさ」「パパと?」「彼氏と」コーヒーの粉を通常の倍量にして渡した。

2013-04-11 12:08:31
すなお @Svnao

ダメ人間検定を受ける事にした。受かれば認定ダメ人間として胸を張れる。しかしネットで申し込んだまでは良かったが、後から確認したら結構受験料が高い。休日に会場に行くのも面倒だ。キャンセルするか迷っている内に忘れてすっぽかした試験の翌日、封筒が届いた。『合格。貴方は立派なダメ人間です』

2013-04-11 12:06:48
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