in the trunkcase【トキマサ】

一ノ瀬トキヤをトランクに詰めてちょうどえすな聖川さんのところに送りつけてみました。
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革張りのトランクが床に無造作に置かれる。ちらと見て顎を向ければ、恭しい手つきで男たちの一人がトランクの留め金を外した。重そうな上蓋がゆっくりあげられると、トランクが持ち上げられる。中身は無残にもそのまま床に叩きつけられた。ごしゃ、と少しばかり嫌な音。しかし興味はない。

2013-04-03 01:08:21
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トランクの中身は、生きた人間だ。これで何度目になるだろうか。促されて渋々立ち上がる。どうせこれも壊れるのだ。改める必要なんてないだろうに。中身はもぞ、と動いた。細身の人間だ。必死に抵抗でもしたか、手のあたりの縄が皮膚に擦れて痛ましい。癖のある黒髪は汗でべたりと顔に張り付いている。

2013-04-03 01:13:41
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睫毛の長さに興を覚えて、その髪を払いのけて顔を晒させた。白い肌は病人のようだ。まばたきが何度か起こり、瞼のしたから覗くのは青い瞳。……朧な眼光は少しの時間をおくとすぐに真っ直ぐ、こちらを射抜くものに変わった。面白い。猿轡を取り払わせ、俺は彼を見下ろしながら笑う。

2013-04-03 01:19:32
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「名は?」彼は答えない。口はまるで阿呆のように開かれたまま。ただ息をするだけ。……手入れされた革靴、俺は躊躇もなくその床に落ちた指を軽く、蹴り飛ばした。「っあ、」神経まで鈍っているのだろうか?トランクの中に詰められて。上がった悲鳴はすぐに部屋に霧散する程度には、儚い。

2013-04-03 01:23:30
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「名は、と聞いている…トランクに戻されたいか?」荒い息。掠れたような音がその喉から鳴り、しかしすぐにそれは名前を形どる。「いちのせ、ときや、です」「……いい声だ」「聖川様の望み通り歌うたいでございますから」「別に望んではいない」「これは失敬」側仕えを一本下がらせ、改めて見やる姿。

2013-04-03 01:27:58
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整った顔立ち、顔に影を落とすほどの睫毛の長さ。肌は白いばかりでなくよく磨かれ、通った鼻の筋と淡く色づく唇とが綺麗に収まっている。綺麗な男だ。俺をただ睨みつける顔を意にも介さず嗤った俺は、その顎をゆっくり持ち上げた。「悪くない」「…私は最悪の気分ですが」「今日からお前は俺のものだ」

2013-04-03 01:32:41
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彼の言葉など聞いてやる気はない。必要なのは所有の宣言だけ。「逆らえばまたトランクの中だ、今度はきっと外には出られまいな」「意味が分からない、」「もう詰められたいのか?一ノ瀬、気が早い」指でその顔を、蠱惑的に撫で回してやる。「お前は俺のものだ、壊れるまでは、な」

2013-04-03 01:35:10
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気が済むまで撫でて、解放する。手も足も縛られた彼は重力に従って体ごと床に落ちる。キッ、と睨みあげられぞくぞくと鳥肌が立った。「やはり面白いな一ノ瀬は…楽しめそうだ」くすくす笑いトランクを下げさせ、俺はこの綺麗な男の口に、手を持っていった。無理やりな、「誓い」の口づけ。

2013-04-03 01:41:39
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「お前は俺の手に口付けたのだ、永遠に忠誠を誓ってもらう」「無意味な、約束、ですね」「……」いつもなら湧いて出る悪辣は調子が悪いようだ。この波立たなそうな青年。崩して壊して好きにしてやりたい。珍しく綺麗なおもちゃだから。

2013-04-03 01:44:56
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朝はベッドの上で目が覚めた。目が覚めて、暗闇でないのは二日ぶりだ。……ベッドサイドに食事も置かれている。毒かどうかなどどうでも良かった、むしろその方が、ここから解放されて楽になれる。そう思って、久方の食事をした。もっとも、完全に胃が受け付けない。少しの固形物と水だけを頂く。

2013-04-08 00:46:54
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「目が覚めたか」入って来たのは『聖川』と呼ばれていたあの男だ。涼やかな目がこちらを見て、くつくつと笑う。「一ノ瀬は随分と小食なのだな」「食事なんて出来ませんよ、気持ちが悪くて食べられやしない」「それは失礼した」言いながら、私が腰掛けるベッドに彼もまた膝を載せた。

2013-04-08 00:49:01
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「さて、一ノ瀬、仕事だ」「仕事?」「義務、だな……そこに跪け」言葉に耳を疑う。この人はなにを言っているのだ?「できないのか?聞こえなかったか…跪け、と言ったのだ、その床に、俺の足元に」瞬間、ベッドから投げ飛ばされた。無様に体を打ち付ける私を見て、彼は高く嗤う。

2013-04-08 00:51:51
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「無様だな、…だがまだ体力も戻らぬうちから手荒い真似などしたくはない、早くしてくれるか」目に宿る冷たい光が私を見下ろして、…渋々と私は彼の足元に傅く。彼の脚が目に入る。爪の先、指の一つまで美しく整った脚だ。曇り一つない白さ、それを彼は眼前に晒す。そして、ひとこと、「舐めろ」と。

2013-04-08 00:55:30
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他の選択肢はないと、その目が言う。口の端が釣り上がり、私を攻め立てる。「……、」その脚を私はそっと掲げ持つと、爪先からそろり、舌を這わせた。ぴく、と、彼の眉が跳ねる。余計なことを考えてはならない、そう思うが、舌を当てるたびに彼が甘く吐息を漏らすから。「……ん、っふふ、いい、ぞ、」

2013-04-08 00:58:50
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何を求められているのやらも知れないけれど、彼はこれを愉しんでいるようだった。爪と肉の間に舌先をつけ、ちゅ、とキスでもするように動かすと、ひくん、と脚が震える。そのまま足の甲に数度口づけ、私は彼を伺い見た。……白い頬を赤々と染めて、彼は私を見ている。「……想像以上だ」

2013-04-08 01:01:30
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「は、」「気に入った、ふふ、一ノ瀬、……そうだ、名を教えていなかったな、俺は聖川真斗」「聖川、まさと、」「朝、目を覚ましたら俺の部屋に来い、今のこれがお前の主人である俺への、朝の挨拶だ」「……」「わかったか?」……選択肢は無い。私は頷く。「ふふ、ならば次だ」

2013-04-08 01:05:28
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「……俺を満足させてみろ、一ノ瀬、」私の手を引く。そのままベッドに彼が背中ごと倒れこむから、私はその身の上に乗り上げることになる。「っ、」「お前のせいで昂ぶった…責任を持て、この体を満足させてくれ、一ノ瀬」私の着ていた服の、ネクタイをくいと引っ張られ。「お前もしたいのだろう?」

2013-04-08 01:08:49
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急所をくっ、と、その脚の指がとらえる。さっき自分が舐めたところだと思うと興奮した。勢いに任せ組み敷いた体勢、初めて彼の顔を間近で見る。綺麗な男だ。男らしからぬ顔立ち。艶めかしく唇が開かれ。「…どうした」笑うその顔。そそられる。この主人は、劣情を煽るのが上手い。

2013-04-08 01:11:58
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悪い夢として片付けるには性質が悪すぎた。まさか自分が男と性行為をすることになるとは思ってもみなかったし、それで自分も相手も気持ちよくなれるなんてますます信じられなかった。「ご主人様」である聖川真斗に手を引かれるままにその白い体に自らを押し入れた瞬間の、背徳と快楽。

2013-04-28 21:06:29
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彼は私の自身が、彼の穴から出入りをするたびに、きゅうと私を締め付けてみせた。腰を擦りあてて、どこか中の、決まった箇所を突くと高らかに啼いてみせた。奔放な私の主人が私のものであられもなく乱れる様は目に毒だった。そんな趣味はないはずだったのに。

2013-04-28 21:09:22
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すっかり搾り取られて一日が終わった。目を覚ませば私は彼の昨日の言いつけに従い、部屋を訪れる。清廉な表情で私の主人は私を出迎えた。昨日とは雰囲気が違う、今日は和装だ。白い着物。ひとめで仕立てのよいものだとわかるそれ。「…おはようございます」ベッドの床に膝をつくと、

2013-04-28 21:11:49
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彼は片足を此方に寄越した。「…脱がせても?」「…」答えはなかったが、その目が言外に、早くしろと告げる。そっと白い布を剥がし、昨日のように優しく口付けてから舌で舐める、うつくしい足の筋、血管、爪の合間。くしゃっと髪を撫でられた。踝の辺りを摩ると、彼はくつくつ笑った。

2013-04-28 21:15:33
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「真斗、さま」「ふふ、もういい、奉仕の才能はあるようだな」切れ長の瞳がこちらを一瞥した。長い足がそのまま私を床に蹴倒す。…突然の事態で体はあっさりと崩れ、私は床に背をついた。「今度は趣味が一致するかどうか、だ」体の中心、腹に、足袋を履いたままの足が降って来る。

2013-04-28 21:19:23
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「!?」「じっとしていろ…」服越しに、足袋越しに、彼の足が私の性器のあたりをなぞった。器用に指先を折り曲げてつい、と動かされると、不覚にも腰が震えた。昨日の情事が思い出される。「…ほう、もう膨らませている…お前はこのようにされるのが好きなのか」ぎゅうと指で強く押される。

2013-04-28 21:22:41
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「や、め、てください」「口答えとは感心しない」「っふ、」「もうきつそうだが、…触られたいか?もっと強く…」彼の息も上がっている。目を伏せて答えると、自分で取り出すように指示された。執事服のような黒いスーツを寛げ、下着を下ろして曝け出す己の欲望。彼がごくりと唾を飲む。

2013-04-28 21:27:00