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本当、この人、人の気も知らないで。「宮地さんのお世辞は真に受けてたら身が保ちません」「ん?なんか言ったか?」「いーえ、なんにも。でもそれだけ珈琲お好きなら、どうしてこないだは紅茶だったんですか」前から気になっていたことを聞く。あの時は珈琲が好きだと思ったからあの店にしたのに、
2013-09-23 17:08:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
何故か宮地さんは珈琲ではなく紅茶を頼んだ。それが俺にはわからなくって。「あー……」「俺がいない日にきたときも、ホットは頼まないって聞きましたよ」「誰から」「他のバイトです。宮地さん、目立つって言ったじゃないですか」言いながらちらりと厨房を見る。
2013-09-23 17:10:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
するとそこには良い笑顔で親指立ててる森山さんがいて、って、もうやめて欲しい………宮地さんに変に思われたらどうするんですか、なんて言えもしないのでまた視線を戻す。すると宮地さんは珈琲を飲みつつ、目線を逸らしながら言った。
2013-09-23 17:13:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「俺さ、あんたがダジャレ言うようになってから割と、通ってるだろ」「ですねぇ…一回、二週間あいたっきり、それ以外は一週間とあきませんね」「すげー記憶力」「宮地さんのことですから」この人のことなら少しでも覚えるようにしてるし、これくらいなら容易い。
2013-09-23 17:14:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「んでさ、その二週間だよ。その間に他の店の珈琲だの、コンビニのちょい高いカップのやつだの、飲んでみたわけだ」その言葉になんとも言えず苦笑する。本当、何でこんなに珈琲好きな方なのに。「お好きですねぇ。どれか良かったのありました?」「なかった」「え?」「どれも、まずかった」
2013-09-23 17:15:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
その言葉に目を丸くする。まずかった、なんて、何で、「薄かったり、苦すぎたり、酸っぱすぎたり。前はふつーに飲めてたはずなんだがな。いや、飲めるんだけどよ」珈琲を飲みながら言う宮地さんは、厳しくもどこか柔らかい顔をしていて。「なんか、違うんだよ。物足んねぇの」
2013-09-23 17:17:23![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
物足りない?何だ、ろう。言ってる、意味が…「家で飲む分にはインスタントで構わねぇんだけど、外で飲むときくらい好みのモン飲みてぇだろ?」「それは、そうですね」理解が追い付かずなんとか返事をする。好み、とか、あったのか。俺は全然気づかなかったけど、このお店のが良い、のかな。
2013-09-23 17:20:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「だけどどこで飲んでも、あんたがいつも出してくれるのはもうちょっと柔らかいとか、苦いとか思っちまう」確かに珈琲はお店によって大分味が違う、らしい。俺にはあまりわからないけど。「この店の味ならいいのかと思ったけど、やっぱ違うんだよなぁ」………あれ?お店、じゃない?
2013-09-23 17:22:13![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「だからもう、あんたの淹れるの以外、外でホットは飲まないって決めてんの」その言葉にどうすれば良いかわからず手元を見る。だって、それって、俺じゃなきゃ駄目だって、言ってるみたいじゃんか。なんでそんなさらっと、格好良いことが言えるんだろ。いつも俺ばっか戸惑ってて。
2013-09-23 17:24:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そ、れは、また……」そういう、ことなんですか。意識しても良いんですか。なんて、聞けるわけないのに。「うん、やっぱり伊月が淹れたのが一番うまい」「……ありがとうございます」あぁもう、顔が熱い。そんなこと言われたら、本気に、なっちゃうじゃんか。どうしたって、諦められなく、なる。
2013-09-23 17:26:52![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
この恋心は自覚してた。だけどどこかで諦めてたってのに、もう引けない。この人を誰にも渡したくないと思ってしまう。それくらい、宮地さんからの言葉が嬉しくて。「なー、あんたさ、俺のために珈琲淹れてくれない?」「さっき淹れたじゃないですか」「うん、うまかった」その言葉の為に、頑張ってて。
2013-09-23 17:28:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「だからさ…」不敵な笑みでカップを持ち上げ宮地さん言う。「伊月、おかわり」もう、引かない。諦めない。この人と結ばれる為に俺は最大限の努力をしよう。いつか貴方に好きだと言ってもらえるように。「かしこまりました」作るのは、貴方を笑顔にする珈琲。~end~
2013-09-23 17:33:57おまけ
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「牛乳が入ってないやつがいい」後味がさっぱりしないのがどうにも。そう伝えれば伊月さんは考えこんでしまった。そりゃそうだ。アイスコーヒーに難色を示しておいて、アレンジの基本の牛乳も嫌だってそりゃ店員泣かせのリクエストだろう。「生クリームと牛乳、どっちがいいですか」「…クリーム?」
2013-04-29 04:26:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
明日は和装?洋装?予想するのはよそうよ」「あー。伊月さんは和服似合いそうだよな」「こん、ど…」「うん?」言いよどむ。「大学で、チャリティ・イベントがあって、そこで俺、和服着て落語するんですけど」「どこ大?いつ?」「律教です、27日…」「おう、行くわ」「えっ!?」
2013-04-29 04:27:40![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
えっ!?」「来て欲しいから教えてくれたんじゃね―の?」「そ、うです、けど…いいんですか?面白いかどうかわかりませんよ」「大丈夫、アンタの普段のダジャレで慣れてるから」「どういう意味ですかそれ」「だから、さ。観に行くから」勇気を出せ、俺。「連絡先、教えろよ」
2013-04-29 04:28:06