宮月カフェパロ Twitterログ

黒/バス二次創作の呟きまとめです。Twitter上でコラボさせて頂きました。 伊月視点:すだち/宮地視点:たやら ※完結しました
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伊月視点①byすだち

すだち @mk414pk

その人は常連という程この店に来ているわけでは無かった。しかし、日本人にしては高い身長と目立つ髪色、そしてその整った顔立ちは自然と目を引くわけで、店の女の子達はその人が来るのをいつも楽しみにしているくらいだ。だがしかし、彼女たちはその人が来ても自分が注文を受けようとは思わない。

2013-04-18 19:29:08
すだち @mk414pk

それはいつもその人が不機嫌そうな顔をしていて、近寄りがたく怖いから、彼のことは遠くから見ているだけで十分だそうで。だからこそ俺は、その人が店に入ってくる度にレジまで向かわされる訳で…。「いらっしゃいませ」「ホット」「かしこまりました(今日も相変わらず不機嫌そうだなぁ…)」

2013-04-18 19:35:07
すだち @mk414pk

いつも来るのは夜頃で、しかも本当怒っているような顔つきなのだ。折角格好良いのに勿体無い。まぁそれは男の俺に言われても嬉しくもなんともないんだろうけど。コーヒーを作りながらふと思った。もしかしたら疲れてるのかもしれないな。だからこそあんな顔になっちゃってるのかな。

2013-04-18 19:40:30
すだち @mk414pk

それならば少しでも癒してあげるべきなのかな………よし。そうと決まれば、とコーヒーを用意しお客様に向き合って俺は言った。「お待たせしました。ホット飲んで心もほっとさせて下さいね」そして商品を差し出しつつニコッと笑ってみせる。よし完璧!キタコレ!!

2013-04-18 19:47:23
すだち @mk414pk

対してその人は無表情のままで、咄嗟に下を向いた。ヤバイ、これ絶対怒られる。やっぱふざけ過ぎたかな…というかこんな怖い人によくダジャレ言えたな俺…!やっぱり謝ろう、そう思って口を開いた時だった「………っはは、くっだらね」その声に俺は勢いよく顔を上げた。

2013-04-18 19:55:30
すだち @mk414pk

その人は優しく目を細めて少しだけ、本当に少しだけだけど笑っていて。「…面白かったですか?」思わずそう聞くとまた少し笑いながら彼は言った。「イヤ、すっげーつまんなかった」その言葉に少し傷つきつつ、でも初めて見る彼の笑顔に嬉しくなった。

2013-04-18 19:59:46
すだち @mk414pk

「さっきの、結構自信作だったんですけど」「あれが自信作とかセンス酷いな」「でも、お客様、笑ってるじゃないですか」「あまりにくだらなさ過ぎて笑うしか出来ねぇんだっつの」言いながら彼は商品を受け取った。「次はもっと面白いダジャレにしてくれ、じゃなきゃ轢く」

2013-04-18 20:02:26
すだち @mk414pk

「………また、聞いてくれるんですか?」「つまんないのだったら轢くけどな」その言葉に自分でも顔がにやけるのがわかった。今まで、自分のダジャレをすすんで聞いてくれる人なんていなかったのに、まさかこんなことになるなんて。「じゃぁ、また自信作用意して待ってます!」「あぁ、よろしく」

2013-04-18 20:08:45
すだち @mk414pk

そう言って彼は出口へと向かったので俺はその背中に「ありがとうございました」と一声かけた。すると軽く手だけあげ、そのまま店を出ていった。対して俺は、今起こった出来事にただ茫然とすることしか出来なかった。「(………あんな風に、笑うんだ)」くだらないと笑ったその顔は、あまりに美しくて。

2013-04-18 20:15:46
すだち @mk414pk

「………また、笑ってくれるかな」今までは、少し怖くて関わりにくいお客様だった。それなのに、今では話しかけたくて仕方がない。「次、いつ来るのかな」それまでに考えとかなくちゃ。『誰か』ではなく、『貴方』を笑顔にさせる為の言葉を。

2013-04-18 20:20:17

宮地視点①byたやら

療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

大学が6限まであった日だけ行くカフェがある。いわゆるチェーンだが、スタバとかよりも静かな雰囲気で落ち着いている。ホットの値段も手頃だし立地も悪くないのでお気に入りだったが、なぜか最近、いつもレジが同じ人にあたる。今時珍しい感じの、艶やかな黒髪の和風美人。まぁ男だけど。

2013-04-19 00:02:35
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

カフェに行く日は6限あと、つまり最悪に機嫌が悪い日だ。ただでさえ普段はない6限というイレギュラーなコマ割の上、教授が胸糞悪いジジィだってんだからそりゃ機嫌も悪くなる。そのままの気分で帰りたくなくて、落ち着くためにコーヒーを求めてこの店に来る。今日もあの人はいるだろうか、お、いた。

2013-04-19 00:03:05
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

いつも涼しい顔で、けど決して事務的ではない笑顔でコーヒーを差し出してくれるその人は他の女の子の店員にも客にも人気らしい。あの店員のファンになって常連になっている客も少なくない。今日だってほら、窓際の席の女の子がちらちらと彼を見ている。確かあの子、先週もあの店員目当てに来てたよな。

2013-04-19 00:04:09
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「いらっしゃいませ」「ホット」「かしこまりました」いつもどおりのやり取り。今度『いつもの』とか言ってみようか。覚えてなかったら虚しいからやらないけど。ボーッと待っていると、なにやら彼はコーヒーを淹れながら心を決めたような目つきをしていた。なんだ、どうした。

2013-04-19 00:04:36
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

いつもどおりに差し出されるカップ。「お待たせしました、ホット飲んで心もほっとさせて下さいね」オプションはとびきりの笑顔。思わずさっと俯いて吹き出すのを我慢した。え、なんだよ。正統派イケメンがオヤジも真っ青なダジャレって。今のダジャレだよな?気のせいじゃないよな?

2013-04-19 00:05:50
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

そのときのオレの心情を表現するなら、ぽかんとした、だ。頭の中が真っ白になって余計なモノが全部追い出されてしまった。「………はは、くっだらね」自然と口元が緩んだ。目線を上げれば、口を中途半端にはくはくとさせた店員が。それがまたなんとも愛嬌があって笑ってしまう。

2013-04-19 00:06:18
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「面白かったですか?」「イヤ、すっげーつまんなかった」そう返せば彼はがっくりと肩を落としたが、同時にちょっと満足そうに笑った。へぇ、こんな風に笑うんだな。いつも接客用の笑顔しか知らなかったので、素の表情に少しドキッとする。って、ちょっと待て、ドキッてなんだ。おい。

2013-04-19 00:06:52
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「さっきの、結構自信作だったんですけど」「あれが自信作とかセンス酷いな」「でも、お客様、笑ってるじゃないですか」「あまりにくだらなさ過ぎて笑うしか出来ねぇんだっつの」言いながら俺は商品を受け取る。じんわりとあたたまる指先に心までぬくもりが染みるようだ。

2013-04-19 00:07:39
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「次はもっと面白いダジャレにしてくれ、じゃなきゃ轢く」ついうっかりいつもの口癖が出てしまった。後輩に怖い怖いと連呼されるそれを使ってしまったと自覚してちょっと慌てて様子をうかがう。彼はちょっと黙り込んだ。やべ、怖がらせたか?

2013-04-19 00:08:03
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「………また、聞いてくれるんですか?」おずおずと彼の口をついて出てきたのはそんな言葉で。良かった、怖がらせないで済んだようだと思えばまた減らず口を叩いてしまう。「つまんないのだったら轢くけどな」物騒な物言いに、しかし彼は嬉しそうに笑った。「じゃぁ、また自信作用意して待ってます!」

2013-04-19 00:08:19
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

その笑顔にまた心臓が飛び跳ねる。なんだか調子が狂う、今日はもう帰ろう。「あぁ、よろしく」カップを取り上げて踵を返す。自動ドアをくぐる寸前、背中から声がかかる。「ありがとうございました」こちらこそ、とは言えないので軽く手を上げて店を出る。振り向くことはできなかった。

2013-04-19 00:08:40
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

たぶん、いまオレの顔は赤いんじゃないか。まったく、らしくない。本当にらしくない。最後に盗み見たネームプレートを思い浮かべる。伊月サン、ね。今までほとんど気にも留めていなかったのに、たった数分で鮮やかに胸の中に焼き付いた彼を思う。

2013-04-19 00:09:00
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

憂鬱な授業な後とは思えないほど軽い心に驚く。ったく、なんだよ。結局彼の言ったとおりだ。カップに口をつけると、苦味と共にぬくもりが広がってホッとした。ったく、くだらないんだよ。次はもっと面白いこと言えよな。アンタの笑顔とその言葉を楽しみに、きっとまた行くから。

2013-04-19 00:09:57
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