宮月カフェパロ Twitterログ

黒/バス二次創作の呟きまとめです。Twitter上でコラボさせて頂きました。 伊月視点:すだち/宮地視点:たやら ※完結しました
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宮地視点②byたやら

療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

いきつけのカフェに些細な楽しみができてから二ヶ月。いつの間にかジャケットをはおらない日のほうが増えて、そろそろホットを頼む季節でもなくなった。不愉快な教授の講義は担当が変わり、ゼミも始まって大学はだいぶ居心地が良くなった。それでもまだあのカフェに通うのはやはり彼のせいだろう。

2013-04-23 22:24:10
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「いらっしゃいませ」「よう」「あ、お兄さん、いらっしゃいませ」一度目は接客用の、二度目はふんわりとした素の挨拶をよこされる。これも恒例行事だ。名乗ったことがないもんだから、伊月さんは俺のことをお兄さんと呼ぶ。ノリは「そこのお兄さん」だから年は関係ない。

2013-04-23 22:25:17
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

伊月さんの方が年下だろうと予想しているんだけども、実際どうだろう。中性的な彼の面差しは年上と言われても年下と言われても信じられる。だから予想の半分は願望だ。いつか聞こうと思いつつ、きっかけがないままいつも会話が終わる。

2013-04-23 22:25:26
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

伊月さんがコーヒーを淹れる僅かな時間にぽつぽつと言葉を交わし始めてから、気安く話すようになるまでそう時間はかからなかった。だいたいは彼のダジャレを聞いて、それを俺がいつもの暴言で切り捨てていく。最近だと「紅茶が凍っちゃった」とか。レベルが上がる様子は今のところ皆無だ。

2013-04-23 22:25:41
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

かなり乱雑な対応をされているというのに、彼が嬉しそうにするもんだから俺の暴言は今のところ自重していなくて、轢く焼く煮る切る刺すあたりはもはや語尾と化した。そしてなぜかウケる。こないだ串刺しにするぞと言ったらツボに入ったらしく笑いが止まらなくなってずいぶん難儀した。

2013-04-23 22:25:56
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「いつものでよろしいですか?」そう言いながらすでに伊月さんの手はホット用の豆を用意していた。背を向けて焙煎機に手をかけた所で、メニューに視線を彷徨わせて返事に窮した俺を不思議そうに振り返る。ちょっと待て、いまアンタ俺に背を向けてたよな。なんでわかったんだよ。

2013-04-23 22:26:35
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「今日は違うのにします?」いつもだって返事はしないのだ。彼は否やがなければ肯定と取って豆を挽くのに、まるで表情を見られたとしか思えないタイミングで取り出した一杯分の豆を片付けた。「あー…うん。冷たいのがいい」「アイスですか?」「とりあえずそれで」「かしこまりました」

2013-04-23 22:26:45
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

少々お待ちください、と言い置いた彼は冷蔵庫から巨大な銀色のポットを取り出した。「アイスって作り置きなの?」「毎回だとお待たせしてしまいますから、1日2回、店長が寸胴で作るんですよ」「へー」「お待たせいたしました、アイスコーヒーです」いや注ぐだけだから待ってないし。

2013-04-23 22:27:06
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

差し出されたプラスチックのカップの中で氷が軽く触れ合う鈍い音がする。「愛する人とアイスを食べて居座る愛の巣」一瞬、息が詰まった。すぐに「アイ」にかかる語がほとんど思いつかなかっただけだと察して、いつもの呆れが襲ってくる。相変わらず残念すぎる。これさえなければただのイケメンなのに。

2013-04-23 22:27:16
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「被りすぎ、捻りがない。吊るすぞ」「ですね、ちょっと自分でも思いました」口の端を持ち上げて感想を言えば、伊月さんはふにゃりと笑った。なにがそんなに面白いのか。会計を済ませて背を向ける。「ありがとうございました」の声にいつもどおり手を上げかけて、ふと振り返ってみた。

2013-04-23 22:27:35
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

ひどく優しい、それでいて少し寂しそうな表情と目が合う。ばちりと合ってしまった視線に伊月さんの表情が驚きに染まる。「あ、あの…」何かを言いかけた彼の声が耳に届く前に、自動ドアが視界を閉ざした。グレーに着色された向こうでまだ伊月さんは固まっていたが、俺はそのまま視線を前へと戻した。

2013-04-23 22:28:06
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

いつもどおりの帰り道をたどりながら、さっきの会話を反芻する。これも最近の習慣だ。それにしても「愛する人」だの「居座る愛の巣」だのずいぶん甘ったるい言葉がするりと出てくるあたり、そんなふうに思う人がいるのだろうか。その傍に居座りたいなんて、伊月さんが願うような人が。

2013-04-23 22:28:14
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

いつになく落ち着かない。「愛する人、なんて」口からこぼれ落ちた独り言に自分で驚く。だからなんだってんだ。伊月さんにそんな人がいようがいまいが、俺には関係ないだろう。そう言い聞かせようとして、最近は味わっていなかったムカムカが胃の底から湧いてくるのを感じた。

2013-04-23 22:28:26
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

あの教授の講義はもうない。手の中にはあの店のコーヒーがあるというのにムカムカは収まらない。逃げるようにカップに口をつけて顔をしかめた。「…渋い」 伊月さんが淹れたんじゃないんだよな、これ、と思って気づく。あぁ、なんだ、そうかよ。自覚した恋の味は、ずいぶんと煮詰まった味がした。

2013-04-24 07:23:45

伊月視点②byすだち

すだち @mk414pk

怖い顔をしていたお兄さんは、その固い表情が最近よく崩れるようになった。「いらっしゃいませ」「よう」「あ、お兄さん、いらっしゃいませ」あの一件以来、このお客様は良く来てくれるようになった。今までは本当に「怖い」としか思えなかったが今はほんの少し優しい雰囲気も出ている。

2013-04-23 23:24:05
すだち @mk414pk

彼は、怒っているような顔にほんの少し笑みを添えていて、同僚たちはますます彼を好きになったらしい。しかし自らレジに行こうとしないのは、やはりまだ恐れのが勝つみたいで、俺は今日もお兄さんの注文を受ける。………正直、役得だなとは思っているけれど。だって、彼の顔が間近で見れるんだから。

2013-04-23 23:25:42
すだち @mk414pk

彼は発言も物騒だけど、その目から本気で言っていないことくらいわかる。呆れたような、しょうがないとでも言いたげに表情を緩めるから、それが嬉しくってつい笑顔になってしまう。彼は知らないんだろうけど、俺がこんな風にお兄さんのことを思ってるなんて、俺の、この恋い焦がれる気持ちなんて。

2013-04-23 23:39:07
すだち @mk414pk

「いつものでよろしいですか?」そう言いながら豆を用意し焙煎機に手をかける。彼はいつも返事をくれるわけではないから勝手に肯定だと思って用意する、のだけど…今日はいつもと違い、メニューを見ているみたいだ。暖かくなってきたし、ホットは飲まないのかな…そう思いながら振り返って言った。

2013-04-24 07:39:47
すだち @mk414pk

「今日は違うのにします?」そう聞けば彼は少し驚いたような顔をした。どうしたんだろ?あぁでもとりあえずホットじゃないみたいなので豆を片づけると彼は言葉を迷いながら言った。「あー…うん。冷たいのがいい」「アイスですか?」「とりあえずそれで」「かしこまりました」

2013-04-24 07:45:27
すだち @mk414pk

アイスコーヒーか…と思いながら冷蔵庫からポットを取り出す。「アイスって作り置きなの?」「毎回だとお待たせしてしまいますから、1日2回、店長が寸胴で作るんですよ」「へー」そう言いながらカップを用意しコーヒーを注ぐ。俺がこのお兄さんと話せる時間はコーヒーを用意してる時間だけだ。

2013-04-24 07:50:05
すだち @mk414pk

それはとてつもなく短い時間で、しかも今日は作り置きしているコーヒーを注ぐだけで、あまりの短さに少しだけ泣きたくなる。だって、この人が好きだから。愛してるから。………なんて、言えない。言えるわけない。「お待たせいたしました、アイスコーヒーです」そう言って彼にコーヒーを出す。

2013-04-24 07:54:28
すだち @mk414pk

「愛する人とアイスを食べて居座る愛の巣」………しまった、今日のダジャレは自分の欲望が出過ぎた。てか、愛の巣て、この店のつもりかよ本当自分馬鹿だ。あぁもう恥ずかしくて死にたい、お願いだから、どうか言葉の裏の意味なんかに気付かないで。「被りすぎ、捻りがない。吊るすぞ」

2013-04-24 08:00:25
すだち @mk414pk

不安に襲われてた俺に言われた言葉はいつもの暴言で、ただのダジャレだと思われたのだと少しだけ安心して笑った。「ですね、ちょっと自分でも思いました」ありきたりなダジャレ、言葉の裏に気付かなければ、本当にありきたり。あぁでも、気付かれなくて嬉しいのに、少しだけ寂しい。

2013-04-24 08:03:37
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