第3回twitter小説大賞応募作
肉体の繋がっていない精神と、精神のない肉体、どちらが不幸だろうか?その思いを具現化することのできない心、何の感情も抱かないただの肉の塊。きっとどちらも不幸なのだろう。そして、ベッドに横たわり、永遠に覚めない夢を見て微笑みを浮かべる彼女は前者だし、それを眺める僕は後者だった。
2013-02-21 20:51:28生という一瞬を手放せば、死という永遠が手に入るなら、それは悪くないかもしれない。しかし、それは詭弁に過ぎない。結局の所、一瞬も永遠も相対的なのだ。頭の中では永遠の生を感じられる。死も実は一瞬で、次の瞬間には別の生が始まるかもしれない。そんなことを思うと少し救われた気分になる。
2013-02-21 20:51:52気付いたら爪を噛んでいる。目眩。百円の飴は十分で食べ終わる。舐めずに噛んでしまうから。絶え間なく何かが襲ってくる。幻聴は聞こえない。イヤホンをしているから。幻覚は見えない。目を閉じているから。イヤホンをとったとき、目を開けたとき、聞こえる音が、見える景色が、幻なのか、真実なのか。
2013-02-21 20:52:15置き忘れたマフラー。ボタン電池で動く人達。階段。段差。右足。左足。パンジー。紫。光。S字型の道。看板。顔写真。名前。存在。終電。駆け足。走れ。走れ。 #twnovel
2013-02-21 20:52:42そうして私達はオウムを飼い始めた。オウムは私達の代わりに思考し、話すことができる。そのうち私達はほとんどの仕事をオウムに任せるようになり、自分で考え行動することはほとんど無くなっていった。しかし、そんな私達でも賭け事をする時だけは真剣に考え、夢中になるのだ。 #twnovel
2013-02-21 20:53:10片足の巨人が立ち上がると、大抵バランスを崩し、家や森に手をつき破壊してしまう。巨人は申し訳なさそうな顔をするが、我々は文句を言うことができない。飢饉の時に食料として足を提供してくれたのは巨人なのだ。しかし、巨人が片足になるまで、彼が立ち上がれることなど、我々は知りもしなかった。
2013-02-21 20:53:37ポストに手紙が届いた。汚い字で「世界に喧嘩を売りにいきます。同志募集」とある。幼い頃の僕の字に似ていた。その頃にそんな思いがあったことを思い出す。 でも僕は手紙を破く。そして変わらない日常が続く。世界に喧嘩を売ることなく。 今日もポストを覗く。何かを期待して。しかしポストは空だ。
2013-02-21 20:54:05真夜中に泥棒が窓から入って来て、「あなたが心から大切に思っているものを盗んでいきます」って言った。その瞬間目の前が真っ暗になって、気が付けば朝だった。盗まれたものを知ろうと、必死で部屋の中を探したけど結局何が盗まれたか分からなかった。元々そんなものなかったのかもしれない。
2013-02-21 20:54:25一番古い記憶は、軒下で雨が降っているのを眺めている光景だ。僕の時間の概念はその瞬間始まり、僕の中で永遠は失われた。そして僕は、少しずつ終りを、死を意識し始める。それを考えると、何か不思議な感じもする。僕は自分というものを一度雨に託したのだ。そしてそれは今も続いているのだろう。
2013-02-21 20:54:37昼にしか飛ばないフクロウを求め続けた私は、家族・仕事・住む場所を失った。そのフクロウを見つけるために今日も森に入る。今日はよく晴れている。耳を澄ませ、目を凝らし、必死でフクロウを探す。突然空が闇に覆われ夜が来た。日蝕だ。次の瞬間何万というフクロウが森を覆い尽くすのを私は見た。
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