工場はオートメーション化され、代えはいくらでもある。相手も菌で、いくらでも沸いてくる。人間や動物たちはすでに年を取り村を離れ、パンと菌の戦いだけが果てしなく続く。
2013-05-29 09:25:51「なんのために生まれて、なんのために生きるのか」 菌にも聞いたが要領を得ない。しょせん菌は菌だ。犬も答えずただ吠えるだけだけだった。この犬も何代目だ? パン職人は死んだ。カバもウサギも野生を取り戻した。俺の周りには誰も残らなかった。
2013-05-29 09:27:45街にバーがある。カウンターの奥にいるのは当時アシスタントだった女だ。俺は菌にぶつけたのと同じ質問をする。女は遠くを見たままつぶやく。
2013-05-29 09:28:23「アンタの拳に救われた娘がいたわ。その娘は結婚し、子を産み、いまでは孫もいる。その孫もいま恋をしてる。世界は続いていて、その続きの中の一つにアンタがいた。アンタがいなければそれはなかった。世界はそうやってまわってる」
2013-05-29 09:29:51「菌もたぶんそう。職人のじいさんもそうだった。あの犬だってそうよ。アンタの戦いを見たニンゲンたちみんなもそうだわ。だからアンタは戦いつづけなくちゃいけない。生きなくちゃいけない」
2013-05-29 09:30:50「世界はそうやってまわっていて、アンタは世界の一部で、アンタがいなければ世界もまわらない。世界もまたアンタを生かしている。だから生きるの。アンタも。私も」
2013-05-29 09:31:21腹の底から力がわいてきた気がする。菌が街を破壊している音がする。行かなくては。 「やっといい目に戻ったわね。 アンパンマン、アンタらしい顔よ」
2013-05-29 09:32:26バタコ日記「1500、A、Bと交戦を開始。1515、Aの頭部パーツ交換。1516、頭部パーツ交換に問題が発生。理性を失い暴走を始める。1520、A、Bを捕食。1521、Dを捕食。B及びDからイーストを分離・獲得したと見られる。1529、J指令による現場放棄。住民避難を開始」
2013-05-29 09:43:58バタコ日記「1700、住民避難難航。Aの頭部は形状を失いつつ巨大化。1730、A頭部が発生する気化アルコールにより住民が昏倒。救援者の二次被害も。1800、J、戒厳令。1902、A頭部の巨大化停止。しかし一時的なものとJは推測」
2013-05-29 09:55:27バタコ日記「悪夢のような一夜が明けた。アンパンマンは大地に取り付き、生命のすべてを分解している。これではまるでバイキンだ。アンパンマンの頭部を持ったカビルンルンの目撃例もある。被害中央部ではアンパンマンの形状は複雑さを見せていて、一種の生態系を構築したようにも見える」
2013-05-29 10:14:16バタコ日記「アンパンマンの中央部から何かが飛び立っていく。ジャムおじさんによるとイーストの生み出す炭酸ガスやアルコールを使ったロケットのようなものらしい。苗床を求め拡散するつもりなのか。世界は急速に侵食されていく。これはあなたの意図なのかジャムおじさん。彼は笑って答えない」
2013-05-29 10:19:04バタコ日記「私はジャムを熱気球から突き落とした。彼が造物主を気取るのをこれ以上許せなかった。せめてその一部となって責任を取るべきだ。私もこの日記を気球に残しアンパンマンのもとへ行こう。いつか誰かが手に取ることを願って」(あの地平線~輝くのは~)
2013-05-29 10:23:03ドキンちゃん「ねえ、バイキンマン。工場に忍び込んだはいいけど、何をさがしてるの?」 バイキンマン「しっ。しずかに ・・・ あった。これだ」 ドキンちゃん「なにこれ? ただの小麦粉じゃない? ソイレントって書いてあるけど・・・どうしたの? 顔色が悪いわよ? 何か意味があるの?」
2013-05-29 15:05:38「この森の動物たちはなぜ言葉を話す? いやこの森だけじゃない。 この国の文化レベルは20年前と比べて格段にあがったんだ。 この工場ができてから、だ」
2013-05-29 16:09:32「ヤツらは自分の頭を生物に食わせて、生物たちを救おうとする。生物たちはいつのまにか言葉をあやつり、ヤツらに頼るようになり、その賞賛の声はすべてこの工場に向かう。 このうえなく分かりやすい構造じゃないか?」
2013-05-29 16:09:58