◆１６（祖国）

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◆１６ 希望に満ち溢れた少年と少女が この大地に―ここに―まさにここに―１つのクサビを打ち込もうとしている その血を彼と彼女のものにしようと 「ねえ、この土地が僕らの祖国になるのだろうね 　　僕らが新しいアダムとイブだ 　　　いざ、名づけの秘儀を！」 …#twpoem

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… 私は 彼と彼女を 殺したく なかった。 本当なんだ、心からそう思っている、信じて欲しい しかし （これほどまでに怖ろしい「しかし」があるだろうか 　善良な心を持つ人であれば、もうここで読むのをやめるはずだろう …#twpoem

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… 　私は千の「しかし」で、結論をどこまでも先延ばしにしよう 　そのことで二人の■が、宙吊りにされることを目指して） ―しかし。　 …#twpoem

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… しかし、二人には私の姿は見えてはいなかった 私は彼と彼女にはあまりに巨大すぎたから ２本の足は森の大樹と変わりなく見えただろう あまりにも当たり前にそこにあったから …#twpoem

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… ただし、 彼と彼女も傲慢すぎたのだ、蛇の誘惑を思い出すことだ なぜわざわざ古い者の名―土くれの人、 アダムとイブを呼ばわったか メタファーを用いて―それは従属することに他ならない 想像力の欠如―愚か者―機械知性のそれ …#twpoem

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… あるいは、少女はより賢かったのかもしれない クサビを打とうとしたのも、アダムとイブと読んだのも少年だったから 少女は何かを恐れて戸惑った様子だった …#twpoem

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… 様々な神話が、この女たちの戸惑いを描かなかった イザナミも、ヘラも、もちろんエデンのイブも 沈黙の中の彼女らの言外の思いを 神話の語り手も、預言者も見過ごしてしまった …#twpoem

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… （けれども託宣者は盲目であるべきだったのであって、 「見る者」としての巫はランボーを待たねばならなかったのだろう） 名付けはすでに終わっている リンネの記述は分類と言う名の黒魔法だった マーク・トウェインもそれを記していたおろかなイブ！ ―賢いイブ！ …#twpoem

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… 少年と少女、希望と未来の象徴 しかし（また呪われた「しかし」だ！） 二人はなぜこんなにも既存品めいているのだろう 「この土地が僕らの祖国になるのだろうね」 …#twpoem

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… その足が踏んでいたのは金で買った土地である ２０世紀の終わりには月の土地でさえ売買されたように 大地は土地と呼ばれ炭素とケイ素、全ての元素を数え出して計測され 密度と温度と数値に還元され、あの忌まわしい四角に …#twpoem

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… ―エクスカリバーよりも切れ味鋭い緯度と経度のナイフ 　何しろ地球をパパイアのように賽の目切りにする― 切り刻まれＧＰＳにポイントされる大地 …#twpoem

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… 二人はどこでもない地にクサビを打つべきだった いや、この世界にはそのような場所はもはや少ない ―ひとつ、無限に広がる詩の大地 　頑迷なドイツ人たちが「守り保つ」言語の大地 …#twpoem

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… ―ふたつ、文字通り、少女の処女地 　少年のまだ柔らかいクサビを打ち込む秘密の茂み 　だがそれはすぐに征服されてしまうだろう ―みっつ（あるとすれば） 　それは２人が知るべくもない …#twpoem

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… 　無垢のパスポートを持ってどこでもいけるのだからこそ 　存在の可能性であるその一箇所 　祖国となるべき脈動の土地、ただ一つの 　私はそこへと、彼らに代わってクサビを打ち込んだ 　すなわち 　鼓動の― 　生命の― 　桃色の― 　　　　　　　―心臓 …#twpoem

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… 　「僕らが新しいアダムとイブだ」 　在―蛇―無　と　慰撫　だ 　在るべきか 　　　蛇か 　　　　　無か 　当然ながら蛇だ！　ウロコあるもの、這うもの 　レビ記にて食してはならぬとされたもの 　聡きもの　悪しきもの　女　不死身のもの　 …#twpoem

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… あるいは彼女がアンドロギュヌスだったなら それとも彼がアンドロイドだったなら 彼らは名付けを何か異なるものと勘違いしていた それこそが最も怖ろしい罪だった やがて生まれたかもしれない少年と少女の子ども …#twpoem

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… （獣の交わりしか知らないだろう二人は 　　少年と少女の希望？　未来の恩寵？ 　大地がまだ神聖であったころの話だそれは―） もはやイノセントなる語も 社会と世界との中に埋め込まれ 原罪は死んだ …#twpoem

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… （私が殺した。生まれたときに既に冒されていた私が、である） その代わりに、歴史が、コンテクストが、 夥しい言語、君の知らない国の君の知らないジェノサイド物語 （あれがソンミ、アウシュビッツ、ルワンダ 　君は指差す大三虐殺―） …#twpoem

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… 自然死はもうない。あるのは殺人ばかりだ 誰もが誰もを…… その丘でイノセントは血の殲とへと変わる 二人はやがて生まれた子にも、世界にも ＤＱＮネームとキラキラネームをつけるのだろう …#twpoem

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… そのようにして名付けられたＤＱＮ大地とキラキラ大地で 生まれるキャラクタリスティックな人類 （そこではミミミがマリアージュを使ってメテオを狩り、 　プティで煮込みメロスを添えて食べるのだろう） …#twpoem

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… 名付けの秘儀とは、見出すことである その者の持つ本来の名を見ることの出来る者が 詩人が再び見つけることである そのようにして海と太陽のつがいは永遠と名付けられる …#twpoem

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… 私は彼と彼女の秘儀を 無垢ではありええない偽無垢を 二人の詩を―つまりは存在そのものを 批評しようとしている Ctrl＋A（全選択）　→Dlt で消えてしまいそうなその 機械無垢を …#twpoem

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… 私は私の全ての慈悲を、隣人愛を持って 少年と少女に出会おうとした しかし（この接続詞に呪いあれ！） それ故に 彼らと彼女らを どうしようもなく自壊へと導き …#twpoem

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… しかし（呪いあれ！） 死がひとつの生のありかたでもあり得るということ だからこの一番新しい虐殺は 最も無垢たりえない子ども ―それはすなわち、全ての子どもであるが― 彼らと彼女らの屍を築き上げ そこに私たちはクサビを打ち込んで …#twpoem

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… 祖国！祖国！最後の王国。 永遠に老いたものたちの地球は６０億ッ墓村 新しい蛇よ さあ、名忘れの秘儀を しかし（呪い！） しかし（呪！） しかし（） 死 …#twpoem　◆１６