オレの妹がカリフなわけがない！#6-7

カリフラノベ『オレカリ（略称）』 @caliphnovel

「オレの妹がカリフなはずがない！」#６

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夢眠によると、天馬家は預言者ムハンマドの孫ハサンの末裔だ。 預言者の召使いサウバーンは、世が乱れた戦国末世に、東方から黒い旗を掲げて義なるカリフを奉ずる民が世を救う、との預言者の言葉を伝えた。その言葉を信じ末世に備えて極東の日の出る国に移住したのが天馬一族の太祖馬至善だった。１

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サウバーンの言い伝えを信じてホラーサーンに移住した者の一部は更に東方を目指して唐に達した。中国文化を身につけた漢化した彼らは預言者ムハンマドに因んで馬姓を名乗った。そして時代が流れ宋の時代、馬一族の中で、伝説の黄金の国ワクワーク（倭国）へと旅だった勇者が馬至善だった。 ２

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１１世紀初め、至善は宋の貿易商に混じって日本に渡り、博多に居を構え、日本人を妻に娶り日本に定住した。馬家は日本の文化、習俗に同化したが、いずれの日にかカリフの黒旗を掲げて挙兵する、との教えは、馬家の代々の当主に秘かに伝えられてきた。３

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明末の混乱の中で馬宗家の碩学真斎が来日する。真齋は父から儒学と査拳を、王岱輿の経堂でイスラームを学び存在一性論の奥義を会得し、若干１７歳にして院試に合格し、南京国子監で鄭成功の知遇を得た。清によって明が滅ぼされると、真斎も鄭成功と共に反清軍に身を投じた。４

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真齋は、鄭の意を受けて日本に明復興の軍事支援を要請する使者として派遣される。軍事支援要請は失敗するが、真齋は博多の馬家を頼って日本に住み着くことになる。その学識・教養を日本人に認められた真齋は、備前の小藩小松家に儒者として召抱えられ、後に士分に取り立てられた。５

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以後、馬家は、「天方の馬氏」にちなんで「天馬」姓を名乗ることになった。「これが天馬姓の由来だ」夢眠が言った。「しかしすべてただの言い伝えに過ぎないんだよ」　６（#６終り　#７に続く）

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「オレの妹がカリフなはずがない！」 #７

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「これまでの話はみんな、天馬家の代々の当主だけに一子相伝で口承で伝えられてきた、と言われているだけで、それを裏付ける文書はどこにもないんだ。確実に分かっているのは、私の曾祖父さんが明治政府に仕官するために上京し、天馬家が東京に移り住んでからのことだけなんだ」夢眠は話を続けた。１

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「お前たちの曾祖父さん、真人祖父さんは京都帝国大学で内藤湖南に師事して東洋史と西南アジア史を勉強したんだ。イスラーム趣味は真人祖父さんから始まったんだ。父さんの名前真筆はアラビア語のマフディ、兄さんの慈覇土はジハード、私の夢眠はムゥミンから、みんな真人祖父さんが付けたんだよ。」２

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「真人祖父さんは大学を卒業してから中国、中央アジア、中東諸国を遍歴し実業家として財をなしたらしい。その間にトルコでアブデュルレシト・イブラヒムと出会って汎イスラミズムに感化され、アブデュルレシトが１９３３年に来日して東京モスクの導師になると、協力して君府学院を創立したんだ」３

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「アブデュルレシトはオスマン帝国のカリフの下で団結することでイスラーム世界の過去の栄光を取り戻せると考えていたけれど、オスマン帝国が滅びた後もカリフ制再興の望みを捨てていなかった。それでカリフ制再興のために真人祖父さんと一緒に学校を作り、その願いをこめて君府学院と名付けたんだ」４

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「預言者ムハンマドの孫のハサンにまで遡る天馬家の系図は、生涯厨二病でアブデュルレシトの汎イスラミズムにかぶれていた真人祖父さんの妄想の産物なんだよ。でも父さんと兄さんはその妄想を信じていた。それで伝承者の兄さんが行方不明になった後、父さんは天馬家の歴史を私に語ってくれたんだ」５

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「オスマン・カリフ帝国が滅びた時、真人祖父さんは、思ったそうだ。世が乱れると東方から義なるカリフが現れる、というムハンマドの予言がいよいよ成就する。千年の長きにわたって日本に隠れ住み、待機してきた天馬家のやっと出番が来た。この手で大日本帝国を新しいカリフ帝国に変えてみせると」６

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「野蛮な物質主義の西洋による植民地支配からアジアの諸民族を解放しなければならない。そして日本民族の指導の下に、アジアの全ての民族が、東洋の深遠な精神文明、民族と宗教の自治を認める多元的イスラーム法に基づいて共存共栄する王道楽土。それが真人祖父さんが夢見た大日本カリフ帝国だった」７

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「厨二病の妄想だよ。もちろんそんなことは起こらなかった。大日本帝国は欧米に替わってアジア諸国を植民地にして支配したあげくに、無謀な戦争を引き起こし、惨めに敗北し、時代遅れのカリフ帝国が復活することもなかった。でも真人祖父さんは諦めなかった。」８

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「カリフ制を再興し、西洋の物質主義文明と戦い、自由と正義を実現する人材を養成するために、真理を教え伝えることはノブレス・オブリージュだ、とのイスラームの教えに則って、真人祖父さんは私財を全て注ぎ込んで全寮制学費無料の学校を作った。それが君府学院だ」９

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「お父さまが経営破綻させ、石造財閥に乗っ取られた君府学院ですね」 愛紗が冷静に口を挟んだ。 「…」 「なるほど、黒字に緑の三日月というあの悪趣味な校旗にはそういう由来があったのですね」 「……」 「真筆お祖父様の臨終の言葉、『カリフになれ』とはそういう意味だったのですね」１０

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「………」 １１ 　（#７終り #８に続く）

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題名が途中から 「オレの妹がカリフなはずがない」に変わっていました。深くお詫びいたします。なお、担当者は衣織によってケジメされました。

🌷無印 助兵衛(旧・林蟻)🌛 @forestnamal

カリフラノベがついに八紘一宇まで範疇に！！@caliphnovel 日本民族の指導の下に、アジアの全ての民族が、東洋の深遠な精神文明、民族と宗教の自治を認める多元的イスラーム法に基づいて共存共栄する王道楽土。それが真人祖父さんが夢見た大日本カリフ帝国

望之 @motijuki1017

カリフラノベ@caliphnovelの天馬家，系図書くとこんなふうになるのか↓ 【天馬家】真人ー真筆ー慈覇土 　　　　　　　　　　 L夢眠ー垂葉 　　　　　　　　　　　　 　 L愛紗