何も無いわけじゃない(柴田孝徳のゾンビサバイバル日記)

記憶喪失の青年がゾンビサバイバル。柴田孝徳(しばたたかのり)君が頑張って生き延びつつ色々と思い出していく、筈。 RPログというよりただのつい小説です、はい。
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柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

名前:柴田孝徳(しばたたかのり) 年齢:不明、20後半と見られる。 身長:173.4 体重:62.8 利き腕:右 性格:親切、甘い 備考:記憶喪失 http://t.co/STHsnYRXZJ

2013-06-14 23:07:52
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柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

今日の柴田孝徳:【戦闘】「あの“鍵”が必要なのだ! 持ってるんだろう!?」路地裏で、錯乱した軍服の中年が襲ってきた! 「クリアフラグ」を持っているなら8(なければ)のダメージ! http://t.co/25dYsVh8VC

2013-06-02 18:36:03
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

目が覚めたという意識すら、一瞬分からなかった。「ん……?」薄く目を開ける。視界は暗い、夜なのだろうか。思わず体を震わせて、後頭部の感触に顔を顰めた。酷く硬いし、冷たい。寝転がったままでは今の状況すら分からない。僕はゆっくりと体を起こそうとして、途端に感じた鈍い痛みに呻き声を上げた

2013-06-02 18:41:17
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

後頭部、そっと手をやってみると頭の周りには包帯が巻いてある。ずきずきと走る痛みからして、これは後ろから殴られたのだろうか。思い出そうとして、思考に何も浮かんでこないことに疑問を持った。「いや、待て」分からない、ぽっかりと抜け落ちた様に先に目を覚ますより前のことが思い出せない。

2013-06-02 18:46:58
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

「…僕は、誰だ?」まさかこんな下手な台詞を自分が言う羽目になるとは。記憶喪失、という言葉が浮かぶ。それは酷い冗句のようだ。「くそ…」今の僕には、自分の名前すら思い出せなかった。 その時。「おい、あんた」不意にかけられた声に、上半身を捻って振り向く。途端、

2013-06-02 18:53:08
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

ガキッ、と金属を素手で殴るような嫌な音がした。それが横面をぶん殴られたからした音だと理解するのに、少しかかった。耐え切れず、倒れこむ。「鍵だ、あの鍵。あれが…あれがあれば…」熱に魘された様な声音で、男の手が僕の体を弄っている。何かを探しているようだ。

2013-06-02 18:57:47
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

「あの」突然すぎたためか、痛みは無かった。「何を探しているんですか?」だから、そんな暢気な事が訊けたのだろう。「何をって、貴様には関係無い」「そうですか…」「ふん、何だ、何も持ってないじゃないか」男は残念そうな、焦りの見える口調でそう言って、立ち上がった。「ああ…あれが無いと…」

2013-06-02 19:01:53
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

後ろを向いた男を良く見ると、戦闘服らしきものを着ている。軍服に似ているが、暗くて良く分からない。何よりも不思議だったのは、男の服を見た僕がそのことを不思議に思うでもなく、当然の事として受け入れていることだった。「あの」男の背中に声をかける。「もう一つ良いですか?」

2013-06-02 19:04:44
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

男は些か面倒臭そうな表情で振り返った。「ここはどこですか?」男は僕のことを変なものを見る目で見下ろし、けっと鼻を鳴らして言った。「地獄だよ」

2013-06-02 19:06:21
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

記憶の欠片:「アイデンティティーの崩壊」 自分が分からないと言う恐怖は、誰しも味わいたくないものだ。同じく、過去の自分がまるで別人のように見えたり、全く理解出来なかったりしたら、それはどれほどの恐怖だろう。記憶喪失なんて非現実的状況に、僕は一層笑い出したくすらあった。

2013-06-02 19:12:16
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

男が去ってしまってから暫くして、いくらか意識を失っていたらしいが暫くして、ようやく体が動くようになってくると同時に酷い痛みが襲ってきた。まあ、当然の事とも言える。何とか起き上がり、狭い路地裏を出た。出て、直ぐのところで何かを踏みつけた。ぐちゃりと足下で柔らかなそれが水音を鳴らす。

2013-06-02 19:15:38
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

一瞬脳が理解を拒む。皮を全部剥いでひしゃげ人形の如く投げ捨てられ血を吐く物体に成り下がったそれから、僕はゆっくり足を退けた。理解出来ない、したくない。「ぅ、ぁああ」これは酷い悪夢だ、そうに違いない。僕はガチガチと鳴る歯を噛み締めて、その場から一目散に逃げ出した。振り返らなかった。

2013-06-02 19:19:56
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

前提そのいち:彼は記憶喪失である。 勝手に記憶の欠片パラメータ用意、これある程度たまらないと脱出も不可能ということで。

2013-06-02 19:23:52
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

【1日目】HP/96 食糧/100 所持:無し 記憶の欠片:1

2013-06-02 19:22:31
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

今日の柴田孝徳:【探索】わしの食糧は誰にも渡さんぞ! とわめきちらす元金持ちらしき中年男を発見。もし襲って奪うことにするなら、3のダメージを受け、食糧9を得る。いずれにせよ食糧:-3 http://t.co/25dYsVh8VC

2013-06-03 20:56:54
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

「っはぁっはぁ」どれくらい走っただろうか。苦しくなってきた息をなんとか整えて、傍の壁に手をつく。その場に座り込んでしまいたかったけれど、本能がそれを許さない。油断するな、警戒しろ。内なる声に従って、辺りを見回しつつ、必死で先のことを思い返す。足下の感触を思い出して、口元を押さえた

2013-06-03 20:57:37
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

分かるのは、この街は危険だということ。そしてどうやら僕は街から逃げる気が無いということ。「…嘘だろ」あんな恐ろしいものを見た後でそんなことが言えるのか。僕は何を以ってそう思ったのだろう。先の死体を見れば、ここが危険だということは直ぐに分かる。今まで人に会わなかったのも、恐らくは。

2013-06-03 20:57:53
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

だが分かっていても尚、逃げなくてはいけないという意識は芽生えない。寧ろまだここにいなくてはいけない気がする。ここがどんな所かも、僕にはまだ分からないのに。「ん?」ふと気配にそちらを向くと、男が地面に座り込んでいた。小太りの中年だろうか。服装や顔立ちを見るに裕福そうだ。

2013-06-03 20:58:07
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

男の目元には濃い隈が出来、酷く憔悴しているようだ。僕がそちらを見ると、その中年の男は小さく悲鳴を漏らして腹に抱えている物を大事そうに抱き寄せる。「な何を見ている、わわわしのし食糧は、わ渡さんぞぞ!」「…私は貴方の食糧を狙ってなんかしてませんよ。安心してください」

2013-06-03 20:58:30
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

言いながら辺りを警戒する。無意識の内に、ここで騒いでいて誰かが来る事を恐れているような、そんな感覚。誰かが、いやその何かが来れば、まずいことになると知っているが故に。「渡さん、誰にも、誰にも!」唾を飛ばして叫ぶ男に、やれやれと息を吐く。話が通じるような雰囲気ではない。

2013-06-03 20:58:38
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

喚く男の背後から、ぬっと白い腕が出てきた。一本だけ出てきたそれは酷く白く、死斑のような斑点と黒くこびり付いた何かが彩っている。在り得ない角度に曲がった指が、こきりと音を立てた。「…は、?」男が目を見開く。反射的に男の方に手を伸ばしたが一瞬遅く、白い手は男の顔面を確りと捉えた。

2013-06-03 20:58:47
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

「ぁ、ああああああ!!」あっと言う間に、男の姿は背後の闇に消えた。伸ばした手は空振り、代わりに男の持っていた荷物を掴んだ。ばきごきと闇から聞こえる異音に耳を塞ぎたい気持ちになりつつ、何歩か後ずさる。先の病院の壁のような、嫌悪感を催す白い腕が、何度も目蓋の裏でちらつく。

2013-06-03 20:58:58
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

どんと背に何かがぶつかった。疑問に思うより早く、身体が回避を選択する。身を翻して目を向けると、薄汚れた女が薄気味悪い程緩慢な動きで僕に向かって手を伸ばしていた。白い腕、おかしな動き、奈落の様な眼窩。どう見てもそれは生きた人間のそれではなく、まるで死人のようだった。「っっ!!」

2013-06-03 20:59:08
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

記憶の欠片:「生への冒涜」 “奴ら”が出てきた理由など分からない、誰も知らない。ただ死んだ人が目の前で動き出し、襲い掛かってくるという恐怖は計り知れない。ゾンビ共は意思などないように人間を襲う。食われたら、死ぬ。死んで、奴らの仲間入りだ。

2013-06-03 20:59:41
柴田孝徳@ゾンサバRP @TRY_RP1

ああそうだ、この街にはゾンビが蔓延っているんだった。だから人を見かけないんだ、そうだった。でも、どうして出てはいけないのだろう。何か……やらなきゃいけないことでもあったのだろうか。必死で走りながら、僕は思い出せない記憶に身震いした。

2013-06-03 20:59:59
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