福田進一が語る「今週初演する2つの作品について」

クラシックギター界の重鎮『福田進一』の連続ツイート第3弾。 2013/6/6(木)HAKUJU HALLで行われる『福田進一&エドゥアルド・フェルナンデス~ギター・ランドスケープ 2013~』 そこで初演される下記の2つの作品についてのお話です。 トーマス・アデス:ダークネス・ヴィジブル(ギター版日本初演) レオ・ブローウェル:旅人たちのソナタ(日本初演)
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福田 進一 @fukushinsanchan

壱)今週6日に東京・白寿ホールでエドゥアルド・フェルナンデスと久々のデュオ・リサイタルを開く。2曲の日本初演は今から楽しみだ。トーマス・アデスは、イギリスの作曲家・ピアニスト・指揮者。 イギリスが生んだ早熟の俊英作曲家という意味で、「ブリテンの再来」とする呼び声が高い。

2013-06-02 11:50:05
福田 進一 @fukushinsanchan

弐)90年代初頭に書かれたアデスのピアノ曲「ダークネス・ヴィジブル」はイギリス・ルネサンス期のリュート奏者ダウランド(1563-1626)の歌曲集第4巻巡礼の慰めからの「私を暗闇に住まわせて」の変容。ピアニシモで、不気味にうごめくトレモロと突き刺すようなフォルテが交錯する。

2013-06-02 11:50:53
福田 進一 @fukushinsanchan

参)聴いていると、徐々にダウランドの幻影が浮かび上がってくる。フェルナンデスの2つのギターへの編曲は作曲者の許可を得て、2011年10月にブラジル・サンパウロで行われた「ブローウェル国際フェスティバル」の特別イベントとして国立図書館にて世界初演された。

2013-06-02 11:51:30
福田 進一 @fukushinsanchan

肆)ブローウェルによって約10年程前に書かれた最初の「2つのギターのためのソナタ」はギリシャの名手コスタス・コチョリスに献呈されたが、初演のパートナーが見つからず、長らくお蔵入りとなっていたもの。ブローウェル本人の依頼により先述のフェスティバルにおいて、我々によって世界初演された

2013-06-02 11:53:02
福田 進一 @fukushinsanchan

伍)タイトル「旅人たちの〜」が表す通り、4つの国々を巡るファンタジックなソナタである。第1楽章は共に寄り添い、ゆっくり歩むような8分音符の刻み。北欧風の寂しくも美しい旋律は、突然荒々しいアルペジオの騒音にかき消される。さらに歩み続けると今度は呪文のようなカデンツァが始まる。

2013-06-02 11:53:32
福田 進一 @fukushinsanchan

陸)曲はいつしかギリシャ聖教のコラールのような序奏を経て、第2楽章のロマンティックなジャズ・バラード風の歌へと変貌する。長年、映画音楽にたずさわったブローウェルらしい瞬間。ここでも例のアルペジオが流れを妨げるが、再び静かなジャズ・バラードに戻り消えてゆく。

2013-06-02 11:53:55
福田 進一 @fukushinsanchan

質)突然2つのギターは絡み合い、無機的なアルペジオの連鎖が始まるが、その片方のギターはいつしかバッハの「小プレリュード BWV999」に変貌し、もう片方はキューバのリズムを刻み始める。「ライプツィヒにバッハを訪ねる」と題されたスケルツォの第3楽章である。

2013-06-02 11:54:18
福田 進一 @fukushinsanchan

捌)そして最後はカリブ海への帰還。第4楽章は、名曲ガンタナメラに代表されるキューバのリズム”グアヒラ”による壮大なロンド形式の音楽。踊りの間に挿入されるトッカータは前の3つの楽章と微妙な相関関係を持つ。曲尾、限りなく明るいコーダに突入。極限までの技巧を駆使して華麗に駆け抜ける。

2013-06-02 11:55:22
福田 進一 @fukushinsanchan

玖)第3回目の連続ツィートは「今週初演する2つの作品について」でした。ブローウェルの「旅人たちのソナタ」は物凄い難曲ですが、未来のスタンダードになりうる名作です。是非聴いて下さい!東京・白寿ホールにて6月6日19時開演!http://t.co/yydXrdh9FH

2013-06-02 11:57:44