童話症候群

生方一寛 @na_ma3

「ようこそ！　……いやいや、そんな顔をしないでくれ。確かに私の格好はヒトとは違うかもしれないが、君とてもう結構なものだぜ。ここに来るということはそういうことだ……改めて、ようこそAvaronへ。君も知っての通り、ここは幻想に喰われた死者の国。デッドマンズ・ワンダーランドだ」

生方一寛 @na_ma3

「童話症候群。それが私達がここで暮らすことになった原因であることは君も知ってのとおり。つまりここは、童話に呑まれた者たちの御伽の国さ。私達は死者として、自分の物語が終わるまでこの島の中で暮らすことになる……それほど悪い話ではないよ。街を歩くにも遠慮は要らないし、意外に快適だ」

生方一寛 @na_ma3

「この街のルールはおいおい知ってもらうとして、まずは棺桶を……住居のことだが……決めるべきかな。とは言え、まだ空きはどこにでもある。好きな場所に住むといい。配給で暮らせないことはないが、退屈がいやなら仕事を探すことだ。知りたいことがあれば棺桶を決めた後また私のところに来るといい」

生方一寛 @na_ma3

童話症候群【フェアリーテイル・シンドローム】　発症者の身体・精神が幻想に浸食される一連の症状を総合して称する。潜伏期間は不明だが、発症すれば概ね３か月～２年程度で幻想に浸食され、最終的には妖精化する、とされる。なお妖精化したものを生者とするか死者とするかは国によって異なる。

生方一寛 @na_ma3

類型【archetype】 童話症候群で発現する症状を大枠で分類したもの。現在かなり人口に膾炙した言葉ではあるが、幅広い症例をまとめているため、研究が進むにつれ分離・統合・新設を繰り返してきた概念であり、一般的に知られているものと学術的なものには相当の差異があるとされる。

生方一寛 @na_ma3

幻想【reverie】 本来世界に存在し得ない現象の総称。無生物にのみ偶発的に発現し、あり得ないものをあり得させる超常現象とされていた。空飛ぶ城のように明らかなものから、隠れ里のようにその存在が認知されづらいものまで多岐に亘る。童話症候群により生物にも発現することが確認された。

生方一寛 @na_ma3

死者（※）【Fairy】 童話症候群による妖精化が進み、最終段階まで至ったもの。幻想管理法の運用により幻想となった人間は自然人ではないという解釈の元、戸籍上は死亡したものとなる。財産権は議論中。なお、各種身分証明書は没収されるが死者（※）であることを証明するカードが発行される。

生方一寛 @na_ma3

破滅【Catastrophe】 童話症候群による死者（※）に訪れる第二の死。寿命。妖精化の完了後、徐々に存在そのものが幻想と同一化をはじめ、最終的には総身がこの世に有り得からざるものとなって消失する。稀に消失以前に自我を喪い凶行に走るものもおり、その場合少なくない被害が出る。

生方一寛 @na_ma3

幻想不感症【Realist】 幻想に対し完全抵抗力を持つ体質。人口比率としては高くないが、本屋や防疫部隊には一定数存在する。なお幻想不感症体質の持ち主は童話症候群にはならないが、万能薬の体液で死亡した例もあり、結果生成物に抵抗力があるわけではない。

生方一寛 @na_ma3

妖精狩り【fairy‐hunt】 童話症候群発見後、伝染病だと考えられたことにより起こった発現者の排斥運動。死者の国が作られた直後がもっとも盛んで、この時期には童話症候群とは無関係のものも死者の国に送られた疑いがある。弔問客の出現により、現在は理不尽な妖精狩りはないとされる。

生方一寛 @na_ma3

詠み人知らず【Anonymous】 童話症候群の症例のうち、類型化されていないものをまとめて呼ぶ場合の呼称。万能薬など、当初は詠み人知らずとされていたが複数例確認されることで類型化されたものも多い。一言に詠み人知らずと言っても、些細なものから強力な異能を得るものまで様々である。

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髪長姫【Arachne】 童話症候群の一類型。毛髪をはじめとする体毛が変質する症状。変質後の特性は個人ごとに金属を切断するほどの強度や電波の吸収など様々な例があるが、多くは現代の工業製品を凌駕するものであり新素材のサンプルとして研究されている。発症以前とは色が変わることも多い。

生方一寛 @na_ma3

貴石眼【basilisk】 童話症候群の一類型。額に宝石のような輝きと色を持つ物質が形成される。これは一種の感覚器官であり、周囲の生物の感情を色で認識することができる。この感覚は遮断ができず、この類型が発現した者は独りで住むことが多い。故に孤独なる王、バジリスクの名で呼ばれる。

生方一寛 @na_ma3

鵺型【Chimera】 童話症候群において２ケ以上の類型を発現すること。またその患者。童話症候群では珍しいことではなく、また類型の分類についてはどこまでが単類型でどこからが鵺型に分類されるのか微妙な部分もあるため暫定的な意味合いが強い。一般に、超越者は鵺型にならない、と言われる。

生方一寛 @na_ma3

幻想流体【Cheshire Cat】 童話症候群の希少類型。肉体が幻想に浸食されるのではなく幻想の中に溶解する症状、またその発症者。妖精化が完了すると自己認識が可能な限りどこにでも存在できる異能を得るが、幻想へ流出する中で自我を保てるものは極少数。自我が崩壊した場合消滅する。

生方一寛 @na_ma3

零時の鐘【Cinderella】 童話症候群の希少類型。童話症候群による出来事の数々を、名前の由来となった童話に登場する零時の鐘のように消し去る能力を得る。死者（※）の定義を揺るがすため、公式には本類型は「存在しない」ことになっている。めでたしめでたし【Happy-End】とも。

生方一寛 @na_ma3

超越者【Dragon】 童話症候群の希少類型。厳密には独自の類型ではなく、すべての類型において妖精化の度合いが甚だしく、幻想浸食が大きい場合に使われる言葉。異能や身体の変化が他と比べ大幅に強化され、（もとより幻想浸食による異能は超人的だが）超越者としか呼びようがないものを指す。

生方一寛 @na_ma3

時忘れ【Dryad】 童話症候群の一類型。この類型を発現すると、肉体の老化がほぼ停止し、その影響か生活サイクルそのものも大幅に変更される（72時間の覚醒のあと48時間睡眠を取る、などの例が確認されている）。遺伝子内のテロメアが幻想に浸食される症状と考えられる。【elf】とも。

生方一寛 @na_ma3

弔問客【Dullahan】 童話症候群の一類型。外見的変化はほぼないが、主に首の周囲に幻想を知覚する（曖昧だがそうとしか表現できないらしい）器官が発生し、他者の幻想浸食度を認識する異能を得る。現在、童話症候群罹患者が死者（※）になるかどうかの最終判断は専ら彼らに任されている。

生方一寛 @na_ma3

妖精化【fairize】 童話症候群の進行に伴って身体・精神に現れる形質変化の総称。頻出類型として規模は様々だが身体の肥大・縮小があり、これが童話の登場人物である妖精のようである、ということでこの名が付けられた。ただし現在では童話症候群には様々な類型が含まれることが判明している。

生方一寛 @na_ma3

放浪者【Gulliver】 童話症候群の一類型。厳密には単独類型ではなく鵺化の一種であると考えられる。周期的に幾つかの類型を変遷する症例で、ある類型の発現中は別の類型は抑え込まれる。身体変化系の類型であっても別の類型の発現中は元に戻るため、生活は非常に不便。【Sinbad】とも。

生方一寛 @na_ma3

銀喰らい【Kobold】 童話症候群の一類型で、体表の一部に金属質の鱗が生成される症状、またその症状を持つ者のこと。その症状のため定期的に金属を摂取する必要があり、金属を溶かす唾液を持つ。なお鱗は竜銀、ミスリルと呼ばれる現在の技術では作製不能な物質であり、高額で取引される。