童話症候群

生方一寛 @na_ma3

波読み【Little Mermaid】 童話症候群の一類型。聴覚、声帯が幻想に浸食され発達、可聴域が拡大し、いわゆる超音波を発する・聞き取ることができる異能を得る。また、多くの場合心肺機能が強化され、運動能力が上昇する。水棲生物様の異貌を伴う鵺化が頻出する類型でもある。

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異貌【lycanthropy】 童話症候群の一類型。お伽話の怪物にあるように、人間以外の動物を想起させる器官を獲得する症状。また、それを発症した人々。この類型による妖精化は急速かつ不可逆的に進行し、甚だしい例では下半身がまるごと変化したケースもある。医学的にいう人狼症とは異なる。

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万能薬【Mandragora】 童話症候群の希少類型で、世界でも数例しか確認されていない。血液をはじめとする体液が幻想、生物関わらず自身以外の総てを死に至らしめる毒となる症例。死こそは万病に通じる霊薬であり、すべてに安息を与える祝福である、という皮肉から付けられた名である。

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熱の悪魔【Northwind&Sun】 童話症候群の一類型。幻想を媒介とし、自身と対象物とで熱交換を行うことで対象物の温度を上下させる異能を得る。本類型は外見的変化が起こらないため当初は超能力者として扱われることもあったが、弔問客の存在によって童話症候群であることが判明した。

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誘い歌【Siren】 童話症候群の一類型。波読みの亜種とも。声帯から肺、聴覚の変異を伴う。意識としては認識できないが脳は認識する（とされる）周波数の声を発することが可能になる。サブリミナル効果を警戒されているが、慣れによる抵抗性獲得もあるため、ほとんどの場合実際の効果はない。

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蘭奢待【Snowwhite】 童話症候群の一類型。皮膚、特に汗腺が幻想に浸食される症状で、汗腺から特殊なフェロモンを発生させるようになる。フェロモンの効果は様々だが、周囲の人間の警戒心を低下させるなど主に自身の生存に有効な効果を持つ。副次効果として肌の色の変化を伴う。

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擬生体【Pinocchio】 童話症候群の一類型。肉体が接触の多い無生物を自己の延長と認識し、幻想を媒介として神経系を生成する症状。この類型による妖精化が進行すると、義肢であろうと損傷が再生するようになる。童話症候群の発症以前から義肢・義眼などを装着していたものに発現が多い。

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勝利の行進【Tortoise】 童話症候群の一類型。意識的に自己認識としての時間を引き延ばし、その中を自在に動くことが出来るようになる異能を得るが、身体への負荷が大きく使用は１日数分～数十分が限度。外見変化は少ない。「兎と亀」「アキレスと亀」からTortoiseの名で呼ばれる。

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治癒者【Unicorn】 童話症候群の希少類型。頭部に角様の器官が発生する。本類型では童話症候群の幻想浸食速度が遅くなることが判っており、実験的に削りとった角様器官を摂取した患者にも同様の効果があった。治癒者と呼ばれるが浸食速度が遅くなるだけであり、実際に治癒するわけではない。

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蒼血症【Vampire】 童話症候群の一類型。心臓循環系が幻想に浸食される症状で、血液が徐々に青くなり脈拍も低下する。妖精化が完了すると心臓が停止した状態で活動可能となる。幻想により生命を維持しているらしく、他の童話症候群発症者からの血液等の摂取により幻想の補給が可能とされる。

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死者の国【Avalon】 冥界、楽園とも呼ばれる。感染症の可能性が指摘される童話症候群による死者（※）を隔離するために作られた人工島。行政上は我が国に属するが、当然ながら公的には無人島。内部は死者（※）により自治が行なわれており、死者（※）以外の入島は禁止されている。

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本棚【bookshelf】 死者の国の地区を呼ぶ俗称。１の本棚、通称“哲学”から歴史、社会、自然、技術、産業、芸術、言語、と続き９の本棚、通称“文学”まで。円卓議会を０の本棚、通称“総記”と呼ぶ場合もある。誤解されがちだが、住人である死者（※）の職業と地区の通称は特に関係ない。

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１の本棚【1st Shelf】 死者の国で最初に造成された地区。外との連絡口、地獄門が存在し、なんらかの理由で公式に死者の国を訪れた者は必ず１の本棚に滞在することとなっている。他の地区に比べ"棺桶"も多く整備が行き届いているが、防疫部隊の看視も厳しいため好んで住むものは少ない。

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２の本棚【2nd shelf】 歴史街。１の本棚造成後、棺桶と配給のみでは生活が成り立たないことに気づいた死者（※）たちが造った地区。死者の国最初の病院、飲食店、非合法郵便屋等はすべてこの地区に存在する。当初は密輸入品に頼らざるを得なかったため、全体として本屋との繋がりが強い。

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３の本棚【3rd Shelf】 社会街。１の本棚の次に造成された棺桶街。３の本棚が造成されるころには自治組織としての円卓の騎士の原型が出来ており、計画は死者（※）たちの自主性に任された部分が強い。そのため、外から持ち込んだ映画を上映する劇場や風俗街などの娯楽施設も存在する。

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４の本棚【4th shelf】 自然街。食糧生産施設や発電所が存在する。これらの施設は造成当初は島外から技術者が来て運転していたが、死者の国の人口が増えるに従い死者（※）たちに譲られた。そのため、取り壊された橋の遺構がある。なお、これらの施設だけでは死者の国全体の需要は賄えない。

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５の本棚【5th shelf】 技術街、デンキ街とも呼ばれる雑多な賑わいを見せる地区。シンボルは電波塔。常時設置型の機械類･生活必需品の商店や粗雑な作りの棺桶が所狭しと並び、迷路のようになっている。その造りから人間とかけ離れた姿の死者（※）が人目を忍んで暮すことも多い。

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６の本棚【6th Shelf】 産業街。外国籍の死者（※）が多い異国情緒溢れる地区。我が国では国内で妖精化が完了した者は元の国籍を問わず死者（※）として扱われるため、そうして死者の国に送られた外国人が集まっている。外人墓地、博覧街とも。なお、本来生活する本棚は国籍に関わらず自由。

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７の本棚【7th shelf】 芸術街とも呼ばれる。現在死者の国と呼ばれる人工島が造成された当初、最初期に作られた遊園地がそのまま廃墟として残っており、７の本棚の住人の多くはこの廃墟を改装して居住している。広場では死者の国最大のマーケット、“古本市”が定期的に開催されている。

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８の本棚【8th Shelf】 言語街。水路が縦横無尽に張り巡らされた運河の街のような景観が広がる。主に水棲生物系の異貌を発現してしまった死者（※）が暮す地区。本屋たちの間では、８の本棚を経由するルートは４の本棚にあるネズミ穴と並んで効率のよい密輸入ルートとして知られている。

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９の本棚【9th shelf】 文学街。ほぼ完成形といっていい他の地区とは違い、現在も埋め立てと増殖が進む死者の国最新にして最後の地区。開発地区らしくスラムと高級棺桶が混在する。相当数の行間の子が生活していると見られ、中でも白紙同盟と呼ばれるコミュニティが最大勢力であるとされる。

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円卓の騎士【Knights of the Round】 九名の地区代表によって構成される死者の国の自治機関で、意思決定は全員出席の多数決を基本とする。円卓の騎士の名を持ちながら構成員が九名なのは伝説上のアヴァロンの統治者に肖ったものとされ、その名をとって九姉妹とも呼ばれる。

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墓守【Undertaker】 円卓議会によって運営される死者の国の自治警察組織。島全体が墓所であるとも言える死者の国においてその治安を維持するものとして墓守の名で呼ばれる。なお、犯罪行為を行った者も取り締まる者も行政上は死亡しているため、独自に定められた処罰規定が採用されている。

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地獄門【The Gate】 唯一外界と死者の国とを繋ぐ橋。第一の本棚、“哲学”に存在する。貿易と防疫を同時に行う場所であるため、口さがない者の間ではボウエキ港、とも呼ばれる。両端に看視所を置き、道路、貨物鉄道用線路、ライフライン確保用スペースの概ね三層構造となっている。