- simanezumi88_n
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(思いつくまま突撃しておりますので、お見苦しいところがございますでしょうが、生暖かい目で見守っていただければ幸いでございます)
2013-06-06 22:08:41「………ハァーッ、ハァーッ」大柄のスモトリが緊張感を隠せずに、巨大なオットセイのようにわなないていた。 2
2013-06-06 22:09:30ドヒョウ・リングに上がる前の控え室。来るべき戦いの前の神聖なる静寂。フクスケ人形がこちらに笑顔を見せている。不如帰のショドー。 3
2013-06-06 22:11:31興行に参戦する彼らスモトリは、神聖にして至高なる中央リーグ「リキシ」で栄華と欲望を満たすべく夜な夜な殺伐とした戦いに挑む。 4
2013-06-06 22:13:11リョウゴクのコロシアムでの戦いにはリキシ以外にもピラミッドじみたいくつもの階級がある。すなわち、ジュリョー、マクシタ、サンダン、ジョニダン、ジョノクチである。 5
2013-06-06 22:15:32勝ち上がれない者は早々に廃業となり、ネオタイサマの奥深い原生林へと放逐される。決断的な弱肉強食こそがここでの摂理。ショッギョムッジョ。 6
2013-06-06 22:17:55今宵、初めてのマクシタでの戦いを目前にしたスモトリであるマルダイズは、荒い息を吐きながら仄暗い明かりの下でアナウンスを待ち受けていた。 7
2013-06-06 22:19:43永遠とも思える間延びした時間の中。行き場を失った蛾が電灯に吸い寄せられる。「マクシタ、第1試合です」無機質なマイコ合成音声が響き渡る。 8
2013-06-06 22:22:06「やるんだ。やってやるんだ。やるしかねぇんだ。…ドッソイ!」マルダイズは頬にピシャリと平手を打ち付け、のっそりと立ち上がった。 9
2013-06-06 22:23:17重金属酸性雨のふりしきる、喧騒と怒号に包まれ混沌に彩られた街、ネオサイタマ…。極彩色で扇情的なネオンが並び、決して眠ることはない。 12
2013-06-06 22:26:13あらゆる物が雑多に吐き出され、狩り出され、消費されるマッポーじみたいつもの深夜の光景。わずかに薄暗い路地裏の口論もかき消されていく。 13
2013-06-06 22:28:08ヨコマキとエヒサ、二人のヨタモノが、吐き出されたおこぼれに預かろうと、当て所なく喧騒の夜を彷徨っていた。 14
2013-06-06 22:29:57二人がヨタモノになったのはそう遠い過去ではない。忌々しいセンタ試験に脱落し、メガコーポの新入社員への道が閉ざされた瞬間であった。 15
2013-06-06 22:32:054月を迎え、絶望と衝動のまま家を飛び出したヨタモノ二人は、そのまま無軌道な衛星のように乾いた人生を消費し始めた。 16
2013-06-06 22:34:04情熱を失った二人が共に暮らすようになった理由はさして深いものではない。二人の方が楽だから。一人よりは気をつけて生きていけるだろう…。 17
2013-06-06 22:35:16だがいつまで?バイトもせずにゴミ漁り、空き巣、スリ、とケチな犯罪を繰り返すようになった二人は、必然的に次第に思考が磨り減っていった。 18
2013-06-06 22:36:46「どうすんだよ」「しらねェよ、いいからそこのゴミ箱から食い物探そうぜ」「クソッ、クソッ、なんでこうなっちまったんだよ」「うるせェよ!」 19
2013-06-06 22:38:08路地裏で、二人のヨタモノは傍らのゴミ箱を漁り出す。「…クソッ、ガラクタばかりだ」「しけてんな」「ダメだ、ダメだ」「なあ、どうするんだ」 20
2013-06-06 22:39:31ヨコマキが石ころを蹴飛ばしながら忌々しげにバイオネズミの走り去った路地裏を見渡す。「お、ちょっとまて、壁に何かある…?アイエッ、血…?」 21
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