毎年6月第3日曜なら『ツイノベ祭』 2013/06/16お題「父」
5月
「近づいたらこの女の命はない」「やめろ!お前は未来から来たんだろう?その人はお前の母親だ。殺すと自分も消滅するぞ」僕の言葉にひるんだ犯人は、その瞬間逮捕された。開放された女性が怯える。「私の未来の子どもがやがて犯罪者に?」「未来は変わりますよ。僕が父親になれば」 #twnovel
2013-05-17 18:53:12「私もうすぐここで死ぬの」信号待ちをしていた僕は、少女の言葉に耳を疑う。数日後、その交差点で車が電柱に激突した。……20年後、僕は妻に言った。「お父さんが過去を変えて君を守ったんだね。でもなぜ君はあのとき事故のことを?」「不思議ね。未来の記憶が残っていたなんて」 #twnovel
2013-05-20 14:10:23欲しかったはずのものは手に入れた瞬間に色あせる。いつもそうだ。だから私は子供が生まれるのを恐れた。父親になれる気がしなかった。日々お腹が大きくなる妻が疎ましく、予定日は絶望の日に思えた。だが赤子を抱いた瞬間私は悟った。本当に欲しいものとは自分では気付けないのだと #twnovel
2013-05-21 17:38:34父の書斎は、書斎という名に似つかわしくない、がらくたばかりが詰め込まれている。本なんて数えるぐらいしかないのに、父は絶対にこの部屋を書斎と呼んでいる。置かれている物も、正直どれほどの値かもわからない。書斎というよりは、秘密基地の方が正しいのだろう。 #twnovel
2013-05-21 20:02:47#twnovel 俺の父親は、肩叩き器に殺された。 そいつが今目の前にいる。 「おのれ、かたたたきき、ちちのかたたたき、いや、ちちのかたききき、ちゃう、ちちのかたたたた、かたたたきききき。かたきのかたたたた……」
2013-05-24 15:50:06一欠片の骨を隠す。祖母は言った。死んだら骨を少しでいいから庭にそっと埋めとくれ。#twnovel 白い骨に土をかけると、サワ。揺れる向日葵。それから祖母と軍服姿の見知らぬ男。父に似ていると思った。祖父とは似てない僕の父。やがて二人は手を繋ぎ、仲睦まじく消えた。向日葵と謎を残して。
2013-05-25 12:02:47父は私を認めてくれなかった。テストで満点を取っても、絵で賞を貰っても。彼は何かと難癖をつけてくる。周りが手放しで褒めるなか、それは愛ゆえの言葉のように思えた。 #twnovel その考えが崩れ去ったのは、息子の賞状が部屋から溢れた時。何でもそつなくこなすあの子が憎い。単純な嫉妬。
2013-05-25 16:46:11#twnovel 丑三つ時に父を会社まで送ってきたが、いまいち現実感がない。国道のナトリウムランプにうっとりしたからか、果樹園に潜むローソンが地味に幻想的に見えたからか。ナツメ球を買い忘れて真っ暗な部屋、一日の記憶を整理しながら、街灯のない裏道に消えた父の背ばかり思い出している。
2013-05-26 04:19:02#twnovel 「ねぇ、どうしてパパと結婚したの?キュウキョクのダメ男なのに」眠る前。娘が急に問うた。「…ダメな所も全部含めて許せたからかな」この人は駄目だと思いながらも惹かれ。守ってあげたいと思ってしまった。「大きくなったら分かるわ」首を傾げる娘に、私は苦笑を禁じえなかった
2013-05-26 11:12:31ギリシャ語で、水の器と言うのだよ。迎えに来た父の大きな傘の中で、そう教えられた。薄青の花は、泣き出す前の空の色。あの雨は暖かかった。小さくなった父の背中はまだ、私に何かを教えようとしている。 #twnovel
2013-05-26 16:34:58庭の蒸気機関車に興味があるの? 小さいけれど人を乗せて動く本格的なものだよ。でもね、それはパパの大切なものなんだ。……そんなに乗りたい? 今はママもいないしチャンスかな。それで銀河鉄道の夜みたいに君の魂をはるかな国に届けてあげることが出来れば僕も嬉しいんだけどね。#twnovel
2013-05-29 07:57:06#twnovel 壊れた硝子を掻き集めるように、その人は花びらを一つ一つ丁寧に拾った。死者を悼む為の白い花びらは無残に千切れて、僕の足元にまで飛んできた。 「これは、父に…」そう言って拾い上げると、その人は瞠目した後深々と頭を下げた。愛人だと噂されるその人は、とても美しい人だった
2013-05-29 15:51:35どうしても逆上がりが出来なかった。 だから特訓する事にした。誰にも見つからないよう、お母さん達もすっかり寝てしまった後に。こっそり家を抜けて、近くの公園で。 が、どうにもうまくいかない。 めげかけた時、背中を叩かれた。 「しっかりしろ」 お父さんの声だった。 #twnovel
2013-05-30 22:19:326月
#twnovel お気に入りのセレクトショップで、父の日のプレゼントをさがす。。。すっごくステキなブートニエールを発見!!普段使いしたら、絶対お洒落~!!ああ、似合う!!お兄ちゃんに・・・!!なんで『兄の日』ってないのかしら??真性のブラコン。。。父にはウナギでも贈っとこ。
2013-06-03 21:46:43一生のうち、名前を呼ばれる回数の上限は決まっているらしい。呼び止める時、囁く時、抱き合う時。わたしがあんまり彼の名を呼ぶので、彼のはじき上限に達するよ、と夢でお告げがありました。もう名前を呼んでもらえないとは可哀想に。彼はもうじきお父さんと呼ばれるのです。 #twnovel
2013-06-05 11:12:12#twnovel 不在着信が一件。実家からだ。留守電メッセージは入っていない。いよいよ来るべき時が来たのか。元気だった頃の父親の顔と母親の泣きじゃくる顏が浮かび、心臓の鼓動が早くなる。ふうっ。深呼吸をして電話しようとしたらSMSが入ってきた。『ついのべかさくおめでとう、ちちより』
2013-06-07 23:10:08#twnovel 正直者だとか言われているが結果的にそういう選択になっただけで別に正直な訳ではない。あの選択肢から最善のものを選んだに過ぎない。これは父の形見であり私自身何十年も使い込んできた。壊れる度、直し続けてきた。その愛着を捨てられはしない。それに……私は木こりなのだ。
2013-06-08 13:05:16近頃はツイてない。信じてないけど、冷やかしのつもりで占いの館に入る。適当な部屋を選ぶと、前世を見て現在の運を言い当てる人らしい。ツキが無いと伝えると、占い師は目を瞑り何かを唱えた。かっと目を開き「あなたは前世で」睨んでいる。「私の父の仇。覚悟っ」ツイているのか。 #twnovel
2013-06-09 01:10:14#twnovel 七回忌の法要に向かう前に入った馴染みの喫茶店に父がいたので言ってやった。「少し酒控えろよ。早死にするぞ」頷く父。よし。コーヒーを飲み干して店を出た。さて、七回忌……いや、三回忌だ。父の。少しは俺の言うこと聞いてくれたのかな。その喫茶店は「カフェ・タイムマシン」。
2013-06-10 12:57:44「何作ってるの?」「ん?これはバスケットゴールだ」タオルで汗を拭うお父ちゃんが誇らしげに答えた。「ボールをこうやってな」シュッ。ボールは穴に吸い込まれる。「凄い!」その言葉にお父ちゃんは嬉しそうに「お前もやるか?」と言った。懐かしい思い出。しかし父はもういない。 #twnovel
2013-06-10 23:27:29お父さんお元気ですか? 江戸では毎日のように雨が続いています。ツユと言うそうです。 そういえばこないだ銀ちんが花がらの傘を買ってくれました。うれしくなんかないけれど、仕方ないからツユが明けるまで毎日使ってやろうと思っています。 神楽 #twnovel
2013-06-11 23:45:24花咲く地下道をスキップで駆け抜ける。父親の書斎から漂う甘いケーキの香りで、もうすぐ夕食の時間だと分かる。早く帰らないと、タクシーにさらわれてしまうかもしれない。夕暮れの山並みは朗らかな笑い声を上げて大きなノビをした。 #twnovel
2013-06-12 23:11:19#twnovel 夢の世界は夜とともに自然に消える。それでも、じっとしていられなくて、現実へ歩いて帰りたくなる。振り返ると、記憶を寄せ集めた街が曖昧に明滅している。鐘の音が近くも遠くもない方角から聞こえた。暁鐘、明けの鐘ですよ、と消えかけの住人が教えてくれた。夢の中での父だった。
2013-06-14 02:45:30