狸――爆発

狸シリーズえーっと、第1弾
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だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【1】多分一番予想していなかったのが本人であろう。適当に呟いたその言葉が、狸をからかおうと思ったその言葉が、相応に重い意味を持つとは。その、重責を理解していなかったのだから。

2010-09-20 01:34:07
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【2】狸は、『風薬』の一件の全てを見ていた。皆に呼ばれ、この街に戻ってきた、小さな小さな欠片。それをアトロが抱き上げて、ジョリに手渡して。――そしてジョリが駆け出した。その背を、見送った。

2010-09-20 01:35:46
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【3】その瞬間、かちかち山の主に出来ることは何かあるだろうか、と考えた。隣を歩くアトロが、「うーん、何かあるかなぁ」前髪センサーを揺らしながら思案する。公園の隅、紫に地球儀装備の男が、「男なら、バーニング!それ、ここ!オモンバーン!というか燃えろ!」とかを叫んでいた。

2010-09-20 01:38:22
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【4】もうネタでも何でもないじゃないの、と白い目で狸が眺める中、アトロが目を輝かせて、「それだ!それが良いと思うのよ!」狸の敵が、まず、ここに居た。

2010-09-20 01:39:16
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【5】狸は野生の狸だった。最近、少女(だったのか?)と共に過ごして少しばかり勘が鈍ったとは言え、やはり野山のケモノだ。だから、一目散に逃げることを選択した。その先は、――。

2010-09-20 01:40:41
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【6】勿論、彼が主を勤める山。――かちかち山だった。そこで待っていたのは狐やヤタや、他にも子狐のまさゆきとイケチョ、それから猫のニナ・メルトに、栗のイガのウニ・モリイエなんかも居た。…あ、あと角の取れたユニコーンモドキの柊とか。

2010-09-20 01:42:52
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【7】ヒイラギは、早速狸に懇願する。「角、取り戻したいんですよね。誰だったかな。えーっと確かトールとか言う変なヤツ。アイツが引っこ抜いて、それっきり」それは結構死活もんだいで、ヒイラギのアイデンテテーにも関わる問題だ、と狸は思った。だから、「任せておきなさい、この狸さんに!」

2010-09-20 01:45:15
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【8】そんな経緯もあり、狸は再度街に降りていた。知り合いはそう多くはない。山の主でこそあれ、街ではただの小動物でしかない。だから、とりあえず数少ない知り合いを探すことにした。…そして運が良かったのか。即座に頼りになる人を見つけた。「あ、なおりセンセー!」

2010-09-20 01:46:33
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【9】狸は、なおりセンセーに簡単に事情を説明した。センセーは真摯に狸の言葉を聴き、そして、端的に告げた。「簡単なことですね。件の、トールさん?を探せば良いんです。しかし、」となおりセンセーは言葉を区切った。「そこには、ちょっとした問題があります」

2010-09-20 01:48:46
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【10】「この街は広くって、そうですね、時間線上で呼びかけるって手も使えますが、まぁ、それでも本人がここを見ているかどうかが分からない。――それでも、呼びかけて見ますか?やる価値はあると思いますが?」狸は、一も二も無く、頷いた。

2010-09-20 01:50:30
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【11】「まぁ、この時間ですからねぇ。期待はせずに。さん、ハイッ! トールさああああああん!?聞こえてるなら返事してえええええええ!」それは、狸の必死の叫びだった。

2010-09-20 01:52:05
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【12】「あぁ、有難い。誰かが、彼に届くように中継してくれてますね?」なおりセンセーは、冷静に現状を分析しつつ、だが、まぁ、この時間ですし。普通の方は眠ってらっしゃるんじゃないでしょうかねぇ?」と、そう事実を突き付けた。

2010-09-20 01:55:13
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【13】「あ、ちなみに私も結構限界なんですが。…寝ても良いかしら?」なおりセンセーの案外冷たい言葉に狸は「たぬきゅーぅ…」と弱々しげに鳴いた。

2010-09-20 01:56:49
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【14】「あー、まぁ、最終手段と言いますか。トールさんの家に直接大砲で射出するっていう手はありますがね。ほら、良い夢の主が最近使い出してる、アレです。」狸はそれを聞いて、何となく嫌な予感がした。だが、「背に腹は変えられない。そうではなくて?」狸は、頷かざるを得なかった。

2010-09-20 01:58:44
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【15】「発射角良し、火薬の分量は、お好みで。風向、気圧、コリオリ力は既に考慮に。後は、射出タイミング。さぁ、なおりセンセー、ご命令を」そう指示を仰ぐのは、ソウジョウ中隊第1小隊長のくれないだ。「うーん、コリオリとか今一わかんないけど、やちゃえば?」

2010-09-20 02:01:13
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【16】発射ぁ!狸は今、知りに火が着きつつ、それでも空を舞っていた。その様子を見た人々は、夜空に流れ星が流れたものと勘違いしたことだろう。その程度には、狸の空を飛ぶ様は、印象的だった。

2010-09-20 02:02:57
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【17】「んで、えーっと。空飛ぶのは慣れてるんですが。ちょっとお尻に火が着いてるとか予想外ですし、あと、これ、どこに落ちるんですの!?」狸の疑問はもっともで、だが、今更どうにもならない。

2010-09-20 02:04:19
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【18】目指す先は、トールの自宅。ヒイラギの、伝説のユニコーンの角を取り戻す為。それが、あの山の主の務めなのだから。「あー、ところで、暑い。熱い、熱い熱い熱い!お尻が焼ける、このままでは焼け狸ですわ…!」今更どうにもならない話ではあった。

2010-09-20 02:06:35
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【19】そして、着地。「いたぁ!」その程度で済む辺り、この狸の耐久性には定評がある。だが問題は、尻に着いた火である。あっという間に火は燃え広がり、「あっつぅ!このままでは狸の丸焼きが…!」まぁその通りではあるのだが。ほどなく、近所の人の通報もあって消防車がやってきた。

2010-09-20 02:08:26
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【20】消防車に乗っていたのはエルフ耳なエクステで、「うわ、狸さん何やってんですか、お尻丸見えですよ!?」その言葉に反応したのは、同じく消防車の同乗していたこぶ茶であった。「ふむ、これで狸もこっちの仲間入りか…歓迎する」「いや歓迎とか要りませんの!」狸の叫びに「じゃ、助けようか」

2010-09-20 02:13:56
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【21】総じて⑨の氷の妖精がそこに居た。「私がお尻を冷やしてあげれば…あ、やっぱ無理っす。退場。ごめんね。狸とか臭そうだし」来て早々立ち去っていった。何しに来たんだ、と皆が不審交じりに後姿を見送る中、別の声が掛かった。「まぁ、こりゃ完全な違反だわ」

2010-09-20 02:16:15
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【22】大鎌を担いだ死神が立っていた。げーじだ。「狸、お前は多くの人の命を奪おうとした。よって、死刑。…いや、死刑は人間の制度か。死神世界流に言うとな、魂狩だ」と宣言された。

2010-09-20 02:17:43
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【23】「え、ちょっと、何ですのソレ…?」狸の抗議に、しかげーじは聞く耳を持たない。「折角の活躍のチャンス。折角の久々の仕事。狸でも何でもええよ。――狩らせろ」言うが早いか、大鎌を構え、そして振るった。狸は、全く避けることが適わなかった。

2010-09-20 02:19:28
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【24】狸は鎌で真っ二つ、という訳にはいかなかった。ただ、ほとんど叩きつけられるような形になり、爆散した。

2010-09-20 02:20:47