ツイッター上のカワカミン

突発連作ツイノベ
8
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【1】トールは焦っていた。いやむしろ、困惑、という感情の方が大きいかもしれない。知っている筈の人が、いつも見ている人達が、話している人達が、ほんの少しだけ。本当にほんの少しだけ違っていたから。それは、違和感どころの騒ぎではなく。

2010-09-02 20:46:25
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【2】「さとーさん、さとーさああああん」狐は半狂乱気味に叫びながら、誰かを押し倒した。「うわ、ちょっと。何、こう迫られるとヒくんだけど!?」件のさとーは、狐の下から、そう抗議の声を挙げた。だが、その声は、「だから、さとーさんってばぁ!」狐の声に掻き消された

2010-09-02 20:49:02
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【3】「ちょっと、私のさとーさんに何してんの!?」いち早くさとーの危機に気付き駆け寄ってきたのは、さとーをTL上でもリアルでもストーカーしていた狸だった。その接近に気付き、狐は鬼の形相で狸を見る。狸は、少しだけ、本当にほんの少しだけ驚いて、「な、な、な、なによぅアンタ!」

2010-09-02 20:51:41
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【4】「タヌキ。あたしはタヌキなの。アンタの位置に、あたしは居たいの」どこからどう見ても狐なソイツは、うろたえる狸にそう告げた。「え、そ、そんな訳ないのよぅ!タヌキは、私!」必死な訴えを耳にしたのは、その場を通り掛った、自転車乗りだった。

2010-09-02 20:54:50
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【5】「あっれ、何やってんの狐さん?目が血走って怖いよ?」自転車乗りは爽やかな笑顔を浮かべつつ、狐が馬乗り状態のさとーを一瞥して「…ま、趣味は人それぞれだもんなぁ。…あ、狸も居た」狸に対しては、もはや視線を向けることもせず、「んじゃ、行くわ。ちょっと餅から逃げてるんで。じゃね」

2010-09-02 20:59:08
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【6】「もちころすって言ったヤツ誰だあああああああ!」走ってきた。真っ白な餅が走ってきた。その一部始終を目撃していたトールの第一印象にして、現実はソレだった。「もちころはもちころであって、もちころすもんじゃないんだ!そこんとこ、わかって!お願い!」

2010-09-02 21:02:02
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【7】「おもちもぐもぐ。…でもパスタの方が」トールはその声に顔を上げた。いつの間にか両手にパスタを装備した猫耳が居た。「あれのんさんいつの間に、」隣に居たんですか?と尋ねようとして、――衝撃。トールは続きを言うことが出来なかった。空の青が見えて、次にアスファルトの黒、それから――

2010-09-02 21:06:53
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【8】「うわ旦那様、見てみて。人が空飛んでるー。でも旦那様の方がずっとずーっとかっこよく飛ぶよねっ!?」のんきに笑いあう母様の目の前、トールが落ちてきた。結構ヒドイ音がした。「うわ旦那様、凄い音がしたよ!でも旦那様の方が凄い音がするよね!?」某団地妻は、笑顔でトールをスルーした

2010-09-02 21:10:12
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【9】「あちゃー、こりゃ総じて⑨だなー」顔面から落ちたトールを介抱していた⑨は、状況をそう表現した。「そんな訳のわかんないこと言ってる場合じゃないんですの!は、はやくあの狐を!狐を何とかして下さい!」狸の訴えに、⑨は冷ややかな視線。「他人任せ。そういうのも⑨ってもんだ。頑張れよ」

2010-09-02 21:13:50
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【10】「や、役に立たない…。そんなことより、早くさとーさんを!あの狐を!」そう騒ぐ狸に⑨は「だからそっちは狸がやんな。取り返せよ。簡単だろ?んで、とりあえずトールは任せろ、バリバリー!」懐から冷えピタを取り出してトールのおでこに当てて自身満々に笑う。「これでだいじょーぶ!」

2010-09-02 21:17:36
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【11】「ダメだ…⑨とか意味わかんない…。他に役に立ちそうな人は…」「も、もちこ」狸は餅と目が合ったが、あえて無視した。「…もちころすーっ!」餅は、半泣き状態で走っていった。自転車乗りが去った方向へ。それを半目で見送ったところで、「さとーさん、さとーさあああああん」狐の求愛行為だ

2010-09-02 21:21:03
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【12】「がしゃーん。がしゃーん。たすけにきたロボっ!」狸の前にいかがわしいセリフを伴って現れたのは、どこからどう見てもロボだった。「やぁ、僕はロボだロボっ!」また変なのが来た。それだけを脳に刻んで、狸は拳をギュっと握った。「誰も頼れない。頼れるのは、この…っ!」狸が、牙を剥いた

2010-09-02 21:24:23
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【13】「そんなアタナには、コレデスネー!」紅の何かが決意をした狸の口に飛び込んできた。「あがあが、何…?」口を動かすと、突き刺さった牙を伝って果汁が溢れた。林檎だった。「林檎が、林檎さんが…っ!」隣のパスタ猫耳の叫びは、狸の耳には届かない。ただ、狸は思う。――顎が、外れる――!

2010-09-02 21:28:13
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【14】その時ヒヨコは、丁度風薬を持って歩いていた。風薬に言わせれば「一緒に歩いていた」となるのだが、ヒヨコにとってはどうでも良いことだった。「ねーねー、あそこに誰かが倒れてるよ?」風薬の言葉に従ってみやれば、誰かが倒れていた。…トールだった。

2010-09-02 21:32:49
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【15】「冷えピタ張りつつアスファルトにゴロン。どんなプレイよ、これ?」ヒヨコのツッコミに、しかしトールは反応しない。「どうやら気を失っているようだ。トールは王女のキスで目を覚ますに違いない」とりあえずヒヨコは、脊髄反射的にトールの口に風薬をぶち込んだ。

2010-09-02 21:35:42
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【16】「これも追加だああああ!」黄色いバナナ状の物体が飛んできたのを、狸は見逃さなかった。「あが、あがあが!」口一杯に頬張った林檎で弾いた。「…あ、」バナナはアスファルトに落ちた。…落ちて、そのままだった。狸はそちらを二度と見ようとはせず、狐もさとーさんも色々大忙しだったから。

2010-09-02 21:39:49
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【17】「ちっ、バナナは外れたか…」動物達が戯れる場所から少し離れた電柱の上、●が両手に獲物を構えて笑っていた。「おーいアンちゃん、そんなとこに居っとあぶねーぞぉ?」心配そうに下から声を掛ける通りすがりのぼん太君の被り物をした約全裸をガン無視して、●は次の獲物を構えた

2010-09-02 21:42:22
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【18】「ペッペッ!やっと林檎が外れましたの…。バナナといい、一体どこから…」林檎をバナナの隣に吐き出した狸は、それを見た。「さとーさああああん」「狸たああああん」その宴を見て、狸は頭が真っ白になった。拳を握って牙を剥いて、駆け出した。――狐の元へと、愛しのさとーさんの元へと。

2010-09-02 21:50:39
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【19】ヒヨコは動揺していた。安直な表現をすれば、ビビっていた、となるだろうか。目の前、トールが凄い形相で飛び起きて、どこかへ走って行った。同時、口から涎塗れの風薬が吹き矢の様に、一直線に飛んで行った。ぼん太君の被り物をした約全裸の後頭部に突き刺さったのを見届けた。

2010-09-02 21:56:49
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【20】見届けて、その先どうすれば良いのか分からなかった。だから、ヒヨコは見送った。「水、水ぅぅぅぅ」と叫ぶトールも、「あれー、どこ行くのー?」どこかのんびりした風薬も、「ふもふも」約全裸も、全部。「…帰るか。うん、そうしよう」それはヒヨコにとって、最良の選択だった。

2010-09-02 22:00:48
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【20】また自転車乗りがやってきた。「全く、世話掛けさせやがってよぉ」自転車の前の籠には、餅が収まって、すやすやと心地良い寝息を立てている。「…さっき、さとーさんとかが騒いでたのはこの辺りだったっけか…。って、うわ、何だ!?」ゲル状の何かが降って来た。というか、ゲルだった。

2010-09-02 22:04:14
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【21】「ぬおー。ぬぉ!?」「もちころ、もちころーす!?」「ゲルなめんなぁ!」自転車乗りと餅とゲルとが戯れているのを見て、トールは冷静になった。そして、ゲルが飛んできた方向を見た。電柱の上、●が不敵な笑みで立っていた。「あ、不気味な泡っぽい」トールの言葉に、●が盛大にコケて落ちた

2010-09-02 22:11:07
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【22】「うっわ、何だあの公開路上プレイ…」風や雨や匂いを引き連れた大名行列が現れた。その目の前、狸が狐にキッツイ拳の一発をお見舞いした所だった。狐が宙を舞う。そして狸は、そのままさとーさんの胸ではなく、お腹にダイブ、――。「ぐあっはあああああ」悲痛な叫びが響いた。

2010-09-02 22:17:25
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【23】「何だあのネバネバ。…我に四難八苦を与えたまえ…っ!」ゲルに飛び込もうとするツワモノを、トールが寸でのところで取り押さえた。「何やってんだオマエ!あれに取り込まれたら…。ゲル餅になるんだぞ!?」「そういう窮地を求めてるんだよ!」トールの腕を振り解き、ゲルの一部と化した。

2010-09-02 22:21:18
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【24】トールは、正直目の前の光景に困惑していた。ゲルは、落ちてきた●と先のツワモノを飲み込んで、増殖を始めていたから。ちなみにゲルの内側からは、「も、もちころすー!」「江田っていうレベルじゃねーぞ!」「これが四難八苦か…」「どうも、転がっていた林檎です」「隣に居たバナナです」

2010-09-02 22:25:06