だれかさまの文

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あんみつ@創作垢 @soratane_a

【葵葉と蒼樹の五行講座】蒼樹「守門一族は元々、青龍である私の力を主に受け継いだ一族でもある」葵葉「そうなんですか?」蒼「あぁ。お前達の兄弟の名前を言ってみてくれ」葵「青葉、朱葉・・でしたけど」蒼「どちらも下に葉が付くだろう?服で基調にしていたのは?」葵「青ですね」

2013-02-10 18:17:15
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「葉は植物の一部で、これは五行のうち木気に分類される。青色という色もまた、木気を表す色になるのだ」葵「蒼樹さんも、青を基調とした姿をしていますね。御名前も蒼に樹ですし」蒼「そういうことだ」葵「そういえば陰陽術を使うときも、木気が一番扱いやすかった気がします」

2013-02-10 18:22:32
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「青葉の力は特殊だったから、五行全ての力を上手く扱えていたが、基本陰陽師には、その者と相性の良い『気』を持っているからな」葵「だから青龍から力を頂いた守門一族の皆は揃って木気と相性が良かったという事ですね」蒼「まあ、多少の例外を除いてな」葵「それでは他の一族も同様に?」

2013-02-10 18:25:08
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「他も同様だ。安部一族は金気の白虎の力、賀茂一族は水気の玄武の力、裏部は火気の朱雀の力、土御門が土気の黄龍の力を受け継いでいる」葵「成る程。・・ですが、黄龍の力は一体どうやって?日の国に渡ったのは四神だけだと聞いていましたが・・」

2013-02-10 18:35:08
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「確かに、この国に来たのは私達だけだ。ただ、五行の内の4つが集まれば、なんとか残りの土気の力も補える」葵「土気の力は、四神の皆さんが力を持ち寄って創った力なんですね」蒼「そういうことになるな。だからこの土気の力を持った土御門一族は、各陰陽一族を仲立ちする役目を担っている」

2013-02-10 20:10:20
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「それに昔はこれに従って、陰陽師一族はそれぞれに京の都の守護する地域を区分していたな。守門は東、安部は西、裏部は南、賀茂は北、そして土御門は中央」葵「しかし、私が生きた時代はこの区分通りではありませんでしたね・・」蒼「一族同士の無闇な権力争いの為だろう」葵「そう・・ですね・・」

2013-02-10 20:22:46
あんみつ@創作垢 @soratane_a

葵「そういえば私は木気もですけど、水気の術も得意でした。それに私の周りでは水にまつわることがよく起きていた気がするんですけど、これは何か関係があるんですか?」蒼「お前と灯華が出会い別れた日も雨・・水の日だったな?」葵「はい。それに姉様・・朱葉さんは特に氷の術を得意としていました」

2013-02-10 20:29:16
あんみつ@創作垢 @soratane_a

蒼「それは相生だな。五行にも相性がある。水と木は水生木といって、相性の良い組み合わせなんだ。術者の中で、この双方を扱えるものは多い。氷の術というのも、水気の部類に入るな・・と、訊きたい事はそれぐらいか?」葵「そうですね。ありがとうございました」蒼「あぁ。また何かあれば聞いてくれ」

2013-02-10 20:43:48
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑命「むかーしむかしのおはなしだよ」佐命「うん。まだ玄潤と僕たちが、日の国に着たばかりの頃のおはなし」佑「京の都に住むことになったぼくたちは、思金神とあるお約束をしたの」佐「そう。『ここに住んでもいい。その代わり、この国の守護に力を貸す事』っていうお約束」

2013-02-10 21:58:21
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑「玄潤が力を貸したのは、今は賀茂という名を持つ一族」佐「玄潤は、その一族に陰陽道の力を与えたの。玄潤は五行の内の水気を司る神様。だからその一族も、水気の術を扱うのが得意になったの」佑「賀茂一族は、その力を持った事で皆から頼られた」佐「でもね、ある時、京の都で旱魃が起こったの」

2013-02-10 22:03:44
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑「原因は、天候を司る神様の不調。何故だか雨を降らす力を失ってしまった事で、折角実った穀物も野菜も、全てが枯れ果ててしまったんだ」佐「そこで人々は、賀茂一族を頼った。頼られた方も、この事態を放っておくわけにはいかなかった」佑「じゃあ、どうしよう?」佐「一族は考えた」

2013-02-10 22:29:23
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佐「そして決めたの。一族の中で、特に陰陽道に優れた者を、贄にしようって」佑「贄の力を神様に捧げたら、きっと神様の力も戻るに違いない」佐「選ばれたのは、一人の若い女性」佑「真っ白な髪と肌を持ったその人は、贄になることをためらわなかった」佐「その人は、神に祈りながら水底に沈められた」

2013-02-10 22:36:02
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑「玄潤は、呆れていたよ。『あの娘が宿した陰陽の力は、あんな風に使うものではないのに』って」 佐「神様は、嘆いていたよ。『あの娘の命と引き換えにしたところで、何にもならないのに』って」

2013-02-10 22:40:04
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑「人の命一つで、神様の力が戻るはずが無いもの」佐「玄潤達四神が人に教えた陰陽道の力は、人を助ける事ができても、神様を助ける事はできないんだ。陰陽道は、人が、人をきちんと守れるために、神様が人に授けた力だから」

2013-02-10 22:45:49
あんみつ@創作垢 @soratane_a

佑「でもね。皮肉な事に、その後その神様の力は元に戻ったんだ」佐「だから人々は、それを賀茂一族の功績と称え、一族はその後繁栄したんだ」佑「そんな、むかあしむかしのおはなし」

2013-02-10 22:49:07
あんみつ@創作垢 @soratane_a

鳥籠から出たいと、無理とわかっていながら必死に羽を羽ばたかせるのが青葉。 鳥籠から出ることを諦め、羽を閉じて一生籠の中で過ごすと決めたのが朱葉。守門という鳥籠に閉じ込められた鳥。 鳥籠の外にある世界を、その鳥達は知らない。

2013-02-14 21:41:07
あんみつ@創作垢 @soratane_a

守門に捧げた一生だった。それに後悔したことは一度もない。守門を守れた、守門の名をより強固なものにできた。それで十分。私の成すべきことは成せた。―何のために?誰の為に?何故、そんなことを聞く?理由など、私が守門に生まれたということだけで十分だろう? 他に理由など・・。

2013-02-14 21:48:18
あんみつ@創作垢 @soratane_a

なかったはずだ。けれどおかしい。何か忘れている気がする。気のせいだろうか?ずっと昔に、何か、大切なものを忘れてきた気がする。・・否、そんなはずはない。私はずっと見失わなかった。守門を守るという使命を。それを果たして、私は死んだのだ。

2013-02-14 21:51:50
あんみつ@創作垢 @soratane_a

地面を埋め尽くさんばかりの曼珠沙華の花。此処が世に言う彼の世というものだろうか。そう言えば、曼珠沙華が彼の世に唯一咲く花だと、誰かが言っていた気がする。もう、顔も声も思い出せないような誰かが。

2013-02-14 21:56:06
あんみつ@創作垢 @soratane_a

――暫く赤色の海を意識なく歩いていくと、目の前に誰かが佇んでいるのが見えた。遠目に見えるその人は、その場に立ったままこちらを見つめている。(あれが、彼の世の主だろうか)行く当てもなく、朱葉は無意識にそちらへと足を進めた。

2013-02-14 22:00:30
あんみつ@創作垢 @soratane_a

花の海の上に立つその人は、真っ黒な長い黒髪を靡かせて立っていた。すらりと細い体躯は、女性に見えた。けれどその顔は長い髪に隠れて見えない。ふらり、ふらりと一歩一歩覚束ない足取りで朱葉は近付いていく。けれど、ある程度近づくと、それ以上何歩歩を進めてもその人との距離は縮まらない。

2013-02-14 22:05:55
あんみつ@創作垢 @soratane_a

いくら走っても、手を伸ばしても、その人の元へたどり着けない。それがひどくもどかしくて、空しくて、たまらなく苦しかった。そんな思いを抱くのは、いつぶりだろう。それすらもう思い出せない。「お前は誰だ!?」朱葉は黒髪の女性に対し、ありったけの気力を振り絞って叫んだ。

2013-02-14 22:14:10
あんみつ@創作垢 @soratane_a

その声が届いたのか、女性は顔を上げこちらを見つめた。髪の間から、髪と同じ色の瞳が覗く。女性は朱葉の姿を見ると、ふっと小さく微笑んだ。その瞬間、一帯に荒れ狂ったような風が吹き荒れた。地に着くほどに長い女性の髪が一斉に暴れるように靡き、赤い花弁が舞い上がる。朱葉はとっさに目を閉じた。

2013-02-14 22:20:09
あんみつ@創作垢 @soratane_a

再び目を開けた時、其処には黒髪の女性はおらず、代わりに淡い藤色の髪をした女性が立っていた。白色の衣に空色の袴を履いたその女性は、ずっと前からそこに立っていたようにごく自然と辺りの景色に溶け込んでいた。誰だろうかと、記憶を巡らすも、やはり朱葉に見覚えはない。

2013-02-14 22:28:09
あんみつ@創作垢 @soratane_a

それでも自然と足はその女性の元へと向いた。今度こそ朱葉と女性の距離は確かに縮まり、手を伸ばせば触れられる、表情もよく読み取れる所まで近付いた。目の前にいる女性は優しい眼差しで、けれどどこか寂しそうに朱葉を見つめている。

2013-02-14 22:34:05