ヒロインの朝は、早い。

なりた@プランク157回め @narita_nj

……ヒロインの朝は、早い。 1

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朝5時起床。主人公の行くところ何処にでも現れる為の体力を養う為のランニング5km、シャワーの後に手作りの簡単な朝食をすませる。メニューはごく普通の味噌汁、卵焼きといった平凡なもの。「料理下手なのは設定だけなんで、普通に作っていることは内緒にして下さい」彼女はうつむきながら言う。2

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朝6時。いつも使っているフライパンを下げると、彼女は様々な高級食材をテーブルに並べ始める。「正直、この作業は苦痛です。お金もかかるし。なるべく手早く済ませます」…主人公に差し出す弁当作りだ。ありえない程の調味料の量に顔をしかめながら、彼女は呟く。「もったいないですよね、これ」 3

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「食べてくれないものなんてわざわざ作りたくない。でも、ヒロインと呼ばれる為には仕方がないんです」半ば諦めた顔で彼女は言う。「私の母親の時代には、お稽古事や海外留学が当たり前だったそうです。だけどそんなことをしたら、どんなに自分が磨けても、今はヒロインとしては失格なんです」 4

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朝7時。制服に着替えた彼女だが、ブラウスだけが学校規定のものではなく、いわゆる乳袋になっている。「うちの学校は規則が緩い方だけど、やっぱり男子にそういう目で見られるのは嫌です」髪型はツインテールに大きなリボン。今時こんな髪型で外を出歩く女子高生はいない、と彼女は自嘲的に笑った。5

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7時半。TVとネットのニュースを見比べ、彼女は自室へ。女子高生の部屋には不釣り合いな機材を操作し始める。「盗聴器です」主人公の部屋に仕掛けたものだそうだ。「ヒロインには必須ですね。彼が何に凝っているか今何をしているか、いち早くわからなくては」犯罪ですよね、の声を彼女は無視する。6

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「先月、友達がヒロインをやめたんです」非常識な味付けの弁当とカバンを手に、彼女は家を出る。「どうしても留学がしたいって言って。プライベートでも仲が良かったし、私は反対したんですけど」友達はその場でヒロインから脱落し、男性ファンの笑いのネタ、彼等のお気に入りとの比較対象となった。7

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「だけど、この間留学先から写真が届いて…とても楽しそうなんです。友達がいっぱい出来たって」彼女はカバンから手帳を取り出し、その写真を見せてくれた。写真の真ん中で弾けるように笑うショートカットの日本人少女は、つい先日まで大人しいロングヘアのメガネ少女だったという。「羨ましいです」8

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「だから、彼女には日本でのことは教えてないんです」彼女は寂しげに笑った。「しばらくすれば心無い噂も消えますし。私もいつまでヒロインやってられるかわからないし…」でも、現在はあなたがダントツの一位ですよね？ と言うと、彼女はこちらを一瞬、睨みつけた。「そういう言い方、嫌いです」9

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「取材はここまでにしていただけますか」学生の多くなる通学路の手前で、彼女は硬い表情のまま一礼し去っていった。しばらく歩いた後、彼女は突然弾むように走り出す。どうやらクラスメイトとの待ち合わせ場所のようだ。「○○ちゃん、おっはよーっ☆」先程までとは打って変わったような明るい声。10

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先日、ヒロインに関する意識調査が行われた。全ヒロインの内約70％が何らかの精神的重圧を抱えている事が明らかになったものの、対策は未だに行われていないのが実情である。我々が取材を行った彼女は取材1週間後の人気投票で遂に一位の座から脱落し、連日の嫌がらせを受けているという。11

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もはやヒロインは恵まれた職業、約束された立場ではなくなった。それでも少女たちがヒロインとして扱われることを容認せざるを得ない現在の環境は、どこか歪んでいるとしか言いようが無い。世界は変わりつつあるのに、ヒロインを見る我々の目だけが変わってはいない。【クローズアップ現代ヲタ】おわり