twnovelログ(ezory)

主に自分(@ezory)用。
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ezory @ezory

「俺はスイーツなんかじゃねえ!餅だ!」開店前のショーケースの中で、苺大福が暴れていた。隣の豆大福が「いいじゃないのさ、アタシなんて黒子だらけでみっともない」と拗ねる。上段のみたらし団子がまあまあ、と諌める。店員がよそ見をした二秒半の間に以上の出来事が起こった。 #twnovel

2013-07-21 20:28:49
ezory @ezory

彼女は「鳥になりたい」と言った。しぐさや外見を鳥に似せるのではなく、本質をヒトから鳥に移行したいのだと。数年後に再会した彼女は、自らの願いを実現していた。頼まれて僕は背中を押す。高層ビルのフェンスを越えて、彼女の背中を。え、飛べたかって?考えりゃわかるだろうに。 #twnovel

2013-07-22 20:05:41
ezory @ezory

「この四角、なーんだ?」スクリーンの向こうで影になった彼女が、四角い何かを持つ。スマホ、写真、タバコの箱?いや「ちーがう!」だって。「正解は、私の家ー!」彼女の影が四角に吸われた。裏に回ると、石膏製の、蓋も継ぎ目もない四面体だけ。でも内で笑ってるのが聞こえたよ。 #twnovel

2013-07-23 20:24:39
ezory @ezory

眠さは全てを駆逐する。詰めたはずの言葉は泡だった波にさらわれて、何度か岸に叩きつけられるうちにバラバラになった。沈む。今までの僕の記憶が降り積もった水底へ。目を開けたら君しかいなかった。なぜ君だけ残ったのだろう、と考えだしたところでまた眠る。世の果てまで。 #twnovel

2013-07-24 22:34:53
ezory @ezory

風が谷間をびゃうびゃあと吹き抜ける。狩りの季節だ。丘人足たちが力を合わせ、槍凧を上げた。上がった凧は、竜をうまくとらまえた。槍が竜の脇腹を削るたび、赤ん坊ほどの大きさの深緑がかった鱗が地に落ちる。「これで冬が越せますなあ」人足頭は私に鱗の一枚を捧げ持ってみせた。 #twnovel

2013-07-25 21:27:56
ezory @ezory

素直じゃない彼女。「笑顔が可愛い」と褒めると、笑わなくなった。「怒った顔も」と言うと泣きだし、「泣き顔も」「無表情でも」「仕草全てが」賛美を続けた結果、彼女の輪郭が薄らいで、もう僕の目には見えない。でもまだいるよ、「責任……取ってよね」って声が耳元でするから。 #twnovel

2013-07-26 22:18:32
ezory @ezory

かの小説の如く世界は《凍結》した。アイス・ナインではなかったため、辺りの氷は食べられる。手動式かき氷機が大活躍。心配事は、凍ったスーパーからくすねてきたシロップの残量。「そしたらコーラをかけましょうよ」永遠の冬と夏の狭間、彼女と彼女の麦わら帽だけは年をとらない。 #twnovel

2013-07-27 21:33:00
ezory @ezory

悪魔は言いました。「お前の愛しき者は雨つぶの一滴に変えた」王女は豪雨の中、王子を探しましたが無駄でした。しかし彼女は身ごもります。愛しき者の雨つぶを知らず飲みこんでいたので。この赤子が後の《雨之王》ヴェサルジィ、彼の赴く戦場には血の雨が必ず降ったと伝えられます。 #twnovel

2013-07-28 22:35:09

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ezory @ezory

長い杖をひきずった女は「物語を書いている」と言う。杖の跡は文字であり、長い長い物語を成していた。俺は今までの跡を辿る旅に出たが、六日目で砂が全てを覆ってしまっていた。引き返し女を追うが、途中で見失った。でも旅は続く。再会するまで、俺の物語も終われないのだよ。 #twnovel

2013-07-29 21:49:49
ezory @ezory

満員電車に冷蔵庫をかついだ男がいた。「重いなあ」とブツブツ言っている。正面にいた私は「何かの仕事ですか?」と聞いてしまった。男は答えない。「あの。冷蔵庫」「え?」「その白くて四角な」「豆腐なんて持ってないよ」次の駅で男は降りた。人波の中、白い影を確かに背負って。 #twnovel

2013-07-30 23:27:59
ezory @ezory

姉が丘主に選ばれたのは曇天の朝だった。「主さま」を囲み宴が開かれるが、主役の姉は微睡んでいる。丘との接続が上手くいっているらしい。「坊ちゃんもどうぞ」人足頭が酒の器を回してきた。濁った緑色の苔酒。飲み干し、私も丘の一部となることを示すと周りから拍手が起きた。 #twnovel

2013-07-31 23:05:13
ezory @ezory

俺は階段をのぼり続けていた。いつからかは忘れ、どこなのかも覚えちゃいない。腹も空かず眠くなりもしなかった。ひょっとしてここがあの世なのか?誰もいないのでわかりゃしない。いっそ下に転がり落ちてみたくなるが、嫌な気配がするから無理だ。地獄なのかもしれないな。 #twnovel

2013-08-01 23:45:33
ezory @ezory

かつて有翼人の国を訪れたことがある。みな翼をはためかせながら歩いており、なかなかの見物だった。仲良くなった奴に「いいねえ、飛べるし」と言ったら「飛べるわけねえだろ」と冷たく返された。最近では無翼のほうがカッコいいという風潮で、翼の摘出手術まであるのだとか。 #twnovel

2013-08-02 15:32:09
ezory @ezory

信じられぬほど大きな湖のほとりに出た。「浅いですね」向こう岸の林目指して皆渡っていくが、私は真実に気がついてしまった。恐怖に声も出ない。次の瞬間地面がにょっきりと持ちあがり、両端から湖は塞がった。人間なんぞ奴にはゴミ粒だったんだ、この巨大な目玉の持ち主からは。 #twnovel

2013-08-03 16:11:49
ezory @ezory

王は階段が嫌いだった。王位につくなりまず、見張り塔を残して城を平屋に作り替えた。当然、敷地は今までの数十倍になった。その周りの庭園は巨大な迷路に仕立てた。迷路は三日三晩かけても踏破できぬほどの広さで、迷った人々向けに宿屋や飯屋が立ち並び、大いに繁盛したという。 #twnovel

2013-08-04 18:33:21
ezory @ezory

政府の役人が来たのは夏の暑い日だった。なまっ白い体は制服の重厚さと何一つ合っていなかった。「りゅ、竜の捕獲等、敵対的行動は法律により禁じられております」つっかえながら書類を読み上げる役人に、人足頭は「若造め」と舌打ちした。丘主の姉はなにひとつ表情を変えなかった。 #twnovel

2013-08-06 13:22:15
ezory @ezory

「永遠に続く物語を」女王の命で作られたのは赤子大の宝石に細かな彫刻を施したもの。彫られた文字列は絡み合い、光の加減でまた別の文字が浮かぶ。女王は喜び、日夜宝石を抱いて読み進んだ。処刑場にも出向き、在任の血を文字列の溝に垂らしてはまた新しい物語を楽しんだという。 #twnovel

2013-08-07 14:32:29
ezory @ezory

俺は昔、石を掘っていた地下で太陽を見つけた。太陽になる予定の、選ばれた光の娘。毎日会いに行ったが、彼女の光と熱は激しさを増し、吐息は俺の服を焦がすようになった。目も焼かれて今じゃあもう見えない。でも太陽が空を渡るとああ、あの時の彼女の光だなあと確かにわかるんだ。 #twnovel

2013-08-08 19:06:47

41~50

ezory @ezory

価値のないものしか盗まない、変な泥棒がいた。絵の贋作が盗まれた。錆びた草刈機が盗まれた。隣の家からは物置の中のぶら下がり健康器。そして我が家は父が盗まれて、犬は盗まれなかった。母は激怒して家を出ていった。泥棒を追いかけたか、父に愛想をつかしたのか、私は知らない。 #twnovel

2013-08-10 01:08:29
ezory @ezory

山中に知の獣ありけり。旅人に「ものをかたるのが物語と云う。其れならばものをかたらず、無きをかたる道は何処の何と云うべきか」と問い、答えられぬ者を喰う。答えた者も喰う。答えぬ者も喰う。後に体は朽ちるとも問いのみ残り、今なお誰かを喰らう。まことに哀れなことである。 #twnovel

2013-08-11 00:05:17
ezory @ezory

母の箪笥の奥から古い色紙を見つけた。私の名と生年月日、横に記念の小さな手形。今の手の大きさと比べると不思議な気分。しかし、何かが変。後で後悔した。虫眼鏡で手形と今の指紋を比べたことを。私は……私は。「ご飯よー」母の声すら全て嘘に聞こえた。いや、私自身が嘘なのだ。 #twnovel

2013-08-11 21:55:38
ezory @ezory

いつもの朝。「おはよう」と母に挨拶したら「さよなら」と言われた。父も新聞から目を上げて「ああ、さよなら」と。迎えに来た幼なじみ、級友、先生も私にだけそう言う。夕暮れの帰り道、また幼なじみとうちの前まで来た。私はあの言葉を口に出せない。世界は穏やかに私を壊すのだ。 #twnovel

2013-08-12 16:26:04
ezory @ezory

盆踊りの会場で、去年死んだ友達にそっくりの子がいた。兄弟じゃないかと思ったが友達はひとりっ子だったし、よく見なおすとやっぱり別人だった。遠くから、楽しそうに踊るその子を眺めていたら不意に涙がこぼれた。悲しさではなく懐かしさで涙が出ることを、私は初めて知った。 #twnovel

2013-08-14 17:02:21
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