流星☆ハレーション/マーベルお誕生日SS（公式）

にゃごったー＠流星☆ハレーション公式 @nyagotter

『流星☆ハレーション・マーベル朝日誕生日記念』に書き下ろしＳＳをTwitter上にて公開します。途中で投稿規制がかかってしまうかもしれませんが何卒ご了承ください。またＴＬが激しく流れますのでご注意ください。ハッシュタグは #ryusei_hpb です。 #ryusei_hpb

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７月１０日。 その日、マーベル朝日は１７歳の誕生日を海の上で迎えた。 船内で乗組員にバースデーパーティを開いてもらうことも、これで実に１０回を数えた。[1] #ryusei_hpb

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それはマーベル自身がほとんど船の上で育ってきたということでもあったし、彼の祖父が自分の孫を溺愛している証以外の何物でもなかった。 だからこそ、この１７回目の誕生日はマーベルにとって特別なものになったのだ。[2] #ryusei_hpb

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１８回目の誕生日はきっと、まだ見知らぬ誰かと過ごすだろう。 そんな未来を、彼は望んで掴み取ろうとしていた。[3] #ryusei_hpb

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世界的なＩＴ企業であるマーベルリンク社はいくつかの船舶を所有している。 マーベルが今乗っているこの船は、その中でも選りすぐりに立派なクルーズ船だ。[4] #ryusei_hpb

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マーベルリンク創業者、会長マーベル・アイバーク自らが船長を務める『愛しのエスナ号』。もちろん船舶名は自分の妻の名から取っている。妻への愛のために、そしてかけがえのない家族のためにこの船は世界中を巡り続けている。[5] #ryusei_hpb

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『愛しのエスナ号』の乗組員は３０名ほど。構成人数は旅の目的地や航海日程によって流動的である。基本的にはそれぞれに相部屋が割り当てられているが、アイバークは孫に個室を与えていた。[6] #ryusei_hpb

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白い壁紙が一面に貼られた、６畳ほどのこじんまりとした居心地の良い船室。 普段ならば壁にポスターやお気に入りの絵葉書を貼ったりして、長く単調な旅の退屈を紛らわしていた。[7] #ryusei_hpb

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しかしこの１７回目の誕生日に至って、マーベルの部屋はひどく殺風景に様変わりしている。 部屋の隅にはいくつかの段ボールが積まれ、後はパイプベッドと、椅子と机、その上にノートパソコンが一台。たったそれだけだった。[8] #ryusei_hpb

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そんな侘しい船室の扉を開いて、マーベルは鼻歌を歌いながら機嫌よく自室に戻ってきた。後ろ手に扉を閉めると、すぐにノートパソコンを開いてスリープ状態から回復するのを待つ。[9] #ryusei_hpb

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机に頬杖をついたついでに気付いた。ヨーグルトがまだ顔についている。ちょっと笑って、舌で舐め取った。 やがて画面のバックライトが灯ると同時に、ノートパソコンのスピーカーから音楽が流れ出す。[10] #ryusei_hpb

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パーティハットをかぶった動物たちがケーキを囲み、歌いながら楽しげに踊る。ネットフレンドたちが送ってくれたグリーティングカードが賑やかにマーベルを祝福している。 曲名は『Happy Birthday to You』。[11] #ryusei_hpb

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それを部屋に流すまま、キーボードの上で滑らかに指をすべらせて、チャットツールのメッセージ送信フィールドに素早く英語で書き込んだ。[12] #ryusei_hpb

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Ｂａｒｉｓ：こっちは気にしないでよかったんだぞ。 Ｃｏｒｉｎ：そうさ、こんなおめでたい日くらいＳｔｅｖｅのバカ話に付き合うのは僕たちだけでいい。 Ｓｔｅｖｅ：Ｃｏｒｉｎ…俺、お前のそういうところ嫌いじゃないぜ。[14] #ryusei_hpb

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Ｍａｂｅｌ：ハロー！遅くなっちゃってゴメンね。 Ｓｔｅｖｅ：マーベル！槍のスキル上げ！経験値三倍期間終わっちまう！今すぐほら！はやく！ Ｍａｂｅｌ：それは引っ越しが落ち着いてから～。 Ｓｔｅｖｅ：おいいぃ、相棒カモーーン！[13] #ryusei_hpb

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Ｃｏｒｉｎ：lol Ｓｔｅｖｅ：ハハハ！そこ笑うとこじゃないけど嫌いじゃないぜ！ハハハハハ！[15] #ryusei_hpb

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船員は家族だ。マーベルリンクの社員は長い航海を共に暮らす大事な家族だ。 だからマーベルが「友達」と呼べる相手は、このネットフレンドたちや数か月ごとに手紙やＥメールを送り合うペンパルたちだけだった。[16] #ryusei_hpb

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Ｓｔｅｖｅ：まっ、しょうがない。相棒の人生仕切り直しだもんな。日本がいいとこだといいな！ Ｓｔｅｖｅとはネットゲームで知り合った仲だ。フレンドリーでお調子者のアメリカ人。発言に「！」をつけないと気が済まないらしく、なんとも暑苦しい。[17] #ryusei_hpb

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Ｂａｒｉｓ：マーベルもついに日本上陸か。航海の話はいつも聞いてて楽しかったよ。 Ｂａｒｉｓは１０代の友達を募集する掲示板で知り合ったデンマーク人だが、言動が非常に大人びていて、仲間内ではもめ事の仲裁にＢａｒｉｓありとまで言われた。[18] #ryusei_hpb

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とても１０代には思えない…そう思いながら２年が経過し、ついに実年齢を尋ねてみると、正体は「１０代の友達が欲しかった３４歳のサラリーマン」だった。それはそれで全く構わないとマーベルたちは思っている。[19] #ryusei_hpb

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Ｇｒｉｓｈａ：家族のようなクルーって素敵ね。だからこそ、みんな寂しがるでしょうね…。 Ｇｒｉｓｈａは、Ｓｔｅｖｅがどこからともなく連れてきて紹介した１４歳のオランダ人。体が弱く定期的に通院しなければならないため、マーベルの船上生活に憧れていた。[20] #ryusei_hpb

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Ｃｏｒｉｎ：しかし、なぜこのタイミングで日本に住むことになったんだい？ Ｃｏｒｉｎはイギリスの学生だが、哲学の分野で既に論文を何本も書き上げている飛び級の天才だった。[21] #ryusei_hpb

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それがなぜマーベルやＳｔｅｖｅたちと一緒になってゆるい雑談チャットを繰り広げているのかは皆の疑問だったが、尋ねても感情のこもっていなさそうな「lol」で一笑に伏されるのがいつものパターンだ。[22] #ryusei_hpb

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Ｃｏｒｉｎ：日本の高校のカリキュラムだと１学期の終わりにあたるから、なんだか中途半端な転入になるよね？ Ｂａｒｉｓ：確かに。春に引っ越せなかった理由でも？ Ｍａｂｅｌ：それは……おじいちゃんが「１７になるまでは儂のそばにいろ」って……。[23] #ryusei_hpb

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Ｓｔｅｖｅ：なんてこった！やっぱりジジイ都合か。 Ｍａｂｅｌ：だから今日１７になって、明日すぐ日本へ行くことにしたんだ。[24] #ryusei_hpb