神サバ小話4

診断メーカーの「ゾンビサバイバル! あなたは何日生き残れるか!? 」をテーマにした短文集「神サバ」の番外編(http://togetter.com/li/482037)のノリで作った更なる番外編・神サバ小話2(http://togetter.com/li/493228)のそのまた番外編・神サバ小話3(http://togetter.com/li/507496)の更に番外編。 ついに4まで続いちゃった系小話…! 「私」が呟く「神サバbot(https://twitter.com/kamisurv_bot)」も稼働中。 続きを読む
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お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男は身体を屈めて、天使の艶のある黒髪を優しく撫でた。「私は大丈夫だ。さぁ、帰りなさい。ミシェルが君を待っている」しかし、ふいに表情を固くし、その手を止めた。天使の蒼い瞳は潤み、目からは涙がこぼれ落ちた。「あなたを喜ばせる贈り物は、もうひとつあります」 #神サバ小話

2013-09-11 13:42:32
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 天使はこぼれ落ちる涙をそのままにして、ゆっくりと話しはじめた。「新しい神を創り、自分で創り上げた世界を否定し抹消し、混沌に身を投げて新しい神の存在以外の記憶を捨て去る。あなたはそれを何度も繰り返してきたのでしょう。あなたは自由に死ぬことができないから」 #神サバ小話

2013-09-11 16:30:28
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男は何かを言おうとしたが、口をつぐんだ。「あなたは神であることにうんざりしている。なのに、自分の子供達の叫びを聞くと、記憶がないまま混沌を抜け出して、再び世界を引き受けてしまう。その繰り返し」「私には記憶がない」「でも、あなたは気付くことができたはず」 #神サバ小話

2013-09-11 16:50:30
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 天使は立ち上がった。「気付けたはずなんです…今回は。ジブリエルがあなたが捨てた記憶を…ほんの一部ですが、混沌の中から拾い上げた。あなたはそれを手に入れた」そして、男の懐にそっと手を差し入れると、黒い革表紙の手帳を取り出して、男に見せた。「違いますか?」 #神サバ小話

2013-09-11 17:13:11
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ああ、私は知っている。だが、知っただけでは変わらない。何も…」「いいえ、変えられます。今回のあなたは人間の肉体を得た。あなたは、あなたを創った者の意志に関わらず、自由に死ぬことができるのです。それに…」天使はもう泣いていなかった。「僕を手に入れた」 #神サバ小話

2013-09-11 17:30:43
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男の表情が変わったのを見て、天使は頷き話を続けた。「あなたが消えれば、あなたが創った神は消え、神が創った世界もすべて抹消されます。けれど、僕には自分自身を創り出せるだけの力がある」「抹消される瞬間に、君が君自身を創り出す。できるかもしれないな、君なら」 #神サバ小話

2013-09-11 17:51:12
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「そして、一気にイメージを展開させ、世界を再構築します。…本音を言えば、あなたには死んでもらいたくない。神であることを辞めて、僕の創った世界で生きていてほしい。でも、あなたは死ぬまで神になろうとし続けるのでしょうね?」男は口元だけで笑った。「恐らくね」 #神サバ小話

2013-09-11 18:08:21
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男は笑っていた口元を、今度はへの字に曲げた。「それで、君はミシェルを創ることができるのか?」天使は明るい透き通った声で答えた。「天使一人創るのは、難しいことではありません」「可能、不可能の話ではない。君にできるのか?」天使は男からそっと目を反らした。 #神サバ小話

2013-09-11 18:22:05
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「僕は…」囁きながら、天使は男の足元にしゃがみ込み、男の膝にもたれ掛かった。「僕はミシェルと対等でありたい」「ミシェルなしで、君は生きて行けるのか?」「世界を創った後、僕は眠るつもりです。僕がミシェルと出会った場所…僕らが生まれた場所を創って、そこで」 #神サバ小話

2013-09-11 18:44:49
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「何故、君は私のために、君のもっとも大切なものを差し出そうとする?私からヴィーを奪った償いか?それとも、創造の力を持った者としての義務感か?」男は上半身を屈めて、天使の頭を膝に抱き寄せた。「あなたが泣いているのが、僕には堪えられない…それに、僕は…」 #神サバ小話

2013-09-11 19:51:11
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ツカツカと足音が響いた。金色の髪をなびかせて、無表情な天使が早足で椅子に近づいてきた。そして、自分の片割れを男から引き離すと、そのまま強く抱きしめた。「ミシェル、僕は大丈夫だから」天使は安堵したように腕の力を緩めたが、男を見つめる深紅の瞳は冷たかった。 #神サバ小話

2013-09-11 20:13:12
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 黒髪の天使は片割れを宥めるように、金色の髪を優しく指で梳いた。「あの人は何もしていない。ただ、僕が寂しくなって泣いただけ。ですよね?」男は「ああ…」と曖昧な表情で頷いた。「しかし…」金髪の天使が不服そうに呟くと、黒髪の天使は片割れの腕から抜け出した。 #神サバ小話

2013-09-11 20:37:07
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「離してよ。君と手を繋げない」そして、自分にしか触れることを許されていない、相手の"利き手"に指を絡めると、蒼い瞳を細めて幸せそうに微笑んだ。「か、神が見ている…」珍しく動揺する片割れの手を引き、椅子と反対に歩き出した。「お邪魔しました。また来ます」 #神サバ小話

2013-09-11 20:55:52
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「今度はミシェルも一緒に来なさい」赤毛の男は顔の横でゆっくりと手を振り、双子の天使の後ろ姿を見守った。姿が見えなくなると、椅子の肘掛けに寄り掛かって呟いた。「あなたも愛しています、お祖父様…か。なぁ、ヨシュア。君が創った世界はなかなか悪くない」(終) #神サバ小話

2013-09-11 21:06:17
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